南果歩さん(Part 1)
1964年、兵庫県尼崎市出身。短大在学中の1984年に映画『伽耶子のために』のヒロイン役でデビュー。

NHK連続テレビ小説『梅ちゃん先生』、大河ドラマ麒麟がくる』など、テレビ・映画・舞台で幅広く活動中。9月19日より全国公開の映画『ルール・オブ・リビング~私の生き方再起動』では主演をつとめています。

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JK:相変わらず明るいですね!

南:先生もじゃないですか! 初めて先生にお会いしたのが万博オープンの日の番組で、先生がスタジオに入ってきたらスタジオがパッと明るくなって! やっぱり万博の申し子だなと思いましたよ! 2度経験されている方はいらっしゃらないじゃないですか!

出水:去年デビュー40周年ということで、びっくりでした。

南:超びっくりですよ! それなのにいつも緊張してますけどね。舞台の前とか、常にドキドキです。

JK:でも常にフレッシュですよ。長年の経験というより、その時その時がやっぱりフレッシュですよ。

南:やっぱり慣れないんですよね。その時々で役と「はじめまして」なんですよね。だから結局ずっと初めての積み重ね。確かにいつも緊張感があるし、舞台初日の前とかも袖で出番待ってるんですけど、「どうしてこの仕事引き受けちゃったんだろう」って本当に後悔するんですよ! 「私どうかしてた、できると思ってたんだ」って。

JK:(笑)でもやればフッ切れる?

南:迷いは一瞬で、舞台上に出るとスイッチが入るんですけども・・・それまではものすごく初心者です。

JK:みんなそうですよ。だけど初めてのものに挑戦したいでしょ? 繰り返しではなく。

南:そうなんですよね。同じ場所にいるっていうのは自分にとっても良くないなって思うので、やっぱり何か面白いお話というか、新鮮味のあるお話をいただくと「やってみよう!」っていう気にね。

JK:ラジオってのはどうですか?

南:ラジオですか? 一度レギュラーを持ったことあるんですけど、どうも私の声を聞くとリスナーの人が眠くなるって(^^;)「安眠ラジオ」と呼ばれてました。

出水:癒しの何かが出てるんでしょうね(笑) 40年を振り返ると、これまで200本以上の作品に出られてます。そもそもの起点は1984年に出演した『伽耶子のために』でヒロイン役にいきなり抜擢。

南:一般公募のオーディションだったんですけども、大学進学のために兵庫県から東京に出てきて、演劇科で演劇を志していたんですけども、オーディション記事を見つけた時に、雷に打たれたように「私はこれをやるために生まれてきた!」って。

JK:ピンとくるってありますよね。見えない糸が。自然なんですよね。

南:監督がすごくいいことを伝えてくださったんです。

「俺は果歩を選んだ責任がある。しかし果歩は選ばれた責任があるんだ」って。対等な責任を感じながら撮影してて。本当にズブの素人ですよ! 右手と右足が同時に出るような、ぎこちない私が現場に入るのはプレッシャーどころの話じゃなくて、毎日断崖絶壁に立つような緊張感だったんです。「この作品は何があってもやり抜かなきゃ」っていう気持ちではいたんですけども、「これが終わったら絶対やめよう」とも思ってました。苦しすぎて(^^;)

JK:でもそれを越えるとやみつきですか?

南:終わって出来上がったものを見てみると、自分への宿題だらけなんですよ! 「宿題を返さないでこのまま終われない」って気持ちになったんです。

出水:海外作品にもたくさん出ていますね。2015年にはアメリカ映画『MASTERLESS』、2021年にはApple TVのドラマ『パチンコ』。これもオーディションでメインキャストに選ばれていますが、やはり撮り方とか全く違いますか?

南:『パチンコ』に関してはちょっと規模が大きかったので、スタジオが丸ごとパチンコのセットで埋め尽くされていて、いつでもどこでも、どのシーンも撮影できるという状態だったんですよね。立て込みして、バラして、また立て込みっていうんじゃなくて。本当にそれは素晴らしい環境。TVシリーズだったので監督がお2人いたんですけども、監督がそれぞれのセットで同時に撮ってたり。

JK:贅沢ですね、やりたい放題やってるわけ?

南:美術費が一番削られる部分なので、そこが潤沢にあるっていうのが。

出水:役者さんに求めるものとかは?

南:現場に入ってしまえば共通言語を持てるんですよね。英語を喋る方でも、目指してるゴールが同じなので、違和感もなく。それぞれ演出の仕方が違うっていうのもすごく楽しいし、1人はものすごくストレートで情熱的で、もう1人の監督はもの静かなタイプ。

JK:そこにもう1人監督が必要ね。2人をうまく合わせるために。

南:それがプロデューサーですね。プロジェクトとしてはすごく面白いものでした。すごく勉強になったし。単身バンクーバーに行ってまして、暮らしてた感じです。その時まだコロナ禍だったんで、2週間隔離があったんですよ。すごい辛かったですけどね(笑)だからFaceTimeしたり、オンラインでいろんな人と喋ったり。

2つ持っていったトランクの1つは全て食材でした。乾麺、味噌、醤油(^^)

人生のルールは「自分を放し飼いにする」南果歩さん


出水:南さん主演の異文化交流ハートフルコメディ映画『ルール・オブ・リビング』が9月19日より全国公開されます。ポスターには南さんのすっぴん風の驚いた表情が!

南:これは本当に寝癖がついてすっぴんです(笑)アメリカ人男性と同居生活が始まって、洗面所で出くわして驚いてる1コマなんですけれども・・・私が演じている美久子さんは親の介護が終わって、1人娘が家を出て、一軒家に1人暮らし、というところにアメリカ人男性とひょんなところから同居を始める中で、今まで自分の中で知らず知らずのうちに苦しめていたルールを、少しずつ異文化交流によって解き放っていく女性の物語。彼女は英語が喋れない、アメリカ人男性も日本語が喋れないというところで言語の違いもあって、ものすごく笑えるシーンがたくさんあります。

出水:グレッグ・デールさんという同居人役をつとめた男性が監督も?

南:そうです。彼はもともと舞台演出家で、以前1度お仕事をしたことがあって、今回はそのご縁でオファーを受けました。私も中年女性の真ん中にいるんですけれども、日本の女性はいろんな役割に縛られて、母であるとか、親に対しての娘であるとか、妻であるとか・・・自分自身の意見を発言する機会をどんどん自分でなくしていっていると思うんですよね。人生の終盤に向けて、何かが違うけれども何が違うのかが分からない、という違和感を感じながら日々のルーティンに流されている女性が、全く違う言語、考え方、文化を持った人と知り合うことによって本当の自分を取り戻していくという物語なんです。

JK:ご自身はどうなんですか? その役とぴったりですか?

南:年齢的にはぴったりなんですけど、経験的にはシングルだし、1人で生きている女性の1人なんですけれども、一個人として自分がこの役に出会ったというのは大きいです。役は役として別の生き物なんですけど、必ず自分というフィルターは通るんですよね。役として生きてはいるんですけれども、どこかで南果歩もいる。

JK:演じることで、いくらでもどんな役もできるでしょ。

でもどうやったって見た目はご自身ですからね。そういう意味で女優さんっていいですよね。

南:変身願望は満たされますよ(笑)少年の役もやったことあります、舞台で。どんなセリフ言ったか覚えてないんですけど、去年は舞台で6歳の少女をやりました。

JK:えっ、そんなことできるんですか! かわいいからいつでも6歳になれるのね(^^)

出水:今回の映画の中で一番印象に残っているシーンを挙げるとしたら?

南:いろんな思いを外に吐露できないまま生きてきた美久子が、アメリカ人男性と旅に出た先で、自分の本音を話すんですけど、それが彼には通じていない。でも話せる相手がいる豊かさ。その場面はすごく心に残ってます。

出水:人生のルールは自分で決めていい、というのがテーマですが、南さんご自身のルールはありますか?

南:自分を放し飼いにすることです(笑)

JK:放し飼い?? どこ行っちゃうか分かんないのね!

南:小さなことでいいんです。私は朝起きて「これ食べたいな」と思うものを食べるようにしてます。フルーツとか、パンとか、ご飯とか。メリハリを利かすというのをやってますね。

JK:人生のルールって、決めるとその逆になる。

決めすぎるとできたような気になるじゃないですか。だから決めてもいつもフレキシブル。

南:やっぱり先生も放し飼いですね(笑)

JK:明日を決めちゃうのって面白くないと思う。見えないからみんな平等なの。朝起きてから決めるわ、でもいいと思う。よく旅行で、朝からこうしてこうして・・・って言っていくと、楽しい旅行でも仕事みたいじゃないですか。それが嫌なんですよ、行ってから決めようって。行く前に決めちゃったら、行かなくてもいいような気がする。アバウト決めてもいいんだけど、捨てればいいんだよ。

南:同じです、先輩! 『ルール・オブ・リビング』も、いつ・どこからでも人生を一歩踏み出すことができるというテーマですので、日々自分を見失いそうになっている方にはぜひこの映画を見て、笑いながら自分の人生を振り返っていただければと思います。

TBSラジオ『コシノジュンコ MASACA』より抜粋)

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