●兵庫県内に4店舗展開する老舗洋食店『グリル一平』。創業時から根強い人気の「スパゲティ・イタリアン」を食べてきた
1868年(明治元年)の開港をきっかけに西洋の文化や習慣が持ち込まれた神戸。
そんな中、懐かしい料理が楽しめる店として幅広い世代から支持されているのが、1952年創業の『グリル一平』。市内には同店出身のシェフが開いたお店が多く、神戸洋食を語るうえで外せない名店です。

今回訪れた新開地本店は、1995年1月17日に阪神淡路大震災で被災。店舗の崩壊や従業員の避難、食材確保の困難などにより一時は廃業の危機に陥りました。そんなピンチを救ったのが常連客たち。「グリル一平をなくしたくない」という思いから、なんと2階建てのプレハブ店舗を建てたそうです。
震度7を記録し甚大な被害を受けた新開地駅周辺。生活自体が大変な状況で、それでもお店を再建しようとした常連客たちの行動から、どれほど『グリル一平』が愛されていたのかがわかります。

現在は、新開地駅から地上に上がってすぐのアーケード商店街に店を構えています。
熱々の鉄板でいただく名物「スパゲティ・イタリアン」

オムライスやビーフシチュー、ハンバーグといった王道の洋食メニューもありますが、創業当時から人気なのが熱々の鉄板で提供される「スパゲティ・イタリアン」。壁に飾られた有名人の写真やサインを見ながら待っていると、もくもくと湯気を立たせた一皿が登場しました。
直径22mmもあるという太めのスパゲティの上にたっぷりの粉チーズがかかっていて、その下には生卵が隠れています。具材はマッシュルームとピーマン、グリンピース、玉ねぎ、そしてゴロッと塊になったひき肉。

ベースは濃厚なトマトの風味。秘伝のレッドソースとデミグラスソースを使っており、ナポリタンとミートソースの両方をいいとこ取りしたような逸品です。
同店の代名詞ともいえるデミグラスソースは、淡路島産玉ねぎなどの野菜とお肉をじっくり煮込み、5日以上かけて作っているそう。トマトの酸味や甘み、ほんのりビターなデミグラスが、もっちもちの太麺にしっかり絡んでいてやみつきになります。
続いては、卵と粉チーズを絡めて食べてみましょう。

卵のコクとまろやかさ、チーズの濃厚な風味が加わりまた違った味わいに。時間が経つにつれて火が通り、白身はプルッと卵黄はとろりと食感に変わります。
ちなみにこの「スパゲティ・イタリアン」は、白ご飯と一緒に食べるのも人気なのだとか。今回は単体でいただきましたが、濃厚な味付けなのでご飯との相性が良いのも納得です。
地域と共に歩み続ける老舗の味

『グリル一平』の料理は“最高のデミグラスソースを最も美味しく味わうための洋食”なのだそう。創業から70年以上、時代を超えて愛され続ける味の背景には、丁寧な仕込みと変わらぬ味へのこだわり、そして何より地域の人々との固い絆がありました。
(撮影・文◎安達春香)
●SHOP INFO
グリル一平 新開地本店
TEL:078-575-2073
住:兵庫県神戸市兵庫区新開地2丁目5-5 リオ神戸 2F
営:11:30~15:00(L.O.14:30)、17:00~20:00(L.O.19:30)
https://grill-ippei.co.jp/