今月22日におきた、東京スカイツリーのエレベーター閉じ込め事故。救助までに「5時間半」を要したというニュースは、大きな衝撃でした。
「防災チェア」の中身とは?
そこで注目したいのが、たまにエレベーターの隅に置かれていることのある「小さな椅子」です。これは単なる椅子ではなく、万が一の備えが詰まった「防災ボックス」です。一体、何が入っているのか。販売元の一つである「まいにち株式会社」(大阪市)の黒川雄貴さんに聞きました。
まいにち株式会社 黒川雄貴さん
<EVキャビネットチェア(まいにち株式会社 HPより)>「EVキャビネットチェア」と言いまして、エレベーターの角っこにだいたいあるようなイメージ、見られたことあるとは思うんですけど。普段は椅子代わりで、上の方がね座面になってまして、非常時にですね上の座面シートが外れるようになってまして。そこの中にいろんな食料とか、水とか、携帯トイレとかが入ってるような形になります。
ただまぁ、他のいろんなメーカーさんも出してらっしゃるんで、ちょっと正直ね、開けてみないとわからないっていうこともあります。
これらは「防災チェア」や「防災キャビネット」と呼ばれ、数時間の閉じ込めを想定した備蓄品が収納されています。黒川さんの会社の商品では、携帯トイレ10回分、ティッシュ、ペットボトルの水2本、缶詰、ライト、ホイッスルなどがセットされており、閉じ込められた際の命綱となります。
自治体も導入を支援しており、東京都港区では2022年度からマンションへの無償配布事業を実施。
極限状態でのトイレ使用
そして、最も切実な問題が「トイレ」です。スカイツリーの事故でも簡易トイレが使用された形跡があったといいますが、狭い密室でどのように対処すべきなのか聞きました。
まいにち株式会社 黒川雄貴さん
このね座面シートを外すしますと、穴があります。そこのところにですね「排便袋」を広げていただいて、用を足すというイメージです。「目隠しポンチョ」っていうのを入れていただけるようにできたらお勧めしてまして、腰回りまで隠れるような長さのポンチョなんですね。周りの方のちょっとご協力をいただきながら用を足していただいて、凝固剤かけていただくと。ただ、「100%臭わない」っていうのは正直難しいですね。
やっぱりね、時間がね、いつ出れるかっていうのが分かってたら我慢できますけど、復旧のめどが立ってなかったらやっぱり絶望的ですよね。皆さんの前でトイレをするっていう機会は僕もないので、正直したことないので、やっぱりちょっと出にくかったり緊張感あったりしますので。でもね、それで体調不良になることも想定することがやっぱり大事だと思いますので、こういった備えがやっぱり大事かなと思います。
大人は1日に平均5回から7回トイレに行きます。数時間の閉じ込めとなれば生理現象は避けられず、無理な我慢は膀胱炎などの健康リスクも招きます。周囲に人がいる中での使用は精神的ハードルが高いものですが、体調を守るためには「使う覚悟」も必要になります。
また、こうした設備がない場合に備え、個人で「携帯用トイレ」をカバンに一回分でも忍ばせておくことも有効な自衛策とのことでした。
「救助を待つ」から「自分たちで救う」訓練へ
さらに、こうした閉じ込めのリスクは決して他人事ではありません。東京都の被害想定(2022年)によれば、首都直下地震が発生した場合、都内およそ16万台のエレベーターのうち、最大で「2万2000台」で閉じ込めが発生すると予測されています。これほどの規模になれば、専門業者の救助を待っていては数日を要する恐れもあります。
そこで、「自分たちで助け合おう」と独自の訓練を続けているのが、マンション防災士の釜石徹さんです。
マンション防災士 釜石 徹さん
管理組合の理事長になった時に、「首都直下地震」の被害の大きさを考えると、エレベーターが止まってしまったら救出までに相当時間がかかると。それを理事会で話したら、「子供は閉じ込めさせたくないよね、じゃあ子供を助けるためにもやりましょうか」ということで、エレベーター会社を紹介してもらって、訓練をやってるんです。
電話も使えない、インターネットも使えない状態でいるわけですから。皆、エレベーター業者は保守に出払うような形になるし、そういうことを考えたら本当に後回しにされてもおかしくないだろうってことですよね。
ですからそこに閉じ込められてるのは、やっぱり自分たちでできるようなことは知っておきましょうというのが、エレベーターの訓練やる目的になってるんです。16回目かな、16年間連続でやってます。
釜石さんのマンション(10階建て・住民約100人)では、エレベーター会社の点検にあわせて実際に電源を落とし、外から毛布やトイレを差し入れたり、扉を開ける手順を確認したりする訓練を16年前から継続しているそうです。
ここまで本格的な訓練を行うマンションは全国的にも珍しいそうですが、根底にあるのは「プロの救助がすぐには来ない前提」で動くという意識。「備え」の有無を知っているだけで、パニックを防げる可能性は大きく変わります。マンション、職場、外出先。あらゆる場所で閉じ込められるリスクがあると考え、今一度、身の回りの確認が必要です。
(TBSラジオ『森本毅郎・スタンバイ!』より抜粋)

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