2月2日から、ある薬が薬局で買えるようになりました。「緊急避妊薬」、いわゆるアフターピルです。

避妊がうまくいかなかった、または予期せぬこと起きた場合に、妊娠を防ぐために飲む薬なんですが、実際に販売をはじめた荒川区の薬局に、今回何が変わったのかお話を伺いました。

薬局で買えるようになった でも「その場で飲む」ルール

「りんごちゃん薬局」の薬剤師、鈴木 怜那さんのお話です。

「りんごちゃん薬局」薬剤師 鈴木 怜那さん

今月の2日からですね、緊急避妊薬「ノルレボ」の販売が開始されました。処方箋なしで、病院にかからなくても「薬局で」購入していただけます。薬局側の薬剤師がですね、チェックシートを用いて服用が可能かどうかっていうのを確認していきます。

大事なポイントがあるんですけれども、「性交後72時間以内」に服用しなければいけないお薬ですので、72時間以内であるかどうか、注意点を説明した上で、「薬剤師の目の前で服用していただく」っていうところです。お渡ししたお水で、目の前で飲んでいただくっていうような形になります。

緊急避妊薬 薬局で買えるように 本当に必要な人に届くか?の画像はこちら >>
<緊急避妊薬「ノルレボ」。この箱に1錠、錠剤が入っています>
緊急避妊薬 薬局で買えるように 本当に必要な人に届くか?
「りんごちゃん薬局」薬剤師の鈴木 怜那さんに話を聞きました

鈴木さんも心苦しそうでしたが「薬剤師が飲み込むまで見届ける」という異例の運用がとられています(錠剤を一錠服用する)。これは、転売を防ぐため、何より「確実に時間内に飲んでもらう」ために国が決めたルールということです。

現在対象となっているのは、「ノルレボ」というお薬。

いわゆる「中絶の薬」と勘違いされることもありますが、全く違います。妊娠するには卵子と精子が出会う必要がありますが、この薬は卵子が出ないようにする。

つまり、妊娠そのものを防ぐお薬なんだそうです。服用は早いほど効果が高く、24時間以内ならおよそ95%。72時間以内でも80%以上妊娠を防げるとされていて、「きるだけ早く飲む」ことが大事になってくるようです。

薬自体は以前からあったものなんですが、「産婦人科の診察」と「処方箋」が必ず必要でした。それが今回薬局で直接買えるようになり、病院に行かなくても手に入るようになった。これが最大のポイントだそうです。

「売ってあげたいのに売れなかった」 もどかしさ

ただ、「時間との勝負」と言う点で鈴木さんももどかしい経験をしてきたそうです。

「りんごちゃん薬局」薬剤師 鈴木 怜那さん

もし必要な方が来られた時に、どこかの先生がですね処方を書いていただいたら出せるようにということで在庫していました。で、その時に必要な方が来られたんですけれども、処方していただく医師を見つけるのにですね、その時、日曜日か祝日だったんですけれでも、いろんなところに電話しました。片っ端から電話したんですけれども、全部断られてしまって。その時点でもう4~5時間経っていて、時間がとても大事なお薬なのに、薬局には在庫があるのにお渡しできないっていう状態が続いて…。

私も自分がすごく焦っていたんですけれども、本当に焦ってるのはその女性でしたので、不安だったと思います。朝問い合わせがあって、夕方とかにようやく渡せるってなったので、はい…。

処方箋が必要だと知らずに薬局に来てしまうこともあったそうですが、当時は「処方箋がないので売れません」と断るしかありませんでした(この時の女性は鈴木さんが病院を探し回ってオンライン診療に対応している病院が見つかり、なんとか夕方に薬を飲むことができたそうです)。

また、この薬を必要とする背景は、避妊の失敗だけではありません。避妊を拒否された、あるいは性暴力の被害に遭った。そんな状況で、病院を探して、予約して、何があったのかを説明する。このプロセス自体が大きな苦痛を伴います。

お話を聞くと、世界ではおよそ90カ国で薬局で販売されている一般的な薬だそうで、日本は20年以上遅れてようやく今回の解禁にたどり着いたという経緯があるんです。

市販化は前進だが、まだ十分ではない

ようやく薬局で買えるようになったわけですが、今回の市販化に向けて長年活動してきたNPO法人「ピルコン」の染矢 明日香さんは、まだまだ課題は山積だと教えてくれました。

NPO法人「ピルコン」 染矢 明日香さん

全国には薬局とかドラッグストアって約6万件ほどあるんですけれども、今回2月2日スタートになったのは約7000件で、限られた薬局のみでの取り扱いになるんですね。

かつ、都道府県によっても取り扱いの差が大きくて、一つの都道府県では500店舗以上あるのに、中には3店舗の都道府県もあって、かなり地域の格差が大きいっていうところは課題だなっていうふうに思っています。

女性の避妊とか中絶関連のことって、日本で本当になかなか進まなくて、私自身も思いがけない妊娠の経験をしたことがあって、その時の自分の人生がコントロールできない怖さだったり、絶望みたいなのを経験していたので、そういう子たちが一人でも減って、「助けを求めてよかったんだな」っていうふうなこと思えるような社会にしていきたいと思っています。

染矢さんご自身の経験があったからこそ、諦めずに活動を続けてこられたということでした。

ただ、薬局販売が解禁されたとはいえ、実際に販売しているのは全体の1割強。

「研修を受けた薬剤師がいる」「プライバシーが守られる」「連携できる産婦人科がある」といった条件を満たした薬局に限られています。

さらに価格は、1錠 税込7,480円。海外では1000円~3000円程度で買える国も多く、日本はまだ高額です。市販化は大きな一歩ですが、本当に必要な人に届くには、まだ課題が残されているということでした。

必要な人が、必要なときに確実に手に入れられる。そういう仕組みに、本当になっているのでしょうか。

(TBSラジオ『森本毅郎・スタンバイ!』より抜粋)

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