東京各地に点在するラーメン激戦区。中でも東京23区の北西部に位置する板橋区のラーメン店は、食楽web人気連載「旨い店はタクシー運転手に訊け!」で、頻繁に紹介されます。
実は著者の運転手・荒川さんの出身地は板橋区。「レベルの高い店が多く、私の舌はここで育まれた」と言います。そこで、今回は荒川さんが通い倒してきたラーメン屋の中で、ぜひ食べて欲しいという「味噌、塩、醤油、煮干し、背脂豚骨」味のラーメンをセレクトしてご紹介します。ぜひ、週末のラーメン探訪に役立ててください!
味噌ラーメン
江戸前味噌ラーメン|新高島平

こちらの味噌ラーメンの味は大きく「江戸前味噌らーめん」「江戸前味噌カレーらーめん」「北海道味噌らーめん」の3つに分かれています。その中で、私のイチオシは「江戸前味噌らーめん」の中の「味噌漬け炙りチャーシュー麺」(1,080円)です。
そのスープは、歴史ある“ちくまの江戸前味噌”を使った白味噌仕立てで、ほんのり甘く、優しく、そしてとっても深い味。また秀逸なのがチャーシューで、秘伝の味噌に漬け込んだ自家製チャーシューです。注文が入ってから1つひとつ直火で炙ってくれるので、フワフワの食感でとっても香ばしいのです。また、写真のようにかなり丼を覆い隠すほど大きく、分厚いのですが、炙ることで適度に脂が落ちているので、しつこさを全く感じることがありません。
さらにその巨大チャーシューに隠れるように、豚ひき肉とアサリ、もやし、揚げニンニクが入っていて出汁の風味豊か。ボリュームも満点ですが、繊細な味わいで、スープを1滴残さず飲み干すくらいの美味しさです。
●SHOP INFO
店名:江戸前味噌ラーメン
住:東京都板橋区新高島平7-14-16
TEL:03-5383-6688
営:11:00~23:00
休:なし
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塩ラーメン
らあめん元|蓮根

『らあめん元(はじめ)』さんも、板橋を代表する名店で、オープン当初からの看板メニューは「塩らあめん」です。最近では、ラーメン、つけ麺ともに、塩味、醤油味があり、「醤油らあめん」ファンがたくさんいるんです。でも、初めてなら、やっぱり「塩」から食べてみて下さい。
また、基本の具材は、姫タケノコ、鶏のつくね、青ネギですが、こちらで絶対に食べていただきたいのは、チャーシューです。スモーキーな香りと濃厚な味わいで、もはやチャーシューというより薄くスライスした燻製ベーコンのよう。シンプルな塩ラーメンを引き立てる名脇役です。
このチャーシューがお気に召したら、「焼豚丼」300円もおすすめ。そのチャーシューが角切りになってゴロゴロと入っています。「塩らあめん」の残ったスープをかけてみてください。絶品の鶏清湯+魚介系の旨みを最後1滴まで堪能できる絶品ラーメン茶漬けになりますよ。
●SHOP INFO
店名:らあめん元
住:東京都板橋区坂下2-16-11
TEL:03-5392-9567
営:11:30~14:20 18:00~21:20(土日祝~20:20)
休:月
https://twitter.com/rahmen_hajime
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背脂豚骨醤油ラーメン
下頭橋(げどばし)ラーメン|常盤台

「背脂チャッチャ系」の元祖といえば、板橋区常盤台で生まれた『土佐っ子』ラーメンです。1980~90年代の環七で起きたラーメンブームを牽引した伝説のお店ですね。ここで修行した人たちが各地でお店を出しましたが、その中でも当時の味をしっかりと受け継いでいると言われているのが、同じ常盤台に店を構える『下頭橋ラーメン』です。
注文が入ってから、何度も背脂チャッチャを繰り返し、出来上がる1杯の豚骨醤油味のラーメン。一見、「しつこそう」と思うかもしれませんが、その振りまかれた背脂は臭みがなく、びっくりするほど甘く、そして、くどくないんです。
その秘密は、ご主人が良質な国産豚、香味野菜を厳選し、丁寧な下処理を施すから。また、チャーシューを煮込む際に作るカエシの塩梅が絶妙なので、しょっぱさが積み重ならないんです。
最近は、あっさり、さっぱり、すっきりといったラーメンが主流になっていますが、こちらの至高の1杯を味わえば、“ラーメンを食べる幸せ”の原点を思い出すかもしれません。
●SHOP INFO
店名:下頭橋(げどばし)ラーメン
住:東京都板橋区常盤台3-10-3
TEL:03-3967-5957
営:18:00~翌4:00
休:水
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醤油ラーメン
魂の中華そば|上板橋

皆が大好きな醤油ラーメン。街中華などで食べる昔ながらのなごみ系や、流行りの洗練系までいろいろあります。ご紹介する上板橋『魂の中華ソバ』(通称“魂(タマ)チュー”)の「中華ソバ」は、どちらかというと、ほっこり系の味ですが、丼ぶりの中に入るすべてに手仕事を施しているからこそなごむ、優しい味がするラーメンなんです。
特筆すべきはスープ。豚のゲンコツ、豚足、鶏の胴ガラ、鶏もみじ、さらに豚ひき肉と香味野菜を入れて炊き上げた「清湯スープ」を1日寝かし、翌日に、鰹節、鯖、煮干しなどを加えて魚介の香りや味をつけ、基本のスープが出来上がるそうです。この肉と魚の旨みを引き出す火入れ加減や配合が非常に難しいのですが、研究しつくしたからこそ、絶妙な塩梅なのです。
また醤油ダレ、麺、豚肩ロースのチャーシューなども試行錯誤し、究極を作り上げ、さらに、メンマもタケノコから煮込んだ自家製というこだわりよう。彼らが作る“1杯入魂”の味をぜひ食べてみて欲しいと思います。
●SHOP INFO
店名:魂の中華そば
住:東京都板橋区上板橋1-25-10
TEL:03-6906-6082
営:火~金11:30~14:30 19:00~21:00
土・日・祝11:00~16:00
休:月、第2・第4日
※月曜が祝日の場合は営業、翌日休み
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煮干しそば
中華ソバ 伊吹|前野町

板橋区に留まらず、今や全国にファンを持つ『中華ソバ 伊吹』。言わずと知れた “煮干し系”の超有名店です。
営業は昼と夜の二部制で、メニューが変わります。昼は「中華ソバ」(750円)とその日の「限定」(750円~)の2種類。夜は、「淡麗」と「濃厚」(800円)の2種類です。
『伊吹』のメニューでオススメを言うのはとても難しいのですが、まずは「淡麗中華ソバ」をご紹介しましょう。全国から集めた選りすぐりの一級品の煮干のみ使用した“水と煮干だけ”の澄んだスープです。「本当にそれだけ?」と思うくらい、繊細で深い味です。続いて「濃厚中華ソバ」は、水と煮干しのスープに動物系の鶏ガラ・豚骨などを入れたスープで、その名のとおり、かなり濃厚。煮干しのえぐみや苦味が苦手という人もいるかもしれませんが、ここでは、これも味わいのうちで、じつに奥が深いんです。
また、昼の「中華ソバ」は、「限定」など、ご紹介したらキリがありませんね。1度食べたら私のように“伊吹狂い”になるかもしれませんのでご注意を(笑)
●SHOP INFO
店名:中華ソバ 伊吹
住:東京都板橋区前野町4-58-10 見次パークマンション1F
TEL:非公開
営:昼の部11:45~14:30、夜の部18:40~20:35
※どちらもスープ終了次第閉店。
休:月、第1・第3火+不定休
※店舗情報は、掲載当時のものです
(撮影・文◎土原亜子)
●プロフィール
荒川治
東京都内在住のタクシー運転手。B級グルメ好きが高じて、現職に就き、お客さんを乗車させつつ、美味い店探しで車を回している。中年になってメタボ率300%だが、「死神に肩をたたかれても、美味いものを喰らって笑顔で死んでやる」が信条。写真検索で美味しそうなモノを選び、食べに行って気に入ればとことん通い倒す。でもじつは、自分で料理を作ることも好きで、かなりの腕と評判。