香港といえば広東料理や飲茶などが定番グルメですが、今回は、いま香港で最も注目されているフレンチレストラン『メゾンES(maison ES)』をご紹介しましょう。

 お店は「スターストリート(星街)」というエリアにあります。

ここは周辺の「月街」、「日街」とともにアトリエや個性的なショップが立ち並び、香港スターや業界人がお忍びで訪れるお洒落スポット。東京でいえば代々木上原界隈といったところでしょうか。

 店の佇まいや空間は、まるでパリのレストランのようで、実際、世界各国のテレビドラマや映画のロケ地にもなったりしています。

 料理も特徴的です。見た目はフランス料理ですが、食べてみると、随所に中国料理のエッセンスが施されており、食べるたびに驚きと感動があるのです。

フレンチと中華の融合というだけではない奥深さ

【香港グルメ】フレンチ×中華!? いま香港で最も注目されているフレンチレストラン『maison ES』とは

 女性のオーナーシェフ、エスター・シャムさんは、香港の三つ星レストラン『ラトリエ・ドゥ・ジョエル・ロブション』で研鑽を積み、2008年に自身の店『タ・パンテリー』を開店。

 その後、2011年にパリに渡り、ミシュラン二つ星の『ルレ・ルイ・トレーズ(13世)』や南仏モンペリエの『ル・ジャルダン・デ・サンス』で修業。

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左がオーナーシェフのエスター・シャムさん。右がヘッドシェフのエリック・チョン氏

 そして香港に戻った後も、『タ・パンテリー』を監修しつつ、2015年4月には現在の『メゾンES』を開店。といった具合に、常に食の研鑽をし続けている人物です。

 さて話が長くなりましたが、『メゾンES』のお料理を紹介します。最初に運ばれてきたのはフォカッチャ。

【香港グルメ】フレンチ×中華!? いま香港で最も注目されているフレンチレストラン『maison ES』とは
ネギ油を使用したフォカッチャ

 小さなココットに入っていて、カットしてみるとフカフカ。バターの香りが漂っていますが、食べてみると、意外にも中国風のネギ油の風味が広がります。

 さらに、ネギ油に加えて、XO醤、沙茶(サーチャー)醤など、中国の調味料が使われているのです。不思議ですが、やみつきになる味わい。

 続いてタラバガニを使ったアミューズが登場。パイの器の上にのっているのは、タラバガニと豆腐。そしてパイの器の底はラクサペーストが敷かれており、これまた実にエキゾチックな味わいです。

【香港グルメ】フレンチ×中華!? いま香港で最も注目されているフレンチレストラン『maison ES』とは
タラバガニのアミューズ

 ラクサといえば、シンガポールやマレーシアでおなじみの麺料理。このラクサの風味がカニの甘みを引き立てています。

 続いて登場したホタテの冷菜には、「大辣干蝦辣椒油」(エビのラー油)が使われていたり、はたまた大きなアカザエビ(ランゴスティン)がのったカッペリーニはXO醤で味付けされていたり、「真鯛の松笠焼き」には甜麺醤が……といった具合に、とにかくフレンチと中国料理の融合っぷりがすごいです。

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アカザエビ(ランゴスティン)が載ったカッペリーニにはXO醤が使われている

 そして筆者がもっとも感動したのは、「和牛リブステーキ 焼きとラグーの食べ比べ」というメインディッシュの肉料理。

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和牛リブステーキ。この後ろにはラグーが

 和牛のリブステーキは絶妙な火入れで、柔らかく旨味がすごい。そして圧巻は和牛のリブアイで作ったラグー。八角や玉ねぎ、トマト、豆瓣醤とオイスターソースで煮込まれており、噛みしめるたびに旨味がほとばしります。

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台湾風の「紅焼牛肉」から発想して作ったラグー

 そして最後のデザートは、「チョコレートムース・ヘーゼルナッツパフェ」。「青花椒油」(青い山椒油)をアクセントに入れているそうで、チョコレートとものすごく相性が良かったです。

なぜフレンチに中国の調味料を使うのか?

【香港グルメ】フレンチ×中華!? いま香港で最も注目されているフレンチレストラン『maison ES』とは
店の奥にあるダイニング。個室としても利用できる[食楽web]

 さて、なぜこのような中華エッセンスを巧みに使用したフランス料理を作っているのか、オーナーシェフのエスター・シャムさんに伺ってみると、「食材本来の味わいと繊細な味付けを重視するフランス料理に中華調味料を合わせると、食材の良さを活かしたまま、さらに味を奥深く、豊かに、美味しくできるから」とのこと。

 さらに中華調味料の中でも特にオススメは「オイスターソース」だそう。

「オイスターソースは、私にとって、子供の頃の思い出の味であり、家庭の味。安心できる調味料です。炒め物や煮込み料理はもちろん、食材の下味をつけたり、ソースのベースにもなります」

 というわけで、香港に行ったら、ぜひ一度『メゾンES』に足を運んで、フレンチ×中国料理のエッセンスが違和感なく同居する唯一無二の料理を体験してみてください。

●SHOP INFO
maison ES
https://www.maison-es.com/

(撮影・文◎土原亜子)

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