今日は「帰宅困難者」のお話です。先日、新御茶ノ水駅の周辺を歩いていたら、街の掲示板にこんなチラシがーー「キタコンDXの操作を実際に体験できます」と。

何だろう?と思って行ってみると、千代田区が帰宅困難者のための避難訓練を行っていました。

キタコンDXの仕組み GPSで最寄り施設を検索

主催者のお一人、神保町の洋食店「キッチンカロリー」を営む江本 篤哉さんに聞きました。

「キッチンカロリー」店主 江本 篤哉さん

「キタコンDX」っていうのは、帰宅困難者避難のアプリなんですよ。そのアプリを「ここの地点」で押すと、必ずあなたがいる場所のエリアの避難先が出るんです。さっきここで訓練モードで案内してたんです。

でね、この「キタコンDX」がすごいのは、じゃあ銀座に遊びに行った時に大震災あったとするでしょ。銀座でアプリを開くと、銀座の他の避難先が出る。だからGPSで自分の所が携帯で分かるじゃないですか。それで反応して行くわけですよ。

今日は、これは大都会なんで、上から下まで全部チラシ撒いたんだから、商店。「ご主人、ここで揺れて事務所ぐちゃぐちゃになって、どこですか?おうちは?板橋?板橋まで歩いて帰る?でも今ここに滞留しなさいって話があるんですよ。そしたらこのキタコンDX開けると、明治大学に避難しなさいと。明治大学に避難して、ほとぼり冷めるまで備蓄品で過ごして、それで帰れるっていうシステムですよ」と。

「えー、すごいね」と。誰も知らないからね。

帰宅困難者GPS誘導システム 16万人分不足・周知が進まずの画像はこちら >>
<江本さん店先にも貼られていた「帰宅困難者避難訓練」のチラシ>

東京都が開発した避難誘導システム。正式名称は「東京都帰宅困難者対策オペレーションシステム」、通称「キタコンDX」です。「キタコン」は「帰宅困難者」の略、「DX」はデジタルトランスフォーメーションの意味。実際には、LINEの公式アカウントを友達登録して使います。

東日本大震災のとき、自力で歩いて帰る人で道路がごった返しました。その教訓から広がったのが、「むやみに動かず、安全な場所にしばらくとどまりましょう」という考え方です。帰宅困難者を受け入れる「一時滞在施設」が、都内に1300か所以上。大学、ホテル、商業施設などが、食料や水、毛布を備蓄して、最低3日間、受け入れてくれます。

帰宅困難者GPS誘導システム 16万人分不足・周知が進まず
<LINEアプリで検索方法は、「帰宅困難者対策支援」です。こちらをお友達登録しておくと災害時に活用できるそうです(「キタコンDXではヒットしないので注意。
平時は各種アイコンは動作しません)>

ただ、問題が2つありました。「どこに施設があるのか分からない」、「行ったら満員で入れなかった」。そこで開発されたのが「キタコンDX」です。LINEで公式アカウントを登録しておくと、GPSで最寄りの施設を検索できます。この日の訓練では「明治大学リバティタワー・徒歩5分」と表示されました。地図を見ながら歩いて向かい、名前を入力しておけば、受付の混雑も避けられる仕組みです。

高齢者「スマホ使いこなせない」

ではこの日の避難訓練の参加者はどう感じたのでしょうか?

区民で参加しました。例えば千代田区外で、港区とかどっかに出て地震があったりした時に、知らない土地での避難場所が知ることができるとか。そういうのが便利かなと思います。

文京区なんですけど私は。ここの地域の通勤してる、勤務してる立場ですね。一応経験というか、アプリの使い方とか教えてもらったんで、使い方を生かしていきたいなと思います。

千代田区いろんなことやるんですよ。

年寄りがいざと言う時にそれをこうやって見るかどうかって、私はちょっと疑問視ですね。だけども最低限のあれしか、ラインとあれで使うけど、使いこなせてないから、どうかな、わかんないな。うちは息子なんかがいるんで、きっと若い人に聞いちゃったりなんかするんじゃないかなと思います。今日はできなかった。一回家帰って、ちょっともう一回…。

帰宅困難者GPS誘導システム 16万人分不足・周知が進まず
<キタコンDXの説明を受ける参加者>
帰宅困難者GPS誘導システム 16万人分不足・周知が進まず
<今回の千代田区の避難訓練では、参加者を「区民」「帰宅困難者」などに色分けしていました>

スマホがなくても、施設に直接行けば、受付で紙に名前を書けば入館できるそうです。また、家族で一緒にいる場合は、一人のスマホでまとめて登録することも可能。とはいえ、スマホ前提のシステムであることは否めません。

もう一つ気になったのが、外国人対応です。今回の訓練では、通りすがりの外国人旅行者も参加していたのですが、スマホの翻訳機能を使ってもうまく伝わらず、結局、帰ってしまいました。東京都によれば、キタコンDXの多言語化は、近いうちに開発予定とのこと。

東京都の回答「収容16万人分不足、課題は周知」

いろいろ課題がある中で、そもそも一時滞在施設自体が足りていないという課題もあるようです。

キタコンDXを開発した、東京都総務局・総合防災部の小平 房代さんに聞きました。

東京都総務局・総合防災部 小平 房代さん

453万人、東京都の中では帰宅困難者が出るというふうに想定は出しております。ただ、例えば職場とか学校とか行き場がある方っていらっしゃいますよね。そういう方を除いて、たとえば買い物客だとか、観光で訪れている行き場のない帰宅困難者というのが 「66万人」という形で東京都は想定をしております。

ただ、一時在宅施設はまだ足りてない状況なんですね。「50万人ちょっと」は確保できてるんですけれども、まだ66万人からすると足りてない状況はあるので、その施設の確保はご協力いただいて、それは今も続けているところですね。

これ、本年4月から本格稼働しているシステムになるんですよ。結構やっぱりこれからまた周知を、もう少し頑張らないとなっていうふうには思っております。

帰宅困難者453万人のうち、「行き場のない人」が66万人。現在、50万人分の収容は確保できているそうですが、まだ16万人分足りません。

また、通信が途絶えたらどうするのか?東京都によれば通信会社も設備を強化済み。万が一の場合は、駅や商業施設の職員が直接避難誘導する体制も整えているとのことです。

事前登録は、LINEで「帰宅困難者対策支援」と検索して、友達登録するだけ。ただ、小平さんが認めたように「最大の課題は周知」です。便利なシステムも、知られなければ意味がありません。

(TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」取材:田中ひとみ)

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