近年ブームになりつつある「低温調理」。低温調理器の魅力は、温度と時間を設定するだけで失敗なく仕上がることです。
今回使ってみたのは、貝印の「KaiHouse aio The Sousvide Machine(アイオ・ザ・スーヴィッドマシーン)低温調理器」。実はこの低温調理器、これまでのものとは少し違うんです。料理を作りながらその違いをご紹介しましょう。
専用の真空シーラー機で真空包装が可能
貝印の低温調理器は、食材の真空包装が可能な専用のシーラーが付属します。これまでの低温調理器にはシーラーは付属せず、“できるだけ袋内の空気を抜く”ことで真空に近づけていましたが、これなら簡単に真空状態にできます。

真空包装をするメリットは、「旨みや風味を逃さず、均一に調味・加熱できる点」にあります。50ml程度の少量の調味液とともに食材を真空包装して調理できるのが、この低温調理器の特徴です。
ローストビーフがムラなく仕上がるのは低温調理ならでは
KaiHouse aio The Sousvide Machine低温調理器は、和食やイタリアンなど12名の料理家やシェフが監修した63のオリジナルレシピを、購入者限定特典として参照できます。今回はオリジナルレシピに掲載されている「ローストビーフ」「しっとり帆立のマヨネーズソース」「卵の千種巻き」を作ってみました。
まずはローストビーフから。用意したのは下記の材料です。
・牛もも塊肉……350g(厚さ約3.5cmのもの)
・塩……小さじ2/3(牛肉の1%)
・こしょう……小さじ1/3
・バター……小さじ2
・サラダ油……小さじ2
料理を始めるまえに鍋もしくは耐熱容器に水またはお湯を入れ、本体を設置します。このバーのなかに電熱コイルが入っており、1,000Wのハイパワーで温度管理や水の対流を行い、食材に均一に火を通すのです。


室温に戻した牛塊肉はキッチンペーパーで水気を拭きます。Lサイズの専用袋の口を折り返して牛塊肉を袋に入れたら塩、こしょうをまんべんなく振りましょう。

折り返した袋の口元を戻したら専用シーラーにセットします。フタを締めて左右を両手でしっかり押し、本体の「V」ボタンを押すと、自動脱気シーリングが開始します。ローストビーフの場合は30秒ほどでシーリングできました。



今回初めてシーラーを使ったのですが、慣れないうちは練習が必要かもしれません。また、袋のなかに上手く食材を収めないと真空状態にならないことも覚えて置きましょう。
ここからは低温調理を開始します。58度、50分のタイマーをセットしたら、加熱を開始。鍋の温度が設定温度になるとアラームが鳴ってタイマーが開始するので、先ほど真空パックにした牛塊肉を鍋に入れましょう。あとはひたすら待つだけ。

50分経つとアラームが鳴るので、鍋から真空パックを取り出し、袋から肉を出します。

あとは最後の焼き付けを残すばかり。フライパンにサラダ油とバターを入れて火にかけ、バターの泡が収まったら肉を入れ、全体的にきれいな焼き色が付くように回しながら焼きます。

全体に焼き目が付いたら肉をバットの上で5~10分休ませましょう。あとは好みの厚さに切り分けて器に盛れば完成です。

KaiHouse aio The Sousvide Machineで作ったローストビーフは、肉の断面を見るときれいに火が通っていることがわかります。肉質がとにかくしっとりしており、これまで幾度となくローストビーフを作ってきた筆者もこのクオリティには驚かされました。
今回は50分加熱しましたが、肉の大きさによっては時間は長くしたいところ。「真空低温調理」と聞くと難しそうに感じるかもしれませんが、下ごしらえをするだけでいいので作業量が少ないのが良かったです。
帆立のフレッシュさが楽しめる本格的な調理法
自宅で帆立を食べるとなると、生、ボイル、焼くくらいの調理法がメインになるかと思います。ふっくら仕上げるのが難しい食材ですが、低温調理なら火入れも簡単なんです。
「しっとり帆立のマヨネーズソース」の作り方の大まかな手順は下記のとおり。
まずはMサイズの専用袋に帆立と酒を入れ、手動脱気シーリングを行います。

本体で温度と時間をセットして加熱開始。設定温度になったら専用袋に入れた帆立を入れ、加熱が終了するのを待ちます。

あとは、マヨネーズと和えてお皿に盛りつければ完成。20分かからずにオシャレなひと皿ができました。

真空低温調理した帆立は生のような風味としっとりした食感が楽しめ、まるでお店の料理のよう。旨みが出た帆立のエキスをソースに使っているので、ただマヨネーズを加えただけなのに上品な味わいになっています。
「卵の千種巻き」は液体のシーリングに苦戦
低温調理なら、焦がすことなく卵焼きを作ることもできます。ただ、筆者が一番苦戦したのが、この「卵の千種巻き」です。
具と調味料を加えた卵液を、Mサイズの専用袋に入れて手動脱気シーリングをします。

このシーリングがなかなか上手くいかず、気付くと卵液が袋の口にいって上手く密封されないという事態が何度が起こりました。
本体の温度と時間をセットして加熱を開始します。設定温度になったら専用袋に入った卵液を鍋に入れて加熱して、あとは形を整えるだけ。

比較的だし巻き卵をふっくら焼けると自負している筆者でさえ、この千種巻きのふわとろ感には驚かされます。冷ましてから食べるというのがポイントなのですが、このなめらかさは低温調理ならではといえるでしょう。
今回、調理をしてみてふと気になったのは、使い捨ての専用袋のコストです。最初はMサイズ10枚、Lサイズ10枚が付属しますが、これを使い切ったら自腹での購入が必要です。Mサイズは20枚1,400円(税抜・以下同)、Lサイズは20枚1,800円/100枚8,300円。さらにLサイズロールタイプ2本入りは2,500円です。1枚あたり70~90円というのはちょっともったいないかなと思いましたが、レストランクオリティの料理ができるのであれば、許容範囲の出費かと思います。
本体は税抜5万円と決して安くはありません、シーラーなしの低温調理器が2万円台で買えることを考えると悩ましいのですが、“これ一台で真空包装も低温調理もできる”ということが、この製品の最大の強みといえるでしょう。また、操作方法も比較的わかりやすいので、初めての人も難なく使えるはずです。

自宅でレストラン顔負けの本格的な低温調理をしてみたいと考えている人は、ぜひ購入の選択肢に貝印の「KaiHouse aio The Sousvide Machine低温調理器」を加えてみてはいかがでしょうか。
●DATA
KaiHouse aio The Sousvide Machine低温調理器
https://www.kai-group.com/store/special/teionchoriki/
●著者プロフィール
取材・文/今西絢美
編集プロダクション「ゴーズ」所属。デジタル製品やアプリなどIT関係の記事を執筆するかたわら、“おいしいものナビゲーター”として食にまつわる記事も執筆中。旅先でその土地ならではのローカルフードを探すのが好き。