突然ですが、「カルボナーラ」、「ナポリタン」、「たらこスパゲティ」、「ボンゴレ」。あなたの好きな順番に並べてみてください。

これは占いや性格診断ではありません。実は “老けやすい食事”を好む傾向かのちょっとしたテスト。もし、「カルボナーラ」や「ナポリタン」が上位だという人は、ひょっとすると老化スピードが早いかもしれないんです……。

 この2つには、「たらこスパ」や「ボンゴレ」に比べて老化の原因物質「AGE(エー・ジー・イー)」の数値が2~5倍も多いのです。最近、TVなどでちょっと話題になっている「AGE」。ご存知の方もいるかもしれませんが、食を健康的に楽しむために、この“老化と食事”の指標をご紹介したいと思います。

カルボナーラかボンゴレか? 老ける食事、老けない食事の見分け方

 AGEの医学的研究に取り組み、次々と最新データを出している医学博士・山岸昌一先生に、カルボナーラやナポリタンの方がほかの2つよりも老化原因物質が多く含まれている理由を聞くと、ズバリ「ベーコン」にその要因があると言うのです。

カルボナーラかボンゴレか? 老ける食事、老けない食事の見分け方

 ベーコンといえば、あの薫香と塩気、カリッと焼くほど香ばしくて、様々なメニューで大活躍する食材。しかし、まさにその“こんがり感”こそが、AGEの数値を高くしている要因だそうです。「ベーコンは、薫製の段階で加熱が行われ、さらに調理の段階でカリッと高温で焼き上げます。この加熱によってAGE数値が上がるんです」と山岸先生。一体どういうことでしょうか。

そこでもう少し山岸先生にAGEのことを詳しく聞いてみることにしました。

AGEは体の“こげつき”だった

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「AGEとは、 タンパク質と糖が熱によってベタベタとくっつく糖化現象で、最終的に元に戻れなくなった物質(終末糖化産物)のことです。ベーコンをカリッとフライパンで焼く、あのこげつき現象がまさにそれです。私たちの体はほとんどがタンパク質でできており、糖をエネルギー源として利用しているので、この現象が人間の体内でも起こってしまいます。特に、食後は血糖値が上がりますので、血中のタンパク質にくっついてAGEが作られやすくなるのです」(山岸先生・以下同)

 そのAGEがまさに老化スピードを早めたり、健康を阻害するというわけ。例えば同じ50歳の人でも、若々しく見える人と老けて見える人がいますが、AGEが皮膚にたくさん貯まると、コラーゲンが損なわれてしわやたるみになり、また頭皮の毛乳頭細胞のところに貯まると髪の毛の成長が抑えられて、薄毛になったりもします。また、AGEは、心筋梗塞や脳梗塞、認知症、うつ、白内障、歯周病、骨粗しょう症などの病気の一因にもなるそうです。

カルボナーラかボンゴレか? 老ける食事、老けない食事の見分け方

 ちなみに、老化や病気の原因の一つとして「酸化」が有名です。酸化は、体内で過剰に発生する活性酸素によって、体の細胞やタンパク質が “さびつく”酸化現象。一方、AGEの場合は、前述したように“こげつき”現象。鶏の唐揚げのようにカラッと揚げる、肉をこんがり焼く、玉ねぎを飴色に炒めるなど、いわゆる褐色に変わるあの現象を「メイラード反応」と言いますが、それが人間の体内で起こっていると考えると怖いですね。

AGEはどうして体にたまる?

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「AGEは、2つの方法で私たちの体内に蓄積されます。1つは前述したように体内で作られるAGEの蓄積。高血糖状態が長く続く人ほどAGEはたくさん作られてたまります。

また、食べ物や飲み物などにもAGEが含まれており、AGEの多い食べ物を多く食べ続けていると体に蓄積されるのです」

 AGEの蓄積をゼロにはできないのですが、食事から摂るAGEの量をコントロールすることはできます。すなわち、AGEの少ない食事を心がけることで老化スピードや病気予防につながるのです。

食事のAGEを減らすには?

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 山岸先生によれば、1日のAGEの摂取目安は、1万5000exAGEだそうです。カツ丼を食べたら8984exAGE、うな重なら1万4153exAGEと、あっという間に摂取してしまいそう。しかも、そんな数値をいちいち計算するのは無理な気がします。しかし、山岸先生によれば、食事中のAGEを減らすのは、カロリーを減らすより、はるかに簡単だと言います。

「料理のAGEの量というのは高温で調理するほど増えますから、調理法を見ればAGEが多いか少ないかわかります。AGEが少ない調理法を順番に並べると、生⇒蒸す・茹でる⇒煮る⇒炒める⇒焼く⇒揚げるとなります」

 例えば、食パンを生で食べると49exAGE、トーストにすると78exAGE、バターをのせて焼くと2434exAGEといった具合。

 また、現代人がAGEを摂取しやすいのは、食事の簡便性が大きな原因だと山岸先生は言います。
コンビニなどで加熱調理済みの料理を買ってきて、電子レンジで温めて食べる。2度加熱されているので余計にAGEが増えているんです。手作りの料理が一番ですが、温め直しを控えることを心がけた方が良いでしょう」

 では、揚げ物や炒め物といったAGE値が高い食事をする場合はどう対策すればいいんでしょうか?

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「実は、調理や付け合わせを意識するだけで、AGEの吸収を抑えたり、また体内でAGEを作りにくくすることができるんです。

例えば、唐揚げを作るとき鶏肉をレモンで下ごしらえしてから調理すると、糖とタンパク質の反応が抑えられて食品中のAGEを半減できますし、まいたけなどのキノコ類と一緒に食べると、食後の血糖値を抑えられたり、AGEの吸収が抑えられるなどの作用があります」

 そのほかAGEを溜めない食材は以下の通り。

●食物繊維が多い食材:ひじき、海藻、オクラ、ブロッコリースプラウト、モロヘイヤ
●キトサンの多い食材:キノコ類、カッテージチーズ、サクラエビ

 ちなみに、食事と楽しむことが多いお酒はAGEが多いのか、気になるところです。

カルボナーラかボンゴレか? 老ける食事、老けない食事の見分け方

「お酒の中のAGEは気にするほどの量ではありません。ただ、飲み過ぎは注意です。二日酔いの原因とされるアセトアルデヒドからAGEが作られるからです。また、お酒以外ではジュースや野菜ジュースは要注意。糖の吸収速度が早く、血糖値を急激に上げるので、AGEが作られやすく蓄積されやすいのです」

 そのほかにコーヒーに含まれるAGEは微量なので気にしなくてよいそう。ちなみに理想の飲み物は「緑茶」。抗糖化、抗酸化の両方に期待できるので、毎日、食後にお茶をゆっくり飲むことがアンチエジングになるんだそうです。

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 何も考えずに手軽に食事を楽しめる現代、こうした新しい食の指標を頭に入れて、自分や家族の口に入れるものに責任を持つことも大切かもしれませんね。

(取材・文◎土原亜子)

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