福井県といえば、日本有数の酒どころ。県内には37の酒蔵が現存しており、これは37万人という人口からすると、かなりの数といえます。

 そんな福井県の地酒に合わせるのにオススメなのが、地元生まれの発酵食品の数々。全国的にはあまり知られておらず、筆者もあまりピンと来ていなかったのですが、福井の地酒と発酵食品のマリアージュを紹介するセミナーが開催されると聞きつけ、さっそく参加してきました!

端麗さと旨みが共存する福井の日本酒とは?

 福井は酒米の生産が盛んな地域です。1位の兵庫県では「山田錦」、2位の新潟県では「五百万石」、そして3位の福井県では「五百万石」を生産しています。福井の酒米は県内で消費されるだけでなく、灘や伏見といった三大酒処にも出荷されているそう。また、食用米として有名なコシヒカリは福井発祥の銘柄だというのも今回初めて知りました。

へしこだけじゃない! 福井県の“淡麗旨口”な日本酒に合う最高の「発酵食品おつまみ」

 そんな同県で作られる日本酒は精米度の高いものが多く、「特定名称酒」と呼ばれる純米酒、吟醸酒、大吟醸酒を手造りする蔵が多くなっています。福井は軟水が多く、柔らかい日本酒作りが得意です。さらに、冬の寒さが厳しい地域ならではの淡麗な味わいを生み出すことから、「淡麗旨口」というハイブリッドなタイプの日本酒が多いそうです。

へしこだけじゃない! 福井県の“淡麗旨口”な日本酒に合う最高の「発酵食品おつまみ」

福井といえば「へしこ」と「なれずし」

 みなさん、「へしこ」ってご存知でしょうか? サバやイワシなどの魚のぬか漬けのことで、江戸時代から福井で食べられている伝統的な料理です。サバは腐りやすい魚だったので、長期保存できる保存食としてへしこが作られていました。

へしこだけじゃない! 福井県の“淡麗旨口”な日本酒に合う最高の「発酵食品おつまみ」

 脂ののったサバを背開きにして内蔵を処理し、塩、ぬか、少量の唐辛子を桶に入れ、約1年間漬け込んで作られます。夏を超えることで発酵が進み、ぬかでタンパク質が分解され、旨味成分であるアミノ酸が引き出されるそうです。

 「なれずし」は「海のチーズ」とも呼ばれる発酵食品で、サバをごはんと一緒に漬けて熟成させたもの。「すし」と名は付きますが、鮒ずしと同様の発酵食品なんですね。

作り方は地域により異なり、へしこを使うところもあれば、塩サバを使うところもあるそうです。

 ほかにも、大豆、麦麹、米麹を熟成・発酵させたものに茄子を加えたおかず味噌の「はなみそ」など、福井ならではの発酵食品の種類は豊富です。

発泡日本酒から古酒まで揃う豊富なラインナップ

 今回のセミナーで振る舞われたのは日本酒7種と発酵食品を使った料理7種。どれも見た目が華やかで春を感じます。

へしこだけじゃない! 福井県の“淡麗旨口”な日本酒に合う最高の「発酵食品おつまみ」

 まずは甘酸っぱいスコと爽やかな苦みのあるクレソンを使ったマリネを、発泡日本酒の「宴日和」でいただきます。すっきりとした甘さとシュワシュワした口当たりは食前酒としてぴったりです。

へしこだけじゃない! 福井県の“淡麗旨口”な日本酒に合う最高の「発酵食品おつまみ」

 次にいただくのは小鯛の笹漬けと春野菜のカルパッチョ。純米吟醸生の「早瀬浦」は軽やかな甘みのあるお酒です。そんな甘みと小鯛の旨みが絶妙な組み合わせで、思わず「幸せ……」と独り言を言ってしまうレベル。

へしこだけじゃない! 福井県の“淡麗旨口”な日本酒に合う最高の「発酵食品おつまみ」

 柚子味噌を載せた胡麻豆腐は、特選純米大吟醸の「梵」と。お酒から漂う柑橘系のような香りは、柚子味噌との相性もバッチリ。マリアージュの手法として、香りなどのテイストを揃えていくのもいいですね。

へしこだけじゃない! 福井県の“淡麗旨口”な日本酒に合う最高の「発酵食品おつまみ」

 個人的に気に入ったのは、へしこチーズのブルスケッタと、熱燗にした「九頭龍 大吟醸」の組み合わせ。燗用の大吟醸として生まれた九頭竜 大吟醸ですが、味わいに丸みがあり。とても上品な印象。そこに濃厚なへしことチーズが組み合わさることで、口のなかに一体感が生まれています。

へしこだけじゃない! 福井県の“淡麗旨口”な日本酒に合う最高の「発酵食品おつまみ」

 また、サバの押しなれずしと合わせた「圓 山廃純米」は、両方が味を主張し合いながらもスッキリとした後味なので、どんどん食べ進めたくなる組み合わせでした。

へしこだけじゃない! 福井県の“淡麗旨口”な日本酒に合う最高の「発酵食品おつまみ」

 分厚いお揚げとはまなみそには、「花垣」の純米伍年古酒を。ウイスキーのような熟成香の古酒が織りなすはまなみそとのハーモニーは、やはりどちらも寝かせているからこそ成せる技なのかもしれません。

へしこだけじゃない! 福井県の“淡麗旨口”な日本酒に合う最高の「発酵食品おつまみ」

 デザートの干し柿チョコは、同じく「花垣」の貴嬢年譜7年を合わせます。こちらは仕込みに日本酒を使う「貴嬢仕込み」という醸造方法で作られた日本酒で、濃厚な甘みと適度な酸味、そしてまろやかさが感じられます。食後酒として楽しむのにぴったりで、「日本酒」にここまで幅があることに驚かされました。

へしこだけじゃない! 福井県の“淡麗旨口”な日本酒に合う最高の「発酵食品おつまみ」
へしこだけじゃない! 福井県の“淡麗旨口”な日本酒に合う最高の「発酵食品おつまみ」

 現在、福井県では新たな品種の酒米の開発を進めており、すでに3品種まで絞り込んでいるのだとか。さらに、福井産の酵母を作ることも検討しており、“オール福井産”の日本酒を作ることを目標にしています。

 福井の日本酒を飲んでみたい人は、もうすぐ開催される地酒イベントに参加するといいかもしれません。越前・若狭の蔵元が集合して新酒や自慢の銘柄を振る舞う「春の新酒まつり2018」は3月21日(水)に福井フェニックス・プラザ大ホールで開催されます。日本酒を通して、福井の魅力に触れてみませんか?

(取材・文◎今西絢美)

>>福井県酒造組合

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