北海道に「ざんぎ」があるように、長野県にもご当地からあげがあります。その名も「山賊焼(さんぞくやき)」。
名前の由来ですが、一説によれば鶏を揚げる料理を、物を“取り上げる(=鶏揚げる)”山賊になぞらえ、そして少量の油で焼くようにして揚げたことから“揚げ”ではなく“焼”になったと言われています。

この山賊焼、最近は長野県以外の地域でも食べられるようになってきています。今回お邪魔したのは世田谷区、松陰神社近くの『からあげ家いっちゃん』。テイクアウト専門のからあげ店で、長野県出身の店主・市川直美さんが揚げる本場の山賊焼が堪能できるお店です。
一体どんな味わいなのか、さっそくレポートしていきたいと思います。
200gの肉厚でとろけるような食感の山賊焼

今回は「山賊焼」(200g・660円)のほか「ニンニクからあげ」「しょうがからあげ」(各100g、308円)、「甘辛手羽」(1本165円)も一緒にいただきました。ちなみにこちらでは厳選した鹿児島産の鶏肉を使用しています。
まずは「山賊焼」を。お弁当に入るものは100gだそうですが、単品で提供されているものはその倍の200g。当然筆者は大きいほうをオーダーしました。台湾鶏排のような大きなサイズです。

気になる味わいですが、肉厚で食べごたえバツグンの山賊焼です。醤油、酒、ニンニク、ショウガで味付けしているそうで、味もしっかり、旨みもバッチリ。何より肉の柔らかさにメロメロ。舌の上でとろけそう…というより、強烈な肉の旨みをたっぷり残しつつ、とろけながら舌に吸い込まれていくようです。見た目はワイルドですが、やさしく上品な味わいで、山賊というより、さしずめ山の女神とでも言ったほうがいいんじゃないかと思ってしまいました。
ふんわり食感の「ニンニク」とカリッとした歯ざわりの「しょうが」

「ニンニクからあげ」と「しょうがからあげ」は味付けが異なるだけかと思いきや、食感がまるで違います。「ニンニクのほうは数種類の粉をブレンドしています」と店主の市川さんが話すとおり、衣がややふんわり食感です。一方の「しょうが」は片栗粉のみで、カリッとした歯ざわりです。

また、「ニンニク」は味付けに白ワインを使っているそうで、肉の食感がとても柔らかく仕上がっているのもポイント。白ワインに含まれる糖分は保水効果もあるので、しっとりとした食感が出るんです。ちなみに「しょうが」はニンニク不使用で、ショウガの香りがじわーんと鼻に抜けていくようなさわやかさがあります。

甘辛手羽は、手羽元の肉を開いて揚げたものに、甘辛いタレをからめたもの。このタレが抜群の美味しさ! 濃厚で食欲をそそる味わいです。タレをからめているのに衣のカリッとした食感もしっかり感じられて、これがまた後を引くこと…。市川さんによると子どもに人気のからあげだそうです。ご飯が欲しくなる味ですが、おやつでもいけそうです。

ちなみに、『からあげ家いっちゃん』は、からあげ以外にもサラダなどのお惣菜も充実しています。からあげを心ゆくまで味わうときは、やはりさっぱりとした野菜も欲しくなるもの。「野菜の揚げ浸し」「人参とタコのマリネ」「チョレギサラダ」「もやしとワカメのゴマ油酢醤油」など、魅力的なものがたくさんあるので、からあげのお供にこちらもどうぞ。
●SHOP INFO

店名:からあげ家いっちゃん
住:東京都世田谷区若林4-3-9 101
TEL:03-6805-2820
営:11:00~20:00
休:不定休
●著者プロフィール
松本壮平
ライター・編集者。一般社団法人日本唐揚協会認定カラアゲニスト。生まれも育ちも「からあげの聖地」である大分県中津市。美味しいからあげを求めて東奔西走する「から活=からあげ探索活動」に明け暮れている。