古き良き商店街の雰囲気と、ハイセンスなイメージが程よく混ざり合う東京都港区・麻布十番。昨年12月に「焼肉×割烹スタイル」の新しいお店『焼肉割烹 双』がオープンしました。
落ち着きある空間で最高の肉体験

店に入ると、白木のカウンター席に案内されます。その趣は、まるで高級なお寿司を食べに来たような空間。焼肉店特有の煙はなく、かといって老舗割烹料理店のような恐縮してしまう雰囲気でもない。カウンター席ならではのカジュアルさと高級感がちょうどいいバランスになっています。
ちなみにお店にはメニューは置いてありません。全20皿のおまかせコースのみ。といっても、その日の肉の仕入れ状況や肉の状態、合わせる旬の食材などにより20品が構成されます。

「全20皿のおまかせコースは刺し身、焼き、あぶりによるメニューを主軸にしています。その間には箸休めを意識して、日本や韓国の焼肉店で人気の高い、サイドメニューを盛り込んでいるんですよ」と話すのは料理長の貞清慎一さん。一品一品、丁寧な仕事を披露しつつ、料理の説明をしてくれます。その日仕入れた最高の素材に、最良の調理を施すというのが店のコンセプト。
アンティークの器に盛られた多彩なメニュー。さまざまなアイデアと工夫が

席につき、落ち着いたところで出された最初の品は「和牛琥珀(こはく)筋スープ」。白磁のコップで出された品のあるスープは、牛すじに鰹出汁を合わせたもの。お腹の中をじんわりと温めてくれます。
2品目は蓋つきの丸い器。そっと開けてみると、二口ぐらいのご飯にヒレ肉とフォアグラを乗せた「ヒレとフォアグラの小丼」でした。甘いタレがフォアグラとヒレ肉をつなぐ、贅沢な組み合わせです。
3品目は、「和牛ハラミユッケ」、4品目「ちぢみほうれん草サラダ」と続きます。小ポーションで提供されるので、これなら飽きることなく最後まで美味しくいただけそうです。スープから始まり、小丼、和牛ハラミユッケ、サラダと何品か食べすすめていくうちにふと気になることが。それは料理を引き立てる華やかな器たち。
素材の良さを実感! 藻塩で味わう「黒毛和牛タンの炭火焼き」

5品目に出てきた「黒毛和牛タンの炭火焼き」。さっき木箱に入っていたタンを炭火で炙ったもので、藻塩が添えられています。少しつけて食べてみると、炭火焼きならではのスモーキーな香り、そして肉の旨みと甘味が口の中いっぱいに広がり、レモンの清涼感も感じられます。

出てくる料理は、普段焼肉店では見ないような個性的なもの、そしてお馴染みのメニューでも、店独自のアレンジが効いた、ここでしか味わえない独創性の高いものまで色々。たとえば、韓国料理で有名な熟成カニの料理「カンジャンケジャン」では、料理と一緒にビニール手袋が出され、自らカニの身を殻から取り出し、その身をウニとノリが乗ったごはんの上に乗せていただきます。
「和牛トロたく巻き」は、サーロイン肉を細かくしたものを、タクワンと共にご飯に乗せ、海苔で包んで味わいます。中でもさすがプロの技! と思ったのが「和牛サーロイン出汁タレ焼き」。サーロイン肉の片面を炙ったのち秘伝のタレを塗り、その肉を鰹出汁ベースの柚子汁スープに。ミョウガやブロッコリースプラウトで飾っています。柚子の酸味に鰹の旨み、そしてサーロインから出る旨みが絶妙なバランス。これぞまさに焼肉と割烹の融合、レベルの高さを感じます。
ワサビと肉の甘さが完璧な調和の「和牛ヒレ炭火焼き」、食感も楽しい「和牛サーロイン自然薯とろろ」

一番シンプル、だけど肉本来の美味しさを堪能できたのは、20品中、11品目に出てきた「和牛ヒレ炭火焼き」。シャトーブリアンを塩で焼き、最後にコショウをぱらり。1つ目はそのまま、2つ目はワサビを少し乗せて。ワサビのツンとくる味と香りはシャトーブリアンの肉汁をスッキリかつ華やかに仕上げてくれます。

続いて出てきたのは、「和牛サーロイン自然薯とろろ」。すりおろした自然薯の上に炭火で焼いた和牛サーロインが乗った美しい一品です。サーロインの中には長芋が包まれています。自然薯のおろしたものと特製ダレで滑らかな味わいですが、中に包まれている長芋がシャキシャキの食感。とろとろなのに、噛むとシャキシャキ。うっとりするような美味しさと、ワクワクする仕掛けが、遊び心を感じさせます。
肉の宴は終盤へ。ラストを彩るご飯もの、そしてデザート

会席料理では、先付けから始まり、前菜、椀盛、向付、焼き物、煮物、強肴と続き、最後にご飯とお碗、香の物、甘味となるのが一般的ですが、『焼肉割烹 双』でも、同じような流れになっているようです。会席で言うなら「強肴(しいざかな)的なポジションに当たるのが「和牛ヒレ炭火焼き」、「和牛サーロイン自然薯とろろ」、そして「和牛ハラミタレ焼き」でしょうか。
「和牛ヒレ炭火焼き」、「和牛サーロイン自然薯とろろ」と出た後に、「京野菜蕪のホイル焼き」と「双オリジナルブレンド米」とお新香でちょっと箸休め、そして「和牛ハラミタレ焼き」でまたしっかりと肉の旨さを堪能し「ソルロンタン」に。コース料理が終盤に近づいていることがわかります。
食事の最後は冷麺。デザート2品と食後のドリンクで完璧なエンディングに

この日、食事として最後に出てきたのは「一口冷麺」。麺はプリプリの盛岡冷麺、スープは鰹出汁のすっきりとした味わい。浮かんでいる氷は出汁を凍らせたものです。料理を存分に堪能した後は、いよいよデザート!
最初のデザートは「ヨーグルトムース柚子茶ソース」柚子ジャムと、ドライイチゴのパウダーがかけられています。ゆず、ヨーグルト、そしていちごの異なる酸味がとても軽やかで、春らしさも感じられます。そしてもう一つ出てきたのは「コーン茶のアイス」。

この日、出された料理は下記の通り。
(1)和牛琥珀筋スープ
(2)ヒレとフォアグラの小丼
(3)和牛ハツ刺し
(4)和牛ハラミユッケ
(5)黒毛和牛タンの炭火焼き
(6)ちぢみほうれん草サラダ
(7)和牛サーロイン出汁タレ焼き
(8)カンジャンケジャン
(9)いくらの茶碗蒸し
(10)和牛トロたく巻き
(11)和牛ヒレ炭火焼き
(12)和牛サーロイン自然薯とろろ
(13)京野菜蕪のホイル焼き
(14)双オリジナルブレンド米
(15)和牛ハラミタレ焼き
(16)ソルロンタン
(17)一口冷麺
(18)ヨーグルトムース柚子茶ソース
(19)コーン茶のアイス
(20)コーヒー、紅茶、ハーブティ
全20品と言っていたけれど、最後にサプライズ、(21)がありました。それは行ってからのお楽しみ。肉の部位や味付け、料理を出す順番の緩急、程よく肉料理の間に入っているサイドメニューなど、構成がとにかく見事! 上質の肉だから美味しいのは当然として、料理人のアイデアや斬新かつ思わず見入ってしまう調理方法、華やかな盛り付け、細やかなサービスなど、焼肉の新たな魅力を感じさせる、とても魅力の高いお店でした。
焼肉のダイナミックさと割烹の穏やかさ、そして和食と韓国料理、それぞれのいいところを兼ね備えた店『焼肉割烹 双』。記念日や、素敵な人を連れて美味しいものを食べたいときなど、一緒に行く相手を喜ばせたい時にセレクトしてはいかがでしょうか?
(取材・文◎いしざわりかこ)
●SHOP INFO

店名:焼肉割烹 双
住:港区麻布十番2-9-5 遠上ビル 1F
TEL:03-6453-8125
営:通常時 第一部17:30~20:00、第二部 20:30~23:00(前日までの要予約)※まん防期間中は第一部のみ
休:月曜
料金:19800円(税込、別途サービス料10%)