●調査内容:丼&揚げ物チェーン店にあるカレー。『吉野家』『すき家』『松屋』『なか卯』『からやま』『松のや』で食べ比べ、その個性と特徴に迫る
丼モノや揚げ物を目当てに入ったチェーン店。
丼&揚げ物チェーンにおけるカレーは、サブでもなく、かといってメインでもないという微妙な立ち位置にあるメニュー。そこで、各チェーンのカレーはそれぞれどんな特徴があり、どんな味わいを楽しませてくれるのか、今回はその違いを『吉野家』『すき家』『松屋』『なか卯』『からやま』『松のや』で食べ比べ、各店の個性に迫りたいと思います!
濃厚なソースで普遍性を忘れない優等生!『吉野家』の「牛カレー」

まずは『吉野家』の「牛カレー」から。吉野家では近年特にカレーに力を入れているようで、昨年秋に登場した「牛カレー」も厳選素材と、相当な技術を投入して完成した一品という印象です。
カレーソースは吉野家のカレー史上過去最多となる量の玉ねぎを使用し、従来の2.5倍の量が入っているそうです。このカレーに、お馴染みの牛丼のアタマをのせたものが「牛カレー」です。さっそくいただいてみます。

照りのあるカレーソースは、大量の玉ねぎのおかげか、甘味が強いうえ、ルー全体にもコクがあります。しかし、強烈なパンチを感じるほどではなく、あくまでシンプルな味わいです。おそらく、牛丼のアタマをかけることを想定して、あえて主張しすぎないように仕上げているのだと思います。普遍的でありながらコク深い素直な美味しさです。
スパイシーで辛味強め。牛丼との足し算がクセになる『すき家』の「カレー」

続いて、『すき家』の「カレー並」に「牛あいがけ」を加えたもの。今回は吉野家の「牛カレー」に近づけるためにあいがけ仕様にしました。

いざひと口食べてみると、こちらのカレーはとにかくスパイス感強めで、辛さが際立っています。吉野家の「牛カレー」は抑制の効いた味でしたが、その逆ですね。カレー単品でもかなりのインパクトがあります。この主張強めのカレーに、牛丼のアタマをあいがけすることで「足し算+足し算」的な強い味わいに。これがまた妙にクセになる味で美味しい!
まさに吉野家のカレーの対極にあるのがすき家のカレーのように感じました。「今日はガッツリいきたい」という人や、スパイス感が好きな人は、すき家のほうがインパクトがあっていいかもしれません。
リニューアルで牛肉量アップ! 味わいも進化した『松屋』の「ビーフカレーギュウ」

続いて、昔からカレーに定評がある『松屋』の「ビーフカレーギュウ」。昨年(2022年)末に「創業ビーフカレー」を終売し、それをさらにレベルアップさせたのが「松屋ビーフカレー」です。牛肉の量を増やすことで、カレーソース全体の旨みを押し上げているとか。このカレーに牛丼のアタマをあいがけにしたものが「ビーフカレーギュウ」。

すき家のカレーにスパイシーでパンチ力を感じたのに対し、松屋は“牛肉の旨み”を前面に押し出しているのがよくわかります。口当たりこそマイルドながら、後から強烈なコクが追いかけてきます。味わい豊かなカレーに牛丼のアタマをかけていただくと、すき家同様に足し算的な強い味わいになります。
カレー自体の完成度が高いことで、高い値付けも納得。ただ、カレーのレベルが高いので、もはや牛丼のアタマはなくて良いかも? とも思いました。カレーだけで十分満足できる完成度の高い一品でした。
『なか卯』の「カレーこだわり卵はいからうどん」は意外にもスパイス推しの絶品カレー。うどんとの相性も◎

続いて、『なか卯』の「カレーこだわり卵はいからうどん」。カレーライスとうどん、生卵がセットになったメニューです。

かなりスパイシーなカレーで、辛味も強く複雑な旨みが口の中に広がります。正直驚きましたが、これが非常に美味しいんです。そしてなか卯自慢の黄身の濃い卵をかけてみると、さらにコクが増し、まろやかな味わいに変わります。これはウマい! カレーと対照的にあっさりした「はいからうどん」とのコントラストも素晴らしく、筆者的には今回の食べ比べで一番美味しいと思ったカレーでした。
にんにく感+スパイシー感で結構クセ強め!『からやま』の「からあげカレー」

ここからは揚げ物チェーンのカレーをご紹介します。まずはからあげチェーンの『からやま』の「からあげカレー」759円。リーズナブルな価格で、普遍的な味わいを楽しませてくれる『からやま』。カレーもきっと昔ながらのオーソドックスな味なのかな? などと想像し、期待が膨らみます。

しかし、サーブされたカレーを見て驚きました。サラサラしたスープカレーにも近いカレーが登場したのです。
ニンニク感とスパイス感が複雑に絡み合い、かなり独創的で主張強めの味わいです。これはものすごく個性的。筆者的には大好きな味ですが、かなり独創的なカレーなので、好みがはっきり分かれそうだな、とも思いました。これは推測ですが、メインのからあげのサクサク感が損なわれないよう、粘度弱めのカレーに仕上げているのかもしれません。いずれにせよ、からやまのカレーは、丼&揚げ物チェーンの中でも、強烈な個性を放つ一品でした。
程よいスパイス感に甘味・辛味が複雑に絡み合う!『松のや』の「“松のや”のロースかつカレー」

最後は、とんかつチェーン『松のや』のカレー。同じグループの松屋とはどう違うんでしょうか。今回は『松のや』自慢のとんかつと一緒にいただく「“松のや”のロースかつカレー」をオーダー。カツカレーにして670円という低価格。松屋の「ビーフカレーギュウ」880円より安いのが驚きです。そして、ライスの上にとんかつがのせられ、カレーソースに浸っていないところも好印象です。

さっそくいただいてみると…スパイスの香り、甘味、辛味、コクが複雑に絡み合い、かなりパンチのある味。それでいてバランスがよく、全体的にはまとまりのあるカレーに仕上がっています。
ちなみに、このカレーにはテーブルに置いてあるソースをかけていただくのも最高。ソースをかけると旨みがグーンとアップします。複雑なのに個性を出しすぎず、普遍的。おそらく誰もが好きなカレーに仕上がっていると思います。
調査結果:普遍的な味なら『吉野家』、スパイス推しなら『なか卯』、強いパンチ力なら『松のや』
ここまで、『吉野家』『すき家』『松屋』『なか卯』『からやま』『松のや』のカレーを食べ比べつつ、各チェーンの個性に迫りました。
普遍的でオーソドックスなカレーを求めるなら『吉野家』がオススメ。それ以外のチェーンは、どこも大幅に個性が異なりました。大別して「強いパンチ系」「スパイス推し系」に分かれるように思いましたが、「強いパンチ系」では『松のや』がイチオシ。また、「スパイス推し系」では『なか卯』が一番。今回食べ比べした中では、筆者は最も美味しいカレーだと思いました。
とはいえ、『すき家』の足し算的なガッツリ系カレー、『からやま』の超個性派カレーも好みによっては絶大な評価を得そうです。さて、あなたはどの丼&揚げ物チェーンのカレーが気になりましたか? 本記事を参考に、ぜひ自分好みのカレーを見つけてくださいね。
(撮影・文◎中西ふみえ・松田義人)