「ソース焼きそば」といえば、いつでも、フツーに美味しい食べ物。家で作ってもほぼ失敗がなく、外で食べてもまあハズレがない。
それが、神保町に2019年8月8日、オープンしたばかりの『東京焼き麺スタンド』の「スーパー焼き麺」です。
焼きそばと何が違うの? と思うかもしれません。確かに見た目は「焼きそば 目玉焼きのせ」に見えなくもない。しかし、よーく目を凝らすと違うんです。まず目玉焼きの下の中太麺が、パスタのようにクルッと美しく渦を巻いています。こんな流れるような麺の盛り付けをする焼きそば、あまり聞いたことがありません。

一口食べたら、その食感にびっくり。麺の表面は焼き目がついてパリッとしていて、噛むとモッチリ。さらにソースよりも先に麺の旨みをガツンと感じます。うどんならまだしも、こんなにダイレクトに小麦の美味しさを感じたり、食感を楽しめたりする焼きそばが今までにあったでしょうか。
そして肝心のソースは、和食のタレのごとくしみじみした味。でも、やっぱりピリッとスパイスのきいたやっぱりソース味なのです。まだまだ驚きはあります。通常、焼きそばの具材の豚肉やキャベツは、あってもなくてもいいくらいボソボソと存在感が薄いものですが、この焼き麺の豚肉は主張が強い。その上、ジューシーで、カツオと醤油の味わいも感じるのです。
「焼き麺」が美味しい理由

この『東京焼き麺スタンド』は、1号店が東京・下北沢にある人気店。今回、神保町にオープンしたのは、2店舗目です。
オーナーは、兵庫県姫路市出身の黒田康介さん。地元、兵庫のソース文化の1つ「焼きそば」の本当の魅力を広めようと脱サラして焼きそばの研究を重ね、一般的な鉄板ソース焼きそばとは一線を画す調理法を考案。そして1年前に1号店を下北沢にオープン。そこでオリジナルの「焼き麺」が評判になり、とんとん拍子に2号店をオープンしたというわけです。
その製法をご紹介しましょう。

作り方を見せてもらうと、まずは中華鍋に油とラードを敷き、麺を入れて、ヘラでくるくると回しながら渦巻き状に焼いていきます。巻きながら鍋に沿って面を作りあげ、強火で両面にほんのりと焦げ目をつけます。

「ラーメンの麺は、表面はモッチリ柔らかく、芯の部分でコシを感じるように茹でます。しかし、焼きそばはその“逆”が美味しい。麺の表面でコシを感じるようにパリッと焼き、中はモッチリが正解。そこであえて茹で置きの麺を使い、中華鍋の凹底をうまく使うことで、表面はパリッと、中はふんわりと焼き上げられるんです」(黒田さん・以下同)
麺を焼いたら、今度はキャベツや下処理をした豚肉を投入。さらに鍋を振り続けます。

鍋の下に集まりがちな肉や野菜の具材は、中華鍋を振って遠心力で、麺の周りに飛ばしながら焼き上げます。こうすることで、具材に火が通り過ぎることがありません。
「うちの豚肉は、前日にカツオ×醤油のだし醤油で漬け込んで蒸し焼きにしたものを使っているので、火を通しすぎないほうが柔らかくジューシーに仕上がるんです」
そして最後にオリジナルソースで仕上げです。

「うちのソースは、カツオ出汁、醤油、ソースを配合しています。ソースは私の地元・兵庫県を代表する調味料。めちゃくちゃこだわりがあるんですが、じつは、私は醤油も大好きで、これをプラスすることで、みんなが毎日食べられる、あっさりした焼きそばになるんです」

たかが焼きそば、されど焼きそば。一皿に奥深さを感じる「焼き麺」です。1階はスタンド、2階はテーブル席もあり、さらにテイクアウトもできます。新しい焼きそば「焼き麺」。ぜひお試しください。
(撮影・文◎土原亜子)
●SHOP INFO

店名:東京焼き麺スタンド
住:東京都千代田区神田神保町1-5-13
TEL:050-5597-6545
営:11:00~21:00(20:30LO)
土日祝11:00~17:00(16:30LO)
休:不定休