毎週月曜日は東京新聞との紙面連動企画。今日は連休の谷間の月曜日で、いまいち気分が上がらない人も多いのではなかな?と思いまして、がんばり続けるある和菓子の記事に注目しました!
その和菓子の名は「ワイロ最中」。
田沼意次のイメージを逆手に!!
考案したのは静岡県牧之原市の相良町商工会青年部OBでつくる「遊人塾」。塾頭で、代表の中山香さんに「ワイロ最中」誕生の経緯を聞きました。
静岡県牧之原市「遊人塾」塾頭 中山香さん
牧之原市の旧の相良町、で、相楽藩の投手が田沼意次です。田沼意次の城下町なの。
それで、田沼さんっていうのが、ずーっと自分たちの子供のころから、その前から、ワイロ政治家っていうことで、なかなかこの町に住んでても、ウチのお殿さん田沼さんだよって言いづらい、そんなとこがあって。
じゃあ、どぎついネーミングの「ワイロ最中」っていう名前の商品を出して、最中を買ってくれたら、実は田沼さんはこういう先を見つめた鋭い優秀な政治家でしたっていうのが分かるものを出そうっていうことで「ワイロ最中」です。
箱を開けると饅頭の写真が載ってます。その横に「付け届けは饅頭に限るのう」っていうセリフが載ってて、この写真を外してもらうと、小判型の最中が出てくる。要するに時代劇の一シーンです。
牧之原はお茶の産地なんで「したごゝろ」っていう名前のティーバッグをつけて、その箱の内側に田沼さんがやった業績がズラっと載ってるっていうそんな商品です。
悪いイメージを逆手にとったんです!

確かに田沼意次と言えば、教科書などにも「ワイロ政治家」とあり、そういうイメージです。しかし、それだけではない、田沼さんの政治家としての業績を知ってもらおう!と、あえて「ワイロ最中」としたわけです。インパクトは大きいですよね!

ウチのお殿さまを遊び半分に使うとはけしからん!!
しかし「ワイロ最中」の道のりは平坦ではありませんでした。再び中山さんのお話。
静岡県牧之原市「遊人会」塾頭 中山香さん
販売して2年はまったく。地元の郷土研究家に叱られ叱られ。正統派の人たちからすると、ちょっと斜に構えたウチのやり方は気に入らないみたい。ウチのお殿さまを遊び半分に使うんじゃないっていう風な。商品を買わずにイメージで文句言ってんの。カタイんだよ、みんな、ね、洒落の分からない人、大キライ(笑)。
それで、共同通信社の取材を受けてヤフーのトップニュースに載ったの。そしたらそっから二年、三年はずーっと、注文もらっても、三月、四月、半年経たないと手元に届きませんっていうくらいの。
で、だんだんだんだん、リピーターも減り、細々細々やってきて、ダメ押しが、牧之原サービスエリアって、第一東名がすぐ横を走ってるんですけど、第二東名が出来た時に交通量をドンと奪われて、サービスエリアにも置かせてもらってたんですけど、売上げが元々の3割まで落ちて、もう3割まで行ったら経費が出せませんよっていう状態でした。
地元の郷土研究家からも叱られちゃったんです・・・かなり、けしからん!と攻撃されたそうです。でも、長いこと覆せないイメージを変えるには、正統派では響かない!と信念を貫き、作り続けました。
しかし、さらなるピンチが!!作ってくれていた相良の和菓子屋のご主人が突然亡くなってしまい、作り手がいなくなったのです。
こんな【おいしい】商品はない!!ぜひウチにやらせてください!
牧之原の隣の隣町、菊川市にあります、明治45年創業、100年以上続く老舗「献上菓舗 大竹屋」社長の大竹秀一郎さんにお話を聞きました。
菊川市 「献上菓舗 大竹屋」社長 大竹秀一郎さん
うち、出入りのあんこ屋さんが相良町出身だったんですよ。それでもう最初っからこの商品は絶対面白いなって思ってたんですよ。だってどんなに頑張っても作れないでしょ。歴史が無ければ絶対作れないやつだから。それで私も「やらして下さい」って言って、それでやるようになったんですよ。
(田沼さんのところ?)全然関係ないですね(笑)かすってもいないです。だからそこは自分でも葛藤があったんですよ。歴史もなにも関係ないのに作ってもいいのかっていう。でも、それでもいいからやってくれって、それでじゃあ、すいませんがやらせてもらいますっていうことで。
そうですね、こんな【おいしい】商品はないっていうのは最初から思ってましたから。どこでも作れないお菓子だから。
出入りのあんこ屋さんから「ワイロ最中」のことを聞いて、発売当初から面白いなと思っていたんです。そして、作り手がいなくなったピンチに手を挙げました。考案した中山さんたちは、後継者のいるお店に作ってもらいたかったことと、商品が無くなることは絶対に避けたいと思い、田沼さんのお膝元からは離れてしまうけど、お願いすることに決めました。
王位戦で藤井聡太七冠が食べてくれたら・・・
100年以上愛される老舗のあんこでさらにパワーアップした「ワイロ最中」に、この9月ビックチャンスが巡ってきたのですが・・・。再び大竹社長のお話です。
菊川市 「献上菓舗 大竹屋」社長 大竹秀一郎さん
藤井聡太くんの将棋のあれで牧之原でやるようになってたんですよ。それでうちも、その中のお菓子の部門で出店してもいいですよってなってたものですから、そうするとおやつに聡太くんがもし食べてくれれば、それはもう大ヒットですよ。
期待してたね~、期待してたけど、牧之原が被災しちゃったから、東京でやるようになっちゃったから。その話は全部中止ですって牧之原の方から言って来て、それでダメになっちゃった。台風でね。あんなひどいとは思わなかったもんでね。
9月9、10日に第66期王位戦が牧之原市で開催されることになっており、その勝負メシとして並べてもらえることになっていたのです。藤井聡太七冠が食べたお菓子は大人気になりますから、その期待はかなり大きかった。
しかし、先日の台風の竜巻で大きな被害を受けた牧之原市。王位戦は東京での開催に。中山さんも大竹さんもとても残念がっていましたが、これまでの「ワイロ最中」の道のりを考えれば、なんのこれしき!めげずに頑張ります!ということでした。台風被害からの復興も、「ワイロ最中」も、応援したいですね。
(毅郎さんも泰子さんも、あんこがとても美味しい!と、すっかり「ワイロ最中」をお気に入り。ちなみに同封の牧之原のお茶「したごゝろ」もすごく美味しかったです!)
(TBSラジオ『森本毅郎・スタンバイ!』より抜粋)