まだまだ残暑が続いていますが、「読書の秋」という事で今日はユニークな「書店」の話題。

誰もが本屋に!?「シェア型書店」とは

個人や企業が書店の中にある本棚の一部を借りて「棚主」として自分の好きな本を売る「シェア型書店」というのが広まっているんです!棚を借りるには使用料を払う必要がありますが、本が売れれば棚主の収入になります。

書店やプランによって違いはありますが、5000円程度から棚主としてスタートできるプランも。

新刊書以外の本は棚主が価格を決定して販売、手数料を書店側に支払うという仕組みです。

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本屋の街にできたシェア型書店「ほんまる神保町」

シェア型書店が広まっている背景について、東京・千代田区にあるシェア型書店「ほんまる神保町」の店長・下川晴さんのお話です。

シェア型書店「ほんまる神保町」店長・下川晴さん


一番はやっぱりこの書店減少を食い止めるというか、そこの危機感に対して新しい取り組みをしている期待感とか、そこに可能性を感じて、こういう形を各地で取り入れてやっているというのはあるとは思います。あとはやっぱりSNSで今誰でも表現をできるじゃないですか。この棚もその自己表現の場として機能しているなって思うんですよね。今はいろいろ小説とかそういうものも書きたい人多いし、本とか作りたい人も多いし、そういう表現の意欲みたいなものを汲み取るような形が一個あるのかなと思います。やっぱりコミュニティを作るっていうことだとは思うんですよね。ここに行けば自分の思いとか好きなものを気兼ねなく話ができるとか、あとはSNSとかからちょっと離れて、人と人で顔を合わせてコミュニケーションを取れる場所みたいな、そういう文化的な拠点みたいなのが今一番求められてるんじゃないかなと思います。

本棚が自己表現の場になっているんですね~!一つの棚はだいたい、幅50センチ、高さ30センチ、奥行き30センチくらいのスペース。そこに棚主厳選の本が並んでいます。

広がるシェア型書店
「ほんまる神保町」店長の下川さん(右)

今回実際に書店に伺ったのですが、棚のデコレーションが個性的でほんとに見ていて面白い!棚の範囲内であれば比較的自由に飾り付けができます。ポップや代本版(棚のラベルのようなもの)などは、基本的に棚主が制作しています!デザインに自身が無い方も、書店のサポートがあるので安心ですよ。

例えば銭湯に関する本ばかりを集めた棚の代本版は...「お湯丸書房」!!なんとも可愛らしい。こういったものを決める楽しみもありますね。

広がるシェア型書店
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棚主手作りのポップ

「ほんまる神保町」は、直木賞作家の今村翔吾さんが書店減少の流れを食い止めようと始めた取り組みで、システムの面白さはもちろん、居心地の良いオシャレな雰囲気も思わず立ち寄りたくなります。今後は全国の書店の一角にシェア型書店ブースを設置していきたいとのことでした。

「ほんまる神保町」には現在、全国の個人や企業、約200組が棚主になっています。棚は全部で364棚あるらしいので、まだ空きがあるようです。気になる方はチェックされてみてはどうでしょうか?

棚主になったら・・・

では棚主の皆さんはどんな楽しみを味わっているのか?企業と個人、それぞれに聞いてみました。

(企業の棚主)私たち紙関係の仕事なので、紙にまつわる本もあるんですけど、だんだん自分たちが好きな本とか読んでみたい本とか、自分たちの趣味になってきてるかなっていう感じはします。それぞれ(会社の)メンバーでこういった趣味があるんだなとか、意外な発見がありますね。

(個人の棚主)やっぱり自分自身の可能性が広がった。大人のための絵本の会(イベント)というのをできるようになったっていうのはこの棚があったからで、月に1回地域のコミュニティセンターで開催し続けていったら、ここ(シェア型書店)でもやらせていただけるようになって、さらには職場(企業)のイベントでやらせていただくって形で自分自身が広がったっていう。棚ありきです。

広がるシェア型書店

棚をきっかけに活動の幅が広がっているようですね!書店の場所を間借りして読み聞かせイベントやサイン会を行ったり、読者との交流の場を展開している棚主さんもいます。

棚主の方に話を聞いていると、本を売るというより、人とのつながりを楽しんでいる印象。

シェア型書店、どうでしたか?

そんな熱い棚主の気持ち、シェア型書店を訪れた人はどう感じたんでしょう?聞いてみました。

見たことも無い本がたくさんあってすごい楽しかった。結構長い時間いました。

シェア型書店は面白いと思いますね、新刊だけの書店と違って棚ごとに個性もありますし棚ごとにオファー(ポップ)があるのは面白いと思います。

おんなじジャンルじゃない本も一つの棚にたくさんあるでしょ。取り合わせっていうか、それが面白かったりするので。

シェア型は普通の書店で見過ごしてるような違うジャンルの切り口の本が並んでるから、すごく新しい発見があると思いますよ。ひょっとしたらビジネスチャンスかもしれないと思って。(棚主)ありだなあと思いますね。

最後の方は、さっそく自分も棚主になろうと思ったようですね!やはり自分でセレクトした本だけを、自分だけのコンセプトで表現できる、というのは魅力的に感じられたようです。訪れた人からは「思わず全棚見て回りたくなる」「友達からすすめられた気分」という声が聞かれました。

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こんな本も。「御神籤ブック」中にどんな本が入っているかわからない、一冊との出会いが面白い。

「ほんまる神保町」の下川さんおすすめの楽しみ方は、「推し棚」を見つけること。この棚主が選んでいる本を月に一つでも読んでみるなど、普段本を読まない人も入りやすいですし、普段読まないジャンルとの出会いがあるかもしれませんね!

人間味あふれる「シェア型書店」は、まさに今求められている新しい書店のカタチなのかもしれません。
(TBSラジオ『森本毅郎スタンバイ』取材・レポート:糸山仁恵)

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