今日は、この秋で生産終了となる「50㏄の原付バイク」の話題!11月から排ガス規制が強化されるんですが、車体の小さな原付バイクでは、排ガスの新しい基準をクリアするのは技術的に難しく、開発費用もかけられないということでメーカー各社は、原付バイクの新車の生産終了を決めました。
新車が製造されなくなっても、すでに製造・販売されている原付に乗り続けることはできるんですが、もし今乗っている50㏄の原付が壊れてしまったら...!次に乗り換える選択肢としては、「125㏄以下で最高出力4kW(5.4ps)以下」という新しい原付か、電動のEVバイクか、新しい移動手段か、というわけです。
ただ、125㏄だと50㏄より車体が大きくなるから乗った感じはどうなんだろう?とか、EVバイクって走行距離とかパワーはどうなんだろう?と、いろいろ悩ましいですよね…。
街の個人店は…?
そこで今回は、普段から50㏄の原付をよく使っている人たちに、これからどうするのか聞いてみました。まずは、東京・練馬区で30年以上、原付バイクでピザを配達してきた「ピザフレンドリー」の店長、川口信二さんに伺いました。
ピザフレンドリー店長・川口信二さん
原付の方が身軽よ。全然扱いやすい。今のところね、どうなんだろう、たぶん中古が出回ってたとしても値段が結構高いと思うと、やっぱり125㏄、そっちを買うしかないんじゃないかなと。だって売ってないんだもんね。しょうがないというか。まあ、金額とかプレッシャーかかってくるというか...。たぶん7~8万円くらい高いんじゃないかな、もっと高いかな。10万円くらい高いのかな。まあでも、電気(EV)はあんまり考えてないんだけどな。
戸惑いがあるようですね…。ピザの配達では、50㏄の原付ならではの身軽さや小回りの良さが助かるので、どうしようと困惑気味でした。今乗っている原付を大切に乗りつづけるしかないね、と苦笑。
ちなみに、大手のピザチェーン店やフードデリバリーでは「キャノピー」と呼ばれる屋根付きの3輪車を使っているところもありますが、これは実はバイクとはちがう「ミニカー」という区分なんです!

ミニカー登録されているものであれば今回の排ガス規制とは関係ありませんが、自動車の排ガス規制に従う必要があります。また、キャノピーもEVにどんどん移行しているため、ガソリンのものはほとんど生産がなくなりました。こういうものも活用しながら各店舗試行錯誤しているんですね~。
新聞配達はどうなる?
ピザ店の次は、原付バイクといえば「新聞配達」。こちらはどうなのか?日本新聞販売協会の髙木康夫さんのお話です。
公益社団法人日本新聞販売協会・副会長・髙木康夫さん
電動バイクをどんどん進めようと実は3年前から運動をスタートしたんですよ。新聞販売店って地域に結構根付いてますから、何かあった時にインフラとしていろんな役割があるんです。例えば被災地に新聞を届けたり。電動バイクはUSBがついてますから、そういうところに行ってそこからスマホの充電ができるとか、給電をする車として役に立つとかそんなこともできるんですよね。ただ問題は、全国のガソリンバイクがだいたい11万台、そのうち電動化されているのが550台ぐらいだと思います。
一番の問題はですね、供給する側が間に合わないんですよ。生産が追いつかないっていうのはたぶんパーツなんですね。戦争とかウクライナの問題とかで半導体が来なかったり、そういうパーツ不足もあって、我々としては(EVを)欲しいという人はいるんだけど注文が入っててもまだ届かないという。
EVの導入を進めたいけど、そうできない現状があるようですね...。新聞販売店では、排出ガス削減に取り組もうということで、原付の生産終了が決まる前からEV導入を進めていたそうです。被災地でのインフラにもなるというとで、この業界はEV導入に意欲的なところが多いため、世界情勢の影響もあるが確実に台数を増やしていきたいと話していました。
また、今回は実際にEV導入をしている販売店でバイクの充電の様子を見学させていただきました!EVバイクは2種類。まずは「バッテリー交換型」。

バッテリーは室内の充電器で充電を行うのですが、ひとつ約10㎏!!バイク1台でこれを2つ積む必要があり、女性だとなかなか大変…。ただ、事前にバッテリーを準備しておけば積み替えてすぐに動くことができる、また室内充電でのため豪雪地帯でも使えるといったメリットがあります。

もう一つは「直接充電型」これはなんと家庭用コンセントで充電可能!(ワット数や台数に限りあり)意外にも手軽な運用方法で驚きました。

これらのEVバイクは、フル充電で6~70キロ程度走ることができるので、一度の配達で電欠になることなく走り続けることができるそうです!
「原付の街」の大学では…
ピザ店、新聞配達ときて、次は、町全体で原付バイクが活躍している町はどうなのか。
「原付の街」にある、松山東雲女子大学・短期大学では今年5月、すでに動き始めていました。学生支援課の酒井大河さん・地域連携社会貢献推進室の野上芳伸さんのお話です。
松山東雲女子大学・短期大学 学生支援課の酒井大河さん・地域連携社会貢献推進室の野上芳伸さん
在学生の約3割がバイクで通学をしているような状況になります。原付が圧倒的に多いです。部品の供給もなかなか難しくなってくるみたいなので、今持っているものが故障したらということを考えるとちょっと怖いかなと思います。大学側としてはEV使ってる子たちが増えていけばいいなというのがあって、今回は二輪車協会の方に講習会を開いていただき今までの原付とEVの違いを教えていただいて、走行の練習をしていただいたような形になります。あとはEVの実際の使い方、バッテリーの交換の仕方などEVの特徴を知って貰うような講習会にさせていただきました。
余談ですけど、面白いアンケートの結果が出てきて、EVに変わった子に関しては、近所からプライベートが守られる。自分で帰ってきたら音がするので、「この子帰ってきたね」って、ちっちゃい町なんで、そこの辺があるのかなって。女子大ならではなのかな、なるほどと思ったことはあります。
EVバイクは今までの原付と違って振動などがかなり静かなので、それに慣れることだったり、バッテリーも10~20㎏あって重いので、交換のしかたについて講習会を行ったそうです。
講習会に参加した生徒の中にはさっそくEVバイク購入をした生徒もいるそうで、アンケートの結果、約7割がEVに好意的であるとの結果も!大学では導入を進めていこうと、給電設備をさっそく導入し、構内でも充電ができるように整えています。
排ガス規制は、バイクメーカーにとっても、原付ユーザーにとっても大きな転換点となりそうですね。
(TBSラジオ『森本毅郎スタンバイ』取材・レポート:糸山仁恵)