●仕事で東西南北、日本全国を飛び回るBEAMS JAPANの名物ディレクター・鈴木修司さん。尊敬する人物は『男はつらいよ』の車寅次郎。

寅さんのように年の1/3は旅の空という鈴木さんが、旅先で見つけた銘品を「フーテンの寅みやげ」としてご紹介します。

 ビームスジャパンの鈴木修司です。持論ですが、「寒い時期には寒い地域に、暑い時期には暑い地域に旅をする」のが正解だと考えています。そうすることで、その地域の姿をより鮮明に捉えられ、より深く理解することができると思うからです。したがって冬の旅は、寒い北国だったり、雪深いエリアに旅に出かけることが多くなります。

BEAMSの名物ディレクターがこっそり教える「飛騨高山」の名酒と酒器の魅力とは【フーテンの寅みやげ】
郡上八幡の街のど真ん中を流れる長良川

 年末、それも年の瀬に行ったのは岐阜県の郡上八幡、そして飛騨高山。レンタカーを借りて、商談と年末の挨拶を兼ねての訪問です。見たい場所や買いたいものが沢山ある地域なので、仕事とはいえテンション高めの旅となりました。

郡上八幡は食品サンプルの聖地

BEAMSの名物ディレクターがこっそり教える「飛騨高山」の名酒と酒器の魅力とは【フーテンの寅みやげ】
“いがわ小径”と呼ばれる、用水路沿いの風情ある脇道

 少し早めに郡上八幡に着いて、少しだけ街を散策します。個人的に大好きなスポットが「いがわ小径」。“水の町”の面目躍如で何とも美しい場所。この時期は雪解け水なのか水量が豊かで、脇道ギリギリまでの水面で川が流れています。立派に育った鯉や川魚が間近な距離を泳いでいるので、ぼーっと眺めていたくなりますが、そうのんびりもしていられず目的地へ。

BEAMSの名物ディレクターがこっそり教える「飛騨高山」の名酒と酒器の魅力とは【フーテンの寅みやげ】
「買う、見る、作る」が体験できる“レトロアート館”

 意外に知られていませんが、郡上八幡は日本屈指の“食品サンプル”の産地。長いお付き合いの「さんぷる工房」さんで打合せ後に、新しくできた「レトロアート館」という体験施設を見学。ここが想像以上に見応えがあってよかった。

 食品サンプルの制作体験ができるのはもちろん、食品サンプルが流行していた昭和時代にタイムスリップできる本格的な展示、そして思わず食べたくなるような精巧な食品サンプルグッズも購入できます。最近は外国人観光客にも大人気のようですが、ぜひ日本人に行ってほしい場所です。

BEAMSの名物ディレクターがこっそり教える「飛騨高山」の名酒と酒器の魅力とは【フーテンの寅みやげ】
本物と見紛うような出来栄え

 もし行く機会があれば、郡上八幡はたっぷり時間を取って訪れることをオススメします。長良川から見上げる山頂にある“郡上八幡城”まで登れば、とても美しい景色を眺めることができます。それと、「桜間見屋(おうまみや)」のニッキ飴もすごく美味しいのでお土産にぜひ。

飛騨高山で地酒と酒器を手に入れる

BEAMSの名物ディレクターがこっそり教える「飛騨高山」の名酒と酒器の魅力とは【フーテンの寅みやげ】
飛騨高山の街並みはいつ訪れても魅力的

 郡上八幡から、レンタカーを飛ばして飛騨高山に到着。日本各地を巡っていますが、やはり“高山の街並み”には惚れ惚れします。観光客少なめの朝早くの散歩がオススメです。

 この日の晩酌は居酒屋でこの地方の名物である“漬物ステーキ”を堪能。熱々の鉄板で提供されるので、合わせるお酒はそれも冷酒が合う。

もちろん地酒です。

BEAMSの名物ディレクターがこっそり教える「飛騨高山」の名酒と酒器の魅力とは【フーテンの寅みやげ】
大好物の漬物ステーキ[食楽web]

 飛騨高山はそこまで大きな街ではありませんが、その規模にそぐわないほどの数の酒蔵が点在しています。「久寿玉(くすだま)」、「深山菊(みやまぎく)」、「山車(さんしゃ)」、「蓬莱」、「白真弓(しらまゆみ)」などなど、いずれも銘酒揃い。呑兵衛としては、どれを飲もうか、どれを買おうかと毎回けっこう迷ってしまいます。

BEAMSの名物ディレクターがこっそり教える「飛騨高山」の名酒と酒器の魅力とは【フーテンの寅みやげ】
ホテルから眺める飛騨高山の市街、今にも雪が降ってきそう

 翌日は早起きして、“陣屋前”の朝市へ。年末最終週の“年の瀬市”には、“しめ飾り”などの正月用の縁起物や食材がたくさん並ぶのです。ここ数年はこの市で自宅用のしめ飾りを手に入れていたので今年も買おうと思って行ったのですが、一日前だったので並んでない! 朝からガッカリしていたところ、一軒だけ先出しで販売しているのを発見! 無事にしめ飾りを購入できました。

BEAMSの名物ディレクターがこっそり教える「飛騨高山」の名酒と酒器の魅力とは【フーテンの寅みやげ】
素朴ながらも小京都らしい気品を感じさせる“しめ飾り”や“しめ縄”

 気分良く次に向かったのは、前述の銘酒「久寿玉」で知られる『平瀬酒造店』さん。こちらは昨年からのお付き合いですが、個人的にはずいぶん昔から愛飲していた酒蔵です。日頃のお礼と年末の挨拶を済ませ、季節限定のお酒も購入させていただきました。

銘酒と酒器をお土産に

BEAMSの名物ディレクターがこっそり教える「飛騨高山」の名酒と酒器の魅力とは【フーテンの寅みやげ】
軒先に歴史の重さを感じます

 今回のお土産としてオススメするのは、やはり飛騨高山の“地酒”です。平瀬酒造店の営業部長さんの推薦で買ったのは「純米生原酒 なましぼり」、勧められずとも買ってしまいそうな大好きな感じのお酒です。その地酒に合うような、飛騨高山の“古物”の酒器がまたお土産に最高なのです。

BEAMSの名物ディレクターがこっそり教える「飛騨高山」の名酒と酒器の魅力とは【フーテンの寅みやげ】
飛騨高山の地酒と古物店で集めた酒器

 本当はあまり教えたくないのですが、高山市内には古物店が多く、しかも品質や品揃えがかなり良く、価格も他の地方に比べて控えめ。お好きな方は、地酒と合わせて古い酒器をお土産に買って帰ってみるのも、粋で良いんじゃないでしょうか。

まとめ

BEAMSの名物ディレクターがこっそり教える「飛騨高山」の名酒と酒器の魅力とは【フーテンの寅みやげ】
こちらも大好物の「高山ラーメン」

 雪花が散らつく中、目当てのものをしっかりと手に入れましたが、すっかり体が冷え切ってしまいました。そんな時はアツアツの「高山ラーメン」が最高です。濃いめの醤油ベースの出汁がたまりません。ちなみに、地酒をしこたま飲んだ後の〆の高山ラーメンもまた、たまらない旨さであることを付け加えておきます。

●著者プロフィール

BEAMSの名物ディレクターがこっそり教える「飛騨高山」の名酒と酒器の魅力とは【フーテンの寅みやげ】

鈴木修司(すずきしゅうじ)|BEAMS JAPANクリエイティブディレクター

1976年、三重県松阪市生まれ。年間120日近くを旅に費やし、日本各地の様々な場所で魅力的なモノ・ヒト・コトを発掘。大学などで講師を務めることも。著書に『銘品のススメ』、監修書籍に『都道府県おでかけ図鑑』などがある。

編集部おすすめ