ビルやマンションの入り口でよく見かける〝定礎(ていそ)〟と書かれた石板。当たり前のように目にしているが、本当の意味や役割を知っている人は少ないのではないだろうか。
そもそも定礎石は、なぜビルやマンションに置かれることになったのだろうか?
「定礎石とは、その建物の基準となる礎(いしずえ:柱を受ける石)の位置を定め、建築を正確に行うためのものとされています。石造りや、レンガ造りの西洋式の建築物が日本に伝わってきてからのもので、明治時代から始まったと思われます」なるほど、定礎石はかなり昔から設置されていたようだ。現在は建物の入り口付近で見かけることが多いが、置かれる場所は建築物のどの辺りか決まっているのだろうか?
「昨今のビル建築においては建物の南東隅、もしくは正面玄関周辺に置くのが一般的です。また設置する時期は、本来は礎を定めるものですから、着工当初に設置するのが通常ですが、昨今のビル建築においては掘削工事などが行われること、また定礎石自体も仕上げの一部であることから、工事終了時に設置されるのが通例ですね」ちなみに定礎石の中には、何が入っているのだろう?
「定礎石の中には銅製の定礎箱があり、そこに氏神のお札、建築図面、建築主や関係者の名前が書かれた銘板などのほか、定礎式が行われた日の新聞、流通している硬貨一式、その他話題になっているものなど、後から開けて建築当時を偲べるようなものを入れます。いわゆるタイムカプセルのようなものです。しかしこれはあくまでも習わしとして言われているもので、実際に中へ入れるものは建築主さんとご相談しながら決めていくというのが基本です」この〝タイムカプセル〟、実際に開けることはあるのだろうか?
「実際のタイムカプセルと違うのは、開ける時期が決められていないということでしょうか。建物が建て替えなどで解体されたりする際に、建築当時を偲ぶ意味で開けたりする事があるようです」一度入れてしまえば、建物の寿命が尽きるまで開けられることのない定礎箱。建設当時の思い出が詰まっていると考えると、定礎石を見かける際も少し感慨深い気持ちになりそうだ。
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