今日は、災害時に、水や灯油などを運ぶときに使うポリタンクのお話。

災害用にポリタンク、備えてますか?

実は、今年、業界初のポリタンクが発売されたのですが、まずは、街のみなさんが、こうした災害時に使うポリタンクを備えているのかどうか、聞いてみました。

「何も用意していないです。

あ~もう最悪ゴミ袋でもらいに行こうと思ってます。何重かにして、と思ってました。」

「私、用意してないです、何も。あ、水はウォーターサーバーが家にあるから、まあ、入れてもいけるかなと思ってます。無くなったら。」

「用意してないです。水はもうペットボトルで取ってるのを置いてるからそれでちょっと安心してるって感じです。う~ん、置くとこもないっていうのがあるから。」

「タンク持ってますね、でっかいの。水を貯めるようの。灯油は無いですね。お湯も無いです。ただ今、ごはんとかも水だけで作れるじゃないですか、あったかいの。だから別に今や不要かなと。」

「ペットボトルを常に置いてあります。(ポリタンクは?)置いてないかな。

結構、邪魔になるじゃないけど、スペース的にかな、置かないのは。」

「お水用で折り畳みのを3個くらい用意してます、災害用の場所に。(お水用にお湯は入れられませんが)あ、入れられません。あのカセットコンロとボンベを用意しておいて使うという。灯油のポリタンクは無いです。」

かろうじてお水を給水所から運ぶポリタンクは用意している方もいましたが、その他の灯油や軽油、お湯を運ぶものまで用意している方はいませんでした。

しかし、冬の時期の災害で、断水したり停電したら・・・灯油ストーブを家の物置に見つけたら・・・もしくは誰かが貸してくれたら・・・暖を取れるはずなのに灯油を手に入れられない!となってしまいます。

ただ、スペースを取るものだから、なかなか・・・という気持ちも分かります。

業界初のポリタンク『防災缶』とは??

そんな中で登場した、業界初のポリタンク『防災缶』。何が業界初なのか?どういうポリタンクなのか?開発した、名古屋市に本社のある タンゲ化学工業株式会社代表取締役社長、丹下明則さんに伺いました。

タンゲ化学工業株式会社代表取締役社長 丹下明則さん

「一つのポリタンクで、水、お湯、軽油、灯油、この4種類から選んで入れることができるポリタンクになります。

混ぜることは一切不可。ですので、軽油を入れた後、洗えば水を入れられますよねっていう問い合わせも、たまにあるんですけど、それはNGです。何を入れていただくかっていうのは、ご本人が、最初に必要に応じた液体物を決めていただいて、それを入れていただく。

一つのポリタンクで4種類の液体物を選んで入れることが出来るということ自体が業界初ですし、水、お湯ということになれば、食品衛生法の合格適合している、また熱湯100℃までOKですので、熱いお湯にも耐えられるような試験、これをクリアしてないとお湯がOKですよとは言い切れませんですし、軽油も灯油もそれぞれ消防法に適合した、別々の検査を受けて合格しないと、それも名乗れないわけなので、4種類が4種類ともそれぞれ規格基準をクリアしているポリタンク、ということ自体が業界初、ということになります。」

従来ですと、水用、灯油用、と用途は限られているものです。

灯油用に飲料水を入れるのは、食品衛生法上ダメだし、水用に灯油を入れるのは消防法上ダメ。

それを、すべての基準を同時にクリアし、災害時に必要になる4種類の液体、水、お湯、軽油、灯油ならば、どれを入れる容器として使も使うことができる、というポリタンクを作ったのです。(お湯を入れる場合は別売りの専用キャップを二つ買っておく必要があります。ご注意ください!)

業界初のポリタンク防災缶 いったい何がすごいの?の画像はこちら >>
こちらが防災缶 容量は20リットル 3300円です。

季節に関係なく生産し在庫を持ち、被災者に届けたい!

4種類の液体ならどれを入れてもいい、というのは便利そうですが、だからと言って、そんなにすごいことなのか?と正直思っていました。しかし、そうではないのです。防災缶が生まれたわけについて、再び丹下社長のお話です。

タンゲ化学工業株式会社代表取締役社長 丹下明則さん

「先ごろも東北の方で大きな地震があったじゃないですか。こういった災害っていうのは季節関係ないんですよね。で、その時に必要な液体物っていうのは、その時、その人によって違うと思うんですよ。

ところが残念ながら、例えば、東日本の震災の時を例に挙げますと、あれ3月11日っていうのは東北地方でまだまだすごく寒いんですよ。ところが中部とか西日本の我々からすると3月っていうのは、もう寒くなく、逆にもう冬物の商品っていうのは作ってないんですよ。

もう夏に向けて、水を入れる容器を作ったりしてますから。

そりゃメーカーとしてみれば、売れない時期にですよ、たくさん生産してたくさん在庫することは、まあ、まずありませんから、どうしても灯油容器が欲しいからたくさん持って来てくれって言ってもですよ、灯油容器が売れる時期じゃないときっていうのは、そもそも生産ラインには乗ってないし、在庫も最小限しか持ってないっていうのが、どこのメーカーでもよくある話なんですね。

そうなんですよ。だって、今欲しいんですよ。今メーカー欠品してますから、今度入ってくるのは一週間後ですよ、10日後ですよ、じゃ遅いんですよ。ところが防災缶に関しては、そういった不安っていうのはないですよね。」

たしかに、自然災害に見舞われた時のことを考えると、灯油が必要か、軽油が必要か、水が必要か、お湯が必要か、その季節や、その時の状況で違ってきますよね。

3月の大震災のとき灯油用のポリタンクの注文が殺到したのに、丹下さんはメーカーとして、在庫が無くて必要なモノを提供できない状況に非常に心を痛めたのです。そこで、『ならば水でも灯油でも使えるものを開発すればいいんだ!』と、業界の当たり前を変える商品の誕生につながったのです。

これで、季節ものではない商品になった災害用のポリタンク。製造も在庫も確保できるようになり、いつでも必要な人に届けられるような状況に近づくことが出来ました。

ちなみに、内容物が何なのか、入れた本人以外にもしっかり分かるように、大きくステッカー式で印がつけられるようになっています。間違えたら大変ですから。

業界初のポリタンク防災缶 いったい何がすごいの?
こちらのステッカーに印をつけて、内容物が分かるようになっています。

近くのホームセンターや量販店に在庫が無い!メーカーにも在庫が無い!という状況は、自分が被災したときと想像すると、とても不安。そうした不安が解消される、業界初の商品。こうした工夫は本当に心強いですね。

(TBSラジオ『森本毅郎スタンバイ』取材・レポート:近堂かおり)

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