今日9月1日は防災の日。TBSラジオでは今日一日、色々な番組で、命や暮らしを守るための防災企画をお送りしていきます。
そこで、今日の東京新聞紙面連動企画は、能登半島地震の被災地「減災」バスツアーについて取り上げた記事に注目しました。
実際の困った、こうすればよかった、を教えてもらうツアー
これは、金沢市の「冨士交通」というバス事業者が、能登半島の被災地を訪ねて、命を守るための備えを考えてもらおうというバスツアーなのですが、発案者の、冨士交通大阪営業所・所長の藤原健一さんにお話を伺いました。
冨士交通大阪営業所長 藤原健一さん
「私、阪神淡路大震災で実際に被災して、で、教育旅行という仕事をやらせてもらってて、震災学習だったんです。見に行くだけ。で、色んな方と話してたら、やっぱりこうした方が良かったよ、って言葉がたくさん出てきました。その困った、こうした方がいいですよっていうことを、一つ一つピックアップしていって、それを次に繋げていく。それが、これから先に起こりうる災害のときに、いかに命を助ける、災害を少なくするか、それが減災なんですよ。だから減災って企画でさせてもらっております。
やっぱり最初のうちは、来てほしくない、しゃべりたくない、思い出すことがイヤで。だけど、それでも、こうした方がよかったなという気持ちを伝えて、次の災害のときに備えようという、趣旨がご理解いただけたってことが一番大きな要素だと思います。そうですね、遊びじゃなく、みなさんが先生になって下さい、と。
少ない人数でも赤字でも覚悟で、どんどん出していこうと思ってるんで、次の震災が、起きてほしくないけど起きた時に、思い出してもらって、一人でも多くの方の命が助かればなという気持ちで、そんな形で動かしていきたいなと思っております。」
藤原さん自身も被災した経験があったから、考えついたツアーなんですね。
能登半島地震から1年半を迎えるタイミングで始まった日帰りのバスツアー。
朝9時半に金沢駅からバスに乗って、羽咋市の気多大社、妙成寺、能登金剛の中央にある巌門の観光船のお店、海岸が4メートルも隆起したという鹿磯漁港、輪島市の総持寺祖院、輪島の朝市通りや穴水駅周辺を巡るコース。(東京や大阪から、始発や終電で来られる範囲で設定されています。)
<羽咋市の気多大社>



それぞれの場所で、被災された地元の方がガイドとなり、当日の様子や被害状況、その後の復興の進み具合、そして、減災のヒントになるお話などをしてくれます。
ガイドを引き受けた地元のみなさんの声
始めは断られることも多かったというガイド。なぜ引き受けたのか。今の率直な気持ちなど、今回のガイドをされたみなさんに伺いました。
「(巌門・観光船のお店の方)現状を知ってもらいたいっていうのもありますんで、去年から減災ツアー、立ち寄りしてもらってますけど、だいじょぶよ!ってことを分かってくれたらなと思いますけど。」

「(羽咋市妙成寺・執事の方)地元の人にしか話す機会なかったんで、やっぱり外から来られる方が話聞くと、ビックリされますし、テレビの映像とかでしか見てないんで、さっきの話一つでも、みなさん「おお~」という感じで。まあそれがでも現状だということで、知っていただきたいと思います。」

「(妙成寺すぐ近くの茶屋の方)お客さんが減ってしまって、だからこうやってお客さんがツアーで来ていただけるとありがたいと思います。自分自身は28日間水無し生活をしていたので、お風呂の水を入れておくのは大事だなと思いましたよ。」

「(巌門・観光船のお店の方)県外にいる娘に聞いたときに、もうほとんど能登の話は出てないということで、このまま置いて行かれるのもアレですし、一年半経った状況でまだ、能登に来ていいのかなって思われてるお客さんもたくさんいらっしゃるんです。そういう状況を見てて、やっぱり私たちが、もう能登に来ていいですよ、って直接お話しできたらホントに嬉しく思います。今は前を向いて歩いてるよっていうことをお話したい方たくさんいらっしゃると思いますので、ぜひまた能登にいらっしゃってください。」

「(輪島市大本山總持寺祖院・ご住職)今の現状ってものを伝えていかなきゃいけない。そうしたことによって継続的な関心、みなさん自身の防災とかそういったことにも繋がっていくので、それはやっぱり、ただ見るだけじゃなくて、誰かが言葉でもって伝えないといけないということもありますから。だからやっぱりこれを、我々とすれば続けていくということですよね。






みなさん、やはり知ってほしい、だからこそ来てほしいという気持ちなんです。このまま置いて行かれるのはちょっとというお話は、胸にズシリときました。
また、直接話して伝えることが継続的な関心にも、来た人の減災にもつながる。それが復興の一歩になるという、総持寺祖院のご住職のお話も、その通りだなと思いました。
来て、見て、聞いて すごく良かった!
すべて回って金沢駅に戻るバスの中で参加された方々に感想を聞きました。
「期待してた通りに見たいところは見れたのかな。テレビでもラジオでもあんまり言わなくなったでしょ、それがすっごく心配だったんですよ。だから、今、どんな状態なのかなっていうのを見てみたいなって。あとは勉強したい、地震に遭ったときにはどういうことしたらいいっていう。だからこの企画その通り。
「ボランティアに来たかったんだけれども、年で体力的に無理なので、じゃせめて見るだけでも見ておこうと。パンフレットだけでは、ハッキリ言って不安だったの、よく分かんなくて。でも、良かったすごく。だからパンフレットをもう少し詳しく書くと、もっと希望者が増えるんじゃないかね、って。なんかたくさんの人に来てほしい。現場を見て話を聞くことで、それをまた広めるっていうの?それは出来るかなっていう。」
他にも、ガイドの方に熱心に質問をしてノートを取る方や、立ち寄る場所ごとにお土産に色々なものを買っていく方もいらっしゃいました。
私も、みなさんとご一緒にツアーに参加しましたが、更地が多く復興に向けて動いているように感じた一方で、まだまだブルーシートが目立つ場所も、倒れたままの建造物もありました。実際に見て、聞いてみると、やはり自分だったらどうすればいいのか、自分の備えは足りているかなど、考える機会になりました。
しかし、このツアーの日、輪島はお祭りで、2年ぶりなので嬉しい!と盛り上がる様子も目にして、前向いて歩いてるよ、というガイドさんの話を実感した一日になりました。
ただ、実はこの日のツアーの参加者は私を含めて13名。正直多くはありません。赤字覚悟、という藤原さんの話は正直本当のところ。
(TBSラジオ『森本毅郎スタンバイ』より抜粋)