ナポリタンといえば、昭和初期に横浜で誕生したと言われています。本場イタリアのスパゲッティとの大きな違いは、何といっても麺とソースです。
作家・浅田次郎が著書の『パリ煩い 江戸わずらい』で、
「正統のナポリタンは、アルデンテなどであってはならぬ。きのう茹で上げて冷蔵庫に眠っていたような、ブヨブヨのスパゲッティが好もしい」
と書いていたように、今でも、喫茶店や洋食屋、はたまたナポリタン専門店も茹で置きのブヨブヨ麺が常識となっています。そしてソースは甘くとろみのあるケチャップが定番。

しかし、令和の今、その常識を覆す、進化型ナポリタンを見つけてしまったのです。それは下北沢にある『東京焼き麺スタンド本店』の「スーパーナポリタン」(850円)です。ここは喫茶店でも洋食屋さんでもありません。焼きそば専門店です。
実は筆者は今年7月にオープンした『東京焼き麺スタンド 神楽坂店』を取材した際、オーナーの黒田康介さんから「下北沢の本店で“ナポリタン”を出したら、“焼き麺”より人気が出ちゃって」という情報を得ていたのです。それが気になり、先日、下北沢の本店に食べに行ってきたわけですが…これがものすごく美味しかったんです。
超濃厚“焼きデンテ”に脱帽

登場したのは、真っ黒なお皿に真っ赤なナポリタン。ベーコン、ソーセージ、玉ねぎ、ピーマンといった具材がゴロゴロ入っていて、太麺とともに濃厚なケチャップソースに絡まっています。見た目は、ごく普通のナポリタンですが…

スパゲッティを箸で食べてみると、いきなりガツンと違いを感じました。
所々に焦げ目があって、その部分の食感はパリッと香ばしくてさらに美味しい。今までの「ナポリタン」と方向性は同じようですが、食感が平坦ではなく、変化に富んでいて面白い!

実は、オーナーの黒田さんによると、この「スーパーナポリタン」は、北海道産の小麦粉100%のつけ麺用生麺を、その日の朝に茹でておき、その茹で置きを使っているんだそうです。
作り方は、中華鍋でまず麺だけを強火で焼き上げて、両面にほんのりと焦げ目をつけ、それから具材を投入。中華鍋を振り、野菜を麺の周囲に飛ばしながら焼き上げていくので、野菜を焼きすぎることがなく、食感も味も、しっかり残しているんです。
そして、肝心のソースです。これが旨いのなんの。
「“スーパーナポリタン”に使用しているのはオリジナルソースです。ケチャップに生のトマトやトマトジュースを合わせて煮込み、トロトロに仕上げています」とのこと。

かなり濃厚で、量もたっぷりなので、途中で少し味変したくなります。

また、お好みで、卓上の『やげん堀』の七味やマヨネーズをかけるのもオススメ。「ナポリタンに七味? マヨネーズ? 合うの?」と思うかもしれませんが、これがびっくりするくらい合うんです。イメージで言えば、お好み焼きのような感じでしょうか。
こうして食べ進み、最後のほうで気付きます。あれ? ナポリタンを食べていたのに、焼きそばを食べたような気分……。「実は、ケチャップソースの隠し味に、ソースを使用しているんですよ」と黒田さん。やっぱり! 通常のナポリタンなら、粉チーズやタバスコが合いますが、「スーパーナポリタン」に黒酢や七味、マヨネーズがぴったりハマるのは、ソースのせいなんですね。

どうです? 前代未聞の「ナポリタン」でしょう。
ちなみに、下北沢の本店だけでなく、神保町店でも「スーパーナポリタン」はいただけます。みなさんもこの進化系「スーパーナポリタン」、ぜひ味わってみてください。ハマりますよ!
(撮影・文◎土原亜子)
●SHOP INFO

店名:東京焼き麺スタンド下北沢本店
住:東京都世田谷区北沢2-23-6 すみれビル2F
TEL:050-5595-8703
営:11:30~15:30(LO 15:00)、17:30~23:00(LO 22:30)
※具材がなくなり次第終了する場合あり
休:火曜