12月1日のゲストは味の素株式会社 R&B企画部の勝美 由香(かつみ ゆか)さん。創業116年の味の素が、いま改めて問いかける「おいしいとは何か」。

プロジェクト「オイシサノトビラ®︎」を通して、SNSの「映え」や評価サイトの「星」では測れない、自分だけの“おいしさ”の尺度についてうかがいました。

創業116年、改めて問う「おいしい」の正体

西田 改めてになりますが、味の素は「おいしさ」をどんな軸で考えてきた会社なのでしょうか。

勝美 味の素グループは、1909年に「うま味」*を発見し、創業しています。生活者の方々に食べ物をおいしく召し上がっていただくこと、そして健やかな体づくりを軸に、世界24カ国の地域で事業を展開してきました。

*うま味:基本5味のひとつである昆布、しいたけ、トマト、チーズなどに含まれるアミノ酸「グルタミン酸」の味のこと。

西田 おいしさを大事にされているとのことですが、最近、特に力を入れていることは何でしょうか?

勝美 「オイシサノトビラ®︎」というプロジェクトです。

“おいしさ”の定義を問い直す。味の素、食のあたらしい価値「オ...の画像はこちら >>

「オイシサノトビラ®︎」HPより引用

西田 これは、どのようなプロジェクトなのでしょうか?

勝美 これまでは「味」や「栄養」を届けることが中心でしたが、食にはそれ以外にも大切な要素があるはずだと考えました。そこで、改めて「おいしいとは何か」を問いかけるメディアをつくったんです

西田 味覚としての「おいしい」だけではない、ということですね。

勝美 その通りです。「おいしい」には、日常の食の中に眠る記憶や情景、感情、誰と一緒にいたかなど、さまざまな要素が含まれています。ただ、そうした要素は置き去りにされがちです。

“おいしさ”の定義を問い直す。味の素、食のあたらしい価値「オイシサノトビラ」

「映える」食事だけが正解じゃない

西田 サイトを拝見しましたが、まるで雑誌のように綺麗で、いろいろな方がエッセイを寄稿されていますね。

勝美 日常の中にある食を、そのひとなりの視点で切り取り、どう感じたか、自分にとってどういう体験だったかを表現していただいています。

西田 読者には、何を伝えたいとお考えですか?

勝美 読んでいただくことで、「確かに自分にもこういう瞬間があったな」と感じたり、「こういう経験をしてみたい」といった、小さな一歩を踏み出すきっかけになってほしいです。

“おいしさ”の定義を問い直す。味の素、食のあたらしい価値「オイシサノトビラ」

西田 そもそも、なぜ今、おいしさを問い直す必要があるのでしょうか?

勝美 実は、生活者の方々へのヒアリングを通して、「食への関心」や「日々の食事への満足度」が、徐々に低下しているという結果が見えてきたんです。

西田 いったいどういうことなんでしょう。

勝美 詳しくうかがうと、SNSで「映える」ものや、評価サイトで星がついているお店の食事が「良い食事」であり、それ以外は満足してはいけない、という風潮があるようです。

西田 なるほど。

勝美 一方で、自分自身の毎日の食事については、「ひとに見せられない」「気に入っているけれども、人に自慢できるようなものではない」といった感覚を多くのひとが持っています。

西田 つまり、おいしく、栄養的にも完璧な食事であったとしても、SNSに載せるほどではないものには、満足してはいけないと思い込んでしまっているのですね。

勝美 そうですね。

西田 「オイシサノトビラ®︎」は、この状況をどのように変えようとしているのでしょうか?

勝美 誰かに「良い」と言ってもらうのではなく、自分なりの尺度で「良い」と言えること。それこそが本当のおいしさだと、このメディアを通して伝えたいと思っています。

“おいしさ”の定義を問い直す。味の素、食のあたらしい価値「オイシサノトビラ」

「書く」ことで自分だけのおいしさを見つける

西田 さて、「オイシサノトビラ®︎」にはオンラインストアもあるんですね。

勝美 はい。2024年の春に始まったばかりですが、現在は松浦弥太郎さんとコラボレーションした「ヤタロウズ・ノート」を販売しています。

“おいしさ”の定義を問い直す。味の素、食のあたらしい価値「オイシサノトビラ」

「オイシサノトビラ®︎」HPより引用

西田 どのような商品でしょうか?

勝美 松浦さんの「何に心を動かされたかを書き留めることで、自分なりのおいしさが見つかる」という言葉をヒントに、日々の気づきを発見につなげるためのノートをつくりました。

西田 私も手に入れてみようと思います! ほかに商品化されるものはありますか?

勝美 12月上旬には、在原みゆ紀さんとコラボレーションした「ミルクガラスの器」も発売予定です。今後も、食にまつわる体験を深めるようなアイテムを充実させていきます。

西田 「おいしさは、人それぞれ。」というキャッチコピーから始まるサイトは、読み物としても非常にすばらしいです。ぜひ皆さんも覗いてみてください!

“おいしさ”の定義を問い直す。味の素、食のあたらしい価値「オイシサノトビラ」

(TBSラジオ『見事なお仕事』より抜粋)

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