3月3日は「耳の日」。耳の健康の大切さを再確認する日です。

いま、現代病とも言える「ヘッドホン難聴(イヤホン難聴)」が深刻な問題となっているのをご存知でしょうか。

WHO(世界保健機関)の発表では、世界で11億人もの若者(12~35歳)が難聴のリスクにさらされていると警鐘を鳴らしています。しかし、これは若い世代だけの問題ではありません。実は「難聴」は、働き盛りやシニア世代にとっても、将来の生活の質を左右する重大なリスクを孕んでいます。

11億人が難聴予備軍⁉専門医が教える「ヘッドホン難聴」の防ぎ...の画像はこちら >>

今回、難聴や補聴器の専門医である、東京医科大学病院 准教授の白井杏湖先生にヘッドホン難聴の正体とその対策について教えていただきました。

難聴は「認知症」の最大のリスク因子

意外に知られていないのが、耳と脳の密接な関係です。難聴と認知症関連が一躍有名になったのが、2017年に難聴と認知症関連について『The Lancet』という有名な医学誌に認知症の予防、介入に関するレポートが発表されて以降です。

この中で、修正可能な認知症の危険因子が発表されていますが、認知症のリスク因子のうち、40%は潜在的に修正可能(予防可能)であり、その中でも難聴は認知症の最大の予防可能なリスク因子であることが報告されました。

もしも世界から難聴がなくなったとしたら、認知症患者を8%減らすことができるということです。難聴を予防することは、認知症を未然に防ぐことに直結するということです。

「ヘッドホン難聴」の正体

1. 原因は「音の大きさ」×「時間」の掛け算

白井先生によると、ヘッドホン難聴の本質は、昔から言われる「騒音性難聴」と同じです。 耳の奥にある、音を感じ取る細胞(有毛細胞)がダメージを受けることで起こります。

2. 一度壊れたら「治らない」

「感音難聴」と呼ばれるこの状態の恐ろしい点は、内耳の細胞は一度壊れると再生しないことです。 「悪くなってから治療すればいい」と思われがちですが、現代の医学でも有用な再生治療法はなく、一度失った聴力を取り戻すのは極めて困難です。

3. 自覚症状が出にくい「静かな進行」

突発性難聴のように「ある日突然」ではなく、高い音から少しずつ、ゆっくりと進んでいくのが特徴です。

  • 体温計の「ピピッ」という音

  • 冷蔵庫の閉め忘れ警告音

    こういった高い音が以前より聞こえにくくなったと感じるなら、すでに症状が進んでいる可能性があります。

耳を守るための「3つの処方箋」

白井先生が推奨する、具体的な耳の守り方をご紹介します。

① 「1時間使ったら10分休む」

WHOでは、80デシベル(走行中の電車内やパチンコ店内と同等の騒音)を週40時間以上聞くのは危険とされています。10分休むことで耳を回復させるだけでなく、外した瞬間に「キーン」という耳鳴りに気づくことができます。この初期症状に自分で気づくことが、さらなる悪化を防ぐ第一歩です。

② ノイズキャンセリング機能を活用する

周囲がうるさいと、つい音量を上げてしまいがちです。ノイズキャンセリング機能付きのイヤホンを使えば、周囲の騒音を打ち消せるため、音量を上げすぎずに済み、有効な対策となります。

③ 物理的な距離をとる

ライブハウスなどの大音量の環境では、スピーカーから離れる、あるいはイヤーマフや耳栓を装着して、物理的に音のエネルギーを抑えることが大事です。

「骨伝導イヤホンなら安心」は誤解?

最近人気の「骨伝導」タイプについても伺いました。 骨伝導も最終的には内耳で音を聴いているため、大きすぎる音を流せば難聴のリスクは同様にあります。ただし、構造的に大音量は出しにくい側面もあるため、適切な音量で使用することが肝心です。

違和感を覚えたら、迷わず受診を

「最近、言葉が聞き取りにくい」「耳鳴りが続く」と感じたら、放置せずに早めに耳鼻科を受診してください。急性期であれば、お薬で改善する可能性もあります。

大切な人の声や、お気に入りの音楽を一生楽しみ続けるために。まずは今日から「10分の耳休憩」を始めてみませんか?

TBSラジオ『ジェーン・スー 生活は踊る』より抜粋)

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