ころんとしたフォルムが愛らしいイタリア・ピエモンテ生まれの郷土菓子「バーチ・ディ・ダーマ」をご存知ですか? クッキー生地にチョコレートを挟んだ小さな焼き菓子です。
食べるときにすぼめる口がキスをするのに似ていることや、チョコレートをサンドしているクッキーがあたかもキスをしているように見えることから、イタリア語で「貴婦人のキス」という意味を持ち(諸説あり)、古くから北イタリアの伝統菓子として親しまれています。
東京・目黒のイタリアンレストラン『トラットリア・デッラ・ランテルナ・マジカ』では、バーチ・ディ・ダーマをはじめ、ビスコッティ、アマレッティなど、店頭カウンターのショーケースに自家製のイタリア菓子を並べ、販売しています。

焼き菓子のバリエーションは8種ほどで、日によって内容は変わり、陳列されるのは常時4種類。なかでも「バーチ・ディ・ダーマ」はボックス入りの特別仕様でひときわ目を引き、ちょっとしたギフトやお返し、お土産にもぴったりです。
「当店のバーチ・ディ・ダーマは、一般的なものに比べて小粒なのが特徴」と話すのは、シェフの阿部之彦さん。
かつて一世を風靡したティラミス、パンナコッタに始まり、ナターレ(クリスマス)に欠かせないパネットーネ、パンドーロなど、日本でもなじみ深いイタリアのスイーツはたくさんありますが、まだまだ知名度が高いとは言えない「バーチ・ディ・ダーマ」。小ぶりなひと口サイズにこだわり、さらに特別なボックスを誂えて「バーチ・ディ・ダーマ」を提供する理由を、シェフの阿部さんに詳しく伺いました。
世界最高品質のピエモンテ産ヘーゼルナッツを贅沢に使ったお菓子

「バーチ・ディ・ダーマを特注ボックス入りで特別扱いしている理由はずばり、世界最高品質のピエモンテ産ヘーゼルナッツを贅沢に使ったお菓子ということにあります」(阿部シェフ・以下同)
さらに、お店で提供するお菓子それぞれに思いがあると前置きした上で「ピエモンテ産ヘーゼルナッツをローストした時の豊かな香りは格別。バーチ・ディ・ダーマの仕込み中はキッチンだけでなくレストラン全体が芳醇な香りで満たされ、幸せな気分になりますよ」と、素材への賛辞が尽きません。

もともとピエモンテは良質なヘーゼルナッツの産地。言い伝えによるとピエモンテに住むイタリアの王がお抱えの菓子職人に作らせたのがバーチ・ディ・ダーマの始まりだとか。作り手によってレシピや大きさは異なるそうです。
こちらのお店のバーチ・ディ・ダーマは「縁あってピエモンテ州ニッツァモンフェッラートに店を構えるドルチェ職人・カルロ氏に指南を仰ぐ機会に恵まれ、そのとき出会ったバーチ・ディ・ダーマがこの大きさだったんです」と、シェフ。
シンプルな理由に肩透かしを食らうも、さっそく貴婦人よろしく口をすぼめて食べてみると、口の中に広がる香ばしいヘーゼルナッツの生地とチョコの相思相愛的な口溶けのよさに、つい、もう一粒と手が伸びます。

「ひとくちで完結する大きさも魅力なんだと思います。結局、このサイズがちょうどいい」。シェフの言葉に深く頷きながら、手作業ゆえの不均等な一粒、一粒がもたらす幸福感に包まれていると、驚きの事実が判明しました。
「昨秋、カルロを訪ねて渡伊したら、バーチ・ディ・ダーマが大粒になっていたんです(笑)」。今から10数年前にカルロ氏が伝授してくれた、ほかにはない小粒感が特徴だった本家のそれが大粒に変わったとはなんとも複雑な気持ちですが、お店では小粒だからこその絶妙なレシピを現在も貫いて作り続けているそうです。

ちなみに、ボックス入りで登場したのは昨秋から。レストランを訪れる人たちだけが知る希少性と人気イタリアンのお菓子という話のタネに加え、デザイン性の高いボックスにお手頃プライスとくれば、普段使いの気軽なプチギフトに使わない理由はありません。
なにより、シェフの話を聞くほどに上質な素材を使って紡ぎ出すシンプルで贅沢な美味しさを宿した小粒のバーチ・ディ・ダーマが愛おしく思えてきて、不思議と誰かに贈りたくなるのでした。
(取材・文◎笹森ゆうみ)
●SHOP INFO
店名:トラットリア・デッラ・ランテルナ・マジカ
住:東京都品川区上大崎2-9-26 T&Hメモリィ1F
TEL:03-6408-1488
営:17:30~23:00(L.O)
休:日曜
http://www.lanternamagica.jp
※購入は直接お店で(営業時間外の購入については応相談)。地方配送、まとめての注文は電話もしくはメールにてお問い合わせください