きょうは5年に1度行われる「国勢調査」について。全国すべての世帯に青っぽい封筒が配られて、性別や年齢、仕事の種類など16項目を答えるものです。

法律で回答は「義務」とされていて、必ず答えることになっています。

回答方法は3通り。①自宅に届いた調査票を郵送するか ②インターネットで入力するか ③調査員に手渡しするか。

届いた?知らない?配る側の苦労も…

では街のみなさんは、すでに答えたのか?聞きました。

彼氏の家では見たんですけど、自分ちでは見てなくて、届いてるかも。

まだ受けてないです。来たらする予定。

届きました。ちょうど留守だったので、ポストに入れておいていただいて、多分、町会の方だと思います。

これ、私ちょっとわからない。(この封筒見たことあります?)これ私、見たことない。日本語、私わからない、全部。(どちらのご出身ですか?)トルコ。

私、調査委員です。自治会の人から誘われました。いや、初めて。(もう回りました?)回りました。もうやっぱり、あまりやりたくありません。担当件数100件とかあって、地図を見ながら、ここの家、ここの家、と確かめて。何回か行って留守だったらポストなんですけど、そうでなければ、なるべく手渡し。若い方は「何それ?見ないやらなきゃいけないの?」ってなるので、説明して「お願いします」って言って渡してきます。えー、もう私やらないって思ってますから、皆そう言ってますんで。

国政調査 制度の曲がり角の画像はこちら >>
こうした封筒が全世帯に届きます

9月20日~30日ごろにかけて、全国の世帯に配布され始めていて、今年の回答の期限は、「10月8日(水)」となっています。外国の方も対象で、「3か月以上、日本に住む予定のある人」、たとえば永住者や留学生、日本に赴任してきたビジネスパーソンなども含まれます。

ただ、この「配る」という作業がとにかく大変…。

調査員と呼ばれるのは公募などで集まった一般住民。一軒一軒、できるだけ「手渡し」で、不在のときだけポスト投函するという、昔からのやり方が続いています。「猛暑の中を回るのは大変だった」と言う声もあり、千葉県では前回、必要だった3万20000人の調査員のうち、およそ15%(5000人ほど)が足りなかったと報道されていて、各地で人手不足が深刻です。

しかも、ネットで回答も可能ですが、まずは届いた書類に記されたIDとパスワードが必要。全部がネットで完結するわけではありません。

オートロック社会で揺らぐ対面調査

だったら普通に郵送でポンッと届けばいいのにと思いますが、なぜ今も「対面」で配る必要があるのか?統計調査に詳しい、埼玉大学・名誉教授の松本 正生さんに聞きました。

埼玉大学・名誉教授 松本 正生さん

例えば「郵送」とか「インターネット」ってういのに変えていくしかないと思うんですけど、そうなると、本当にご本人が答えているのかどうかっていう確認が取れないから、相対して渡すというのは、原則として残ってくるってくると思いますよね。ただ、なかなか対面できないから、ポストに入れていくっていう。
ただ、いま「インターホン」と「オートロック」という、この壁があるので、こういう調査にはもう向かない社会になってきちゃってる。要するに、オートロックとかインターホンって何のためにあるかというと、「人と人とが直接相対しない」っていう前提で成り立っているので、人が来たら断るっていう前提で成り立ってるので。だから対面方式のこういう調査というのは、向かない社会になってしまってる。こういう状況の中で回収率を上げるってことは、不可能に近い。行っても居なかったり、拒否されたり、何だとかって言われたりとかで「もうこんなこと絶対やだ」ってみんな言うので、ますます(調査員を)やってくれる人が少なくなるっていう、こういう感じだと思いますよね。

なぜ対面なのか、その理由はシンプルです。まず、確実にその家に届けるため。さらに調査員が「ここに書いてくださいね」「ネット回答もできますよ」と説明してくれることで、受け取る側も迷わずに済む。そして「この家にちゃんと人が住んでいる」という確認にもなる。だから昔から、手渡しが原則。それがいまだに続いている…ということでした。

ただし、オートロックで調査員が入れないマンションは増えているし、「知らない人に家まで来られるのは不安だ」と感じる人も少なくありません。前回2020年の調査では、全国平均の回答率はおよそ「86%」。数字だけ見れば高そうですが、以前に比べると下がってきていて、都市部ではさらに低い地域もあったようです。

答えるメリットある?実は選挙区割りも決まる国勢調査

じゃあ、「国勢調査なんてしなくても、住民票のデータでいいんじゃない?」とも思って聞いてみると、そうもいかない。たとえば一人暮らしの学生や、転勤で引っ越してきた会社員は住民票を移していないことも多く、住民票は、必ずしも実態を反映していない。だからこそ、国勢調査という「全数調査」が必要になると教えてくれました。

では、このまま回答する人が減り続けたら、私たちの暮らしにはどんな影響が出るのか?再び松本さんに聞きました。

埼玉大学・名誉教授 松本 正生さん

このデータで、いわゆる「選挙区の区割り」っていうのを確定するんですよね。だから「1票の価値」の平等ってどうするかっていうので区割りをどうするか。こっちとこっちで人口格差が大きいので区割りを変えましょうみたいな。こういうことって、必ず5年ごとの国勢調査の結果をもとに、決めてる。こういうことは報道はされますよね。

基本的に「答えなければ、何かの違反になる」と言う話ではないですけど、いろんな政策を作るための基本情報になるわけですから、この精度が落ちると、「政策の劣化」という形で跳ね返ってくる。だから、集めっぱなしでどう使っているかわからない。自分たちの個人情報がどう使われているかわからないっていう疑義を持っている人がそれなりに増えてきているわけだから、それに対しては、やっぱりきちんと発信しないといけない。こういうのに答えて何の得があるの?別に何の謝礼もないし…と言われてしまうと、確かにねと…。

国勢調査のデータは、選挙区の区割りを決めたり、学校や病院をどこに建てるか、道路や上下水道の整備計画をどうするかなど、私たちの暮らしのすごく身近なところで使われています。

つまり、答えない人が増えると、こうした政策やサービスの質が落ちてくる。

やり方がどうなのかということと同時に、「国がもっと発信していくべきだ」とも話していました。

(TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」取材:田中ひとみ)

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