木材建設メーカー「住友林業」が驚きの計画を発表しました。どんな計画なのか。
まずは住友林業・つくば研究所の中嶋一郎さんのお話です。
★350メートルの木造ビルが建つ?!住友林業・つくば研究所 中嶋 一郎さん「当社は、創業が1691年、元禄4年で非常に古い。2041年の創業350周年の時に、環境木化都市を実現させるという構想を持っていて、東京の丸の内に、350メートルの木造ビルを建てるのを想定して、構想の計画をした。」▲住友林業「W350計画」

▲「W350計画」内装イメージ
その名も「W350計画」。あくまで構想の段階ですが、地上350メートル、70階建ての木造高層ビルを建てようというすごい計画です。100%木材を使用するわけではなく、いまのところ木材と鋼材=9対1となる「混合工法」で建てることを目指していますが、いま日本で一番高い鉄筋の高層ビルが大阪のあべのハルカスで300メートルなので、それを上回るものを作ろうとしています。
★木材自体の進化も加速「W350計画」の完成は2041年を予定ということで、まだまだ先の話になってしまうんですが、実は木材の高層ビルの話は、突然出て来たわけではないようです。住生活ジャーナリストの田中直輝さんのお話。
住生活ジャーナリスト 田中直輝さん「東京の国分寺駅前に木造で作った7階建てのビルができてます。あと銀座にも木造でビルが建っています、5階建て。全部が全部木造で作られているわけではなくて、ある程度木造の部分が多い建物ができてきている。いま建物に使われている木は、1本の木から削り取ったものではなく、木をつなぎ合わせた「集成材」が使われている。

▲CLT(日本CLT協会のホームページより)
この新しい木材は、CLT(クロス・ラミネーティッド・ティンバー)と呼ばれるもので、日本語だと「直交集成材」と言います。ヨーロッパで開発された木材で、木目を互い違いに重ねて強度を上げています。強度は普通の鉄と同等で、重量は鉄より軽い。さらに厚みがあるので、火災が起きても外側だけ炭化して、内部までなかなか燃えにくい構造になっているという特徴もあります。
さらに、この木材は工場でつくられるため、現場では設置するだけ。現場でコンクリートが固まるのを待つ時間も短縮され、工期が短くなるというメリットも。この新木材の登場で「木造の一戸建て」ではなく「木造の高層ビル」が注目されていたんです。
★国も補助金で木材建築を後押しそして、木造ビルが注目されている理由には、日本独自の課題もありました。
なので、もったいないからちゃんとうまく日本の国材を使っていきましょうということで、国が新しく法律を作り、木をある一定以上使った建物に補助金を出している。林野庁が主体で補助金を出している事例、国交省でも似たように補助金を出すケースもありますね。」
日本の木材の自給率は3割…、多くは輸入に頼っているのが現状です。そこで政府は今年5月から、林業や木材加工会社に対して、国産の木材を使った新素材「CLT」を購入した場合に1立方メートルあたり最大15万円を補助しています。この補助ができたことも追い風となり、国産の木材を使ったCLTも数も増えて来ている。だからこそ今、日本で木造ビルが注目されていたんです。
★世界では木造ビルの建設ラッシュしかし、増えているのは日本だけかと思いきや、そんなことはありませんでした。「超高層ビルに木材を使用する研究会」を立ち上げた元福岡大学教授の稲田達夫さんのお話です。
やっぱり地球環境問題、パリ協定。コンクリートとか鉄は製造時にCO2排出量が非常に多い。木材というのは地球環境的にはすごく良い材料。そういうメリットがある。」
世界的にはもう木造高層ビルの建築がどんどん進んでいます。理由のひとつがパリ協定。コンクリートをつくるときの二酸化炭素排出量はかなりの量になるので、木材を使うことで(育てる際にはCO2も吸ってくれるし)排出を抑えることができます。場所によっては、木材と鋼材を両方使う「混合工法」ですが、とにかく少しでもCLT木材を使うというのが世界的な流れになっているということでした。

田中ひとみが「現場にアタック」でリポートしました!
◆8月27日放送分より 番組名:「森本毅郎 スタンバイ!」コーナー名:「現場にアタック」
◆http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t==20180827063000