藤本壮介さん(Part 1)
1971年生まれ、北海道出身の建築家。東京大学建築学科工学部を卒業後、2000年に藤本壮介建築設計事務所を設立。
JK:とにかく万博の一番は象徴的な大屋根リングですよね。あれですべてまとまりました! もともとは何のイメージでパッと浮かんですか?
藤本:ありがとうございます。最初は機能的なところをちゃんと考えなきゃということで、会場の人の流れを考えていたんですね。ただ、機能だけだとそれだけだよな、と思って・・・2020年の春から夏にかけて「分断の世の中」と言われてて、全部がバラバラになっちゃうのは本当にもったいないな、と。そういう意味では万博って分断と真逆で、多くの国が集まってくる場所じゃないですか。それに気がついた時に、「分断の流れに抗う希望のメッセージとして、多様な世界につながれるんだ、そういう会場デザインにできるんじゃないか」と。
JK:いち早くですよね! まだパビリオンが中途半端な時に、もうすでにできていたという感じ。すごいまとめ役をやりましたね。
藤本:おかげさまで・・・でも途中はご批判もいただいたりして、大変でしたけど。実際に見ていただくと「これはすごい!」と思っていただけるだろうな、とは思ってたんですけども。
JK:私いつもクイズ出すんですよ、「これは何メートルですか? 直径何メートルですか?」って(笑) 本当に2,025メートルですか?
藤本:2,025メートルなんですけど、実は設計をしている時はそこにあまり気がついていなくて(^^;) むしろ、中に入れないといけないパビリオンの面積とか、いろんなことを総合するとあの大きさになっていったんですね。だいたい2キロメートルぐらいだよなと理解していたんですけど・・・
JK:せっかくだから?
藤本」「もしかして、2キロメートルってことは2,025メートルではないか?」ということで(笑)
出水:そうなんですね! 後から?! 2025年に開催ということで、最初から設計されたのかと思っておりました!
藤本:けっこう後で気づく時が多いんですよ(^^)
JK:すごく運がいいというか、奇跡というか、そこにちゃんと理屈を持っていくというのがすごいですね。直径は600メートル?
藤本:670メートルですね。約600メートルぐらいです。海外のパビリオンのスタッフさんは朝早く、開幕前の時間にジョギングをしてたらしいです(^^)僕も朝早く行った時は結構走っている方いらっしゃいました。
JK:眺めと、風と、空気がすごくいいですよね~。
出水:1周回ったら世界一周旅行しているような気分にもなれますしね(^^)
JK:全体を見れますからね。あれでまとまりましたよね、内と外って感じで。あれは大成功の1つですね。新しい2025年の万博の太陽の塔に変わるものですから。あれはずっと置いておくわけですか?
藤本:今いろいろな議論が行われてますよね。本当は僕自身も残せるといいなと思っているんですけど・・・やっぱり剥き出しの木は手入れをしたり、材を取り替えたりしなきゃいけないという意味ではちょっと大変ですね。
JK:でもあの発想は大成功だと思う。ギリシャ・ローマの円形劇場ですか?
藤本:それも意識しました。外側がちょっと高くなっているので、全体としては大きな円形劇場みたいになって、万博全体で何かパフォーマンスとかイベントができるんじゃないかなって想像して。実際オープニングの日に、海側のところで1万人の第九を佐渡さんがやっていただいて・・・あれは感動しましたね。
JK:良かったですね。朝9時に始まって1万人の第九。あれが始まりっていうのが良かった! なんかすごい気持ちよかった。
藤本:施工してくれた3つゼネコンがそれぞれ1/3ずつ作ってくれたんですけど、やっぱり日本の施工者ゼネコンさんはすごいですね、チームワークが。普段は競合しているライバルですけど、リングは協力しながらちゃんと作ってくれて。
JK:3社一緒にみんなで作ったって初めてでしょうね! 丸なだけに、丸く納める(笑)あれは釘使ってないんですか?
藤本:いわゆる釘は使ってないんですけど、楔を入れて締め付けてるんですね。清水寺みたいな感じで。
JK:日本の建築の基本ですね。
藤本:ただ伝統的な楔は木の楔なんですよね。それだとちょっと弱くて、あの大きさだと今の建築基準法をどうしてもクリアできない。それで楔を金属にアップデートしてギュッと締め付ける。でも今までやったことがないので、施工者さんが実物大のサンプルを作って、壊してみて、実験を何回も何十回もして、「ここは弱かった」「この方法だとうまくいった」とか、データを何回も取ってようやくたどり着いた方法なんです。3社それぞれ実験の設備を持っているので実験データは共有してたんですけど、最後の最後で「やっぱり自分たちの工区は自分たちが考えた楔でやりたい」と(笑)
出水:それぞれ違うんですね!
藤本:僕も「揃えてください」って言うべきなのかなと思ったけど、やっぱりそこはプライドがあるだろうなと思って。逆にそれぞれ違いが出て、思い入れを持って作ってくださって。
JK:じゃあ「ここはどこが作った」って書いてあるんですか?
藤本:書いてはいないんですけど、見るとわかります。結構違います。途中インターネットやSNSではは僕もちゃんと説明して、そうすると建築関係の方が写真をアップしてくれたりして、なんとなく広まっていましたね。
出水:見て歩けばよかった~! そもそも万博の会場デザインプロデューサーになった経緯は?
藤本:最初は「会場デザインプロデューサーを今探してます」っていう話は一切なく、万博協会から「会場デザインについていろんな人にご意見をお伺いしてるんです」ってご連絡が来たんですね。わりとカジュアルな感じで、当時彼らが何か進めていた案について僕もけっこう好き勝手なことを言っていたんです。
JK:ああ、ややこしい時でしたね。
藤本:スタジアムのザハ・ハディッドさんの案がキャンセルされたり、デザイナーの方がいろいろあったりとか、それを見て「国家プロジェクトって大変そうだな」と思ってた時期だったので、お話いただいた時は「ありがたい」と「これは建築家人生が終わってしまうかも」みたいな・・・だいぶ悩みましたね。本当に大事な決断だなと思って、まず万博のことを勉強しなきゃと思って。今の時代に万博をやるのはどういうことなのか? 分断の時代か・・・いや、でも分断の時代だからこそ万博をやって世界が1つにつながるのはすごいことなんじゃないか? 建築家って人が集まる場を作る仕事なんですよね。建物とか、広場とか、大きな建築でも小さな建築でも人が集まる場を作る仕事。そういう意味では、世界が集まる場を作るのは究極の建築的なチャレンジだなと思って。
JK:大尾根リングの上に上ると他の建築が見えるんです。見渡せるんです! すごい重要な立場だなと思いましたね。
出水:分断というキーワードが思い浮かんで、多様性で1つになるというリングの構想は早いうちから決まったんですか?
藤本:そうですね。2020年4月から7~8月ぐらいですかね? 当時コロナだったってこともあって自宅にこもってスケッチを描いてて、機能的な人の流れと全体をつなげるっていう意味で、丸い形はわりと早く出てきたんですよね。
JK:内側と外で違いますよね。内側は外国?
藤本:はい、内側に外国のパビリオンが入ってて、外は企業さんのパビリオン。なので面積がしっかり収まるのかとか、いろんなことを解決しなきゃいけない。だから昔のスケッチを見ると、最初は直径300メートルとか400メートルとか、いろんな大きさを試してるんですよね。「これだと小さすぎるな」「これだとはみ出しちゃうな」とか。最後は海にはみ出してたじゃないですか。
JK:あれが良かったですね。
藤本:でも最初のスケッチは楕円で、陸の中に絵を描いてたんですよ。でもあるところで、「やっぱりこっちに飛び出した方がいいな」ってことで、どんどん大きくなって、きれいな円になった。
JK:始まりの第九も円を全部使って、きれいでした。
藤本:リングの上って警備の問題とか安全性の問題があって、イベントを頻繁にはやれないような雰囲気だったんですよね。
出水:最終的に大屋根リングの下や上で憩っている人がたくさんいらして、本当に人が集まる場所になりましたよね。
JK:真夏でも涼しかった! 風具合もいいんです、安らかで。あそこで寝てる人いましたよね(笑)
藤本:いましたよね(笑)やっぱり嬉しかったですね。とくに下で本当にごろっと寝っ転がってくださったり、大きな休憩場所になってて、子供たちとかが地べたに座ってお弁当食べたり。あれは嬉しかったですね。
(TBSラジオ『コシノジュンコ MASACA』より抜粋)

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