母親業の傍らライターをしている私。仕事が忙しいときは家の掃除まで手が回らない。
シルバー人材センターは、高齢者が“働くことを通じて生きがいを得る”ことを目的とする、国によって制度化された事業。各市(区)町村にセンターがあるというので、居住地(市)のセンターをホームページで検索。仕事内容をチェックしたら、Tさんの言った通り、住まいや家事に関わる仕事もやっているみたい。しかも、“1時間あたり1000円程度~”と民間に比べて格安だ! さっそく電話してみた。
■シルバー人材センターが請け負う仕事の例(住まいや家事に関する仕事を抜粋)
◇庭木などの剪定 ◇障子・ふすま・網戸の張替え ◇大工仕事
◇ペンキ塗り ◇除草・草刈り ◇屋外清掃
◇屋内清掃 ◇調理作業(皿洗い、配膳など) ◇エアコン・換気扇の清掃
◇家事サービス(掃除、洗濯、留守番など)
◇育児サービス(子守、送迎など)
※請け負う仕事の内容や費用は、各地のセンターによって異なる。上記の仕事を請け負わないセンターもある。
出典/公益社団法人全国シルバー人材センター事業協会
電話に出たお姉さんに、要件を話すと、ビシッと切り返された。
「水まわりのお掃除ですか? こちらは主婦経験のある高齢者の方がやるので、一般の主婦の方ができる程度の掃除しかできませんよ。ちゃんとしたお掃除なら専門の業者さんのほうがいいですよ」。
「あっ、いいんです。自分は一般の主婦レベルにできないんで、それで十分です(汗)」
お姉さんはそれで納得したのか、具体的な掃除箇所、作業日程、時間などの打ち合わせに入る。今回は、台所と洗面所、浴室の掃除を3時間程度でお願いすることにした。
「そうですか。では、仕事を請けられる会員がいるか確認して、再度ご連絡します。会員がいましたら、一度下見をさせてください。また、掃除道具はそちらでご用意お願いします」
えっ下見するの!? 何見るの?
そこで、再度ホームページをチェックしたところ、“シルバー人材センターが提供できる仕事は安全で軽微な作業に限られること”などといった記載があった。
我が家の“水まわり掃除”は、安全で軽微な作業なのか事前に見に来るのか…!? 汚すぎてできないと言われたらショックだろうなぁ。と思いつつ、水まわりの掃除用品を買いそろえて待つことにした。
用意した掃除用品
幸いなことに、仕事を請けてくださる方が見つかったとの連絡があり、2~3日後にその方が下見に来る。私なんかよりずーっと身ぎれいな、シルバーというよりマダムという言葉が似合う女性だ。さーっと見渡し、「分かりました。
いよいよ作業当日。約束の時間にマダムが濃いローズカラーの割烹着を着ていらっしゃった。
「最初にお風呂にカビ取り剤をスプレーして、それから台所の作業をします。どうぞお仕事しててくださいね」
「では、私は、台所の食器や鍋を移動してから仕事させてもらいます」
テキパキテキパキ…
お風呂のスプレーが終わると、キッチンに移動。コンロまわりの五徳や換気扇のカバーを取り外して流し台に移し、コンロや周りの壁に油汚れ用のスプレーを噴射。汚れが浮き上がるのを待つ間、五徳や換気扇カバーを、やはり油汚れ用のスプレーを使って水洗い。一段落したらコンロ&壁&換気扇まわりを磨きにかかる…。
“シルバー=おばあちゃん”という私の先入観は見事に覆された。おばあちゃんといえば、出がらしのお茶っ葉とか、みかんの皮とか、重曹とか、何か思いもよらない“おばあちゃんの知恵”で魔法のようにきれいにしてくれると思っていたが、いたって現実的。市販の掃除用洗剤を使い、体を張っての作業が続く。
えぇぇぇ! ということは、もうアラセブ(あら、セブンティ)ではないか。しかし、お世辞なしに、到底そうは見えないパワフル&身軽さだ(もちろん外見も若く見える)。でも何だか、昔、母が元気なころ、家事や育児を手伝ってくれた姿を思い出し、とてつもなく懐かしくありがたくなった。
さて、3時間後。キッチン部分で思った以上に時間がかかったようで、洗面所の掃除までは手が回らず時間切れとなった。残念だが時間は時間、ここで作業を終えていただくことにした。民間業者なら、最初に打ち合わせたことは最後まできっちりやってもらうのだが、シルバー人材センターの場合は、こういったときに無理を言わないのがお約束だと思う。
お掃除の効果は写真の通り。とってもキレイになり大満足だ。ただ、厳密に言えば、市販の掃除用洗剤では落としきれない汚れも若干残っている。やはり、一般の主婦(しかもアラセブ)の力には限界がある。