TBSラジオ『ジェーン・スー 生活は踊る』は月~金の11:00~13:00生放送。
音楽ジャーナリスト高橋芳朗さんによる洋楽コラム
「祝・リリース40周年~ドゥービー・ブラザーズのAOR名曲『What a Fool Believes』がJ-POPに与えた影響を聴いてみよう!」【高橋芳朗】
今回はこんなテーマでお送りします! 「祝・リリース40周年~ドゥービー・ブラザーズのAOR名曲『What a Fool Believes』がJ-POPに与えた影響を聴いてみよう!」。
【ジェーン・スー】
はー、40年!
【高橋芳朗】
それを記念して、このアルバムに収録されている全米ナンバーワンヒット「What a Fool Believes」がいかにのちのポップミュージックに影響を与えたか、その一端をJ-POPに絞って紹介していきたいと思います。もうね、この曲にインスパイアされたと思われる曲は洋楽邦楽問わずめちゃくちゃたくさんあるんですよ。それだけで特番が組めちゃうぐらい。
【ジェーン・スー】
うん、2時間特番いけますね。
【高橋芳朗】
ホント、『今日は一日「What a Fool Believes」三昧』とかできる勢い。
【堀井美香】
フフフフフ、そんなに!?
【高橋芳朗】
ぜんぜんいけます。じゃあ、まずはその名曲「What a Fool Believes」を改めて聴いてみましょうか。この曲、作者はドゥービー・ブラザーズのボーカルのマイケル・マクドナルドと「Footloose」でおなじみケニー・ロギンスとの共作になります。ケニー・ロギンスによるバージョンもこのドゥービー版の5ヶ月前に出ているんですけど、ヒットしたのはこちらの方でした。全米ナンバーワンヒットにしてグラミー賞レコードオブジイヤー受賞曲です。
【高橋芳朗】
堀井さんのVネックのモヘアセーターが光ってますね。この曲にばっちり。
【堀井美香】
モヘアがお役に立ったようで。
【ジェーン・スー】
堀井さんがポプラ並木を歩いているところがイメージできたわ。
【堀井美香】
よーし、モヘア光線、えいっ!
【高橋芳朗】
はい、ありがとうございます(笑)。ではこれから「What a Fool Believes」にインスパイアされたと思われる日本のポップスを紹介していきますが、この一聴した限りではなんの変哲もないように思えるシンプルなリフがAORやシティポップのイメージを決定づけたということがよくわかると思います。これはもうポップミュージックの歴史に残る発明と言っていいんじゃないでしょうかね。時代/世代別に3曲紹介します。
そうだ、例によってひとつお断りしておきますと、これはパクリを糾弾しようとか元ネタをひけらかそうとか、決してそういう企画ではございません。先達から受け継いだバトンを次の世代にまた継承していく、ポップスの進化論の話なので。
【ジェーン・スー】
それがポップスですという話ですよね。
【高橋芳朗】
うん。
【ジェーン・スー】
よろしく!
【高橋芳朗】
というわけで「What a Fool Believes」のインスパイア曲ですが、いちばん多くつくられたのはヒット直後の1980年代前半。今日はそんななかから映画『私をスキーに連れてって』の主題歌、松任谷由実さんの「サーフ天国、スキー天国」を聴いてみましょう。
実はユーミンさん、以前ご自身のラジオ番組のイントロ特集で「What a Fool Believes」を選曲したことがあるみたいなんですよ。曰く「いままでの音楽体験を振り返っても衝撃的なイントロだった」ということですから、きっとこの曲には強い思い入れがあるんじゃないかと思います。実際、「サーフ天国、スキー天国」は「What a Fool Believes」の影響をユーミン流ポップスへと見事に昇華した傑作と言っていいんじゃないでしょうか。
M2 サーフ天国、スキー天国 / 松任谷由実【堀井美香】
いやー、素晴らしい!(拍手)
【高橋芳朗】
素晴らしい! やっぱりこの曲かかると変なスイッチ入っちゃうね!
【ジェーン・スー】
まるで自分たちがホイチョイな気がしてくる(笑)。人生のど真ん中をずーっと歩いてきたような錯覚に陥れるね。大好き!
【堀井美香】
いやーん、スタジオにいる4人合計で200歳ぐらいなのにね!
【高橋芳朗】
スタジオではユーミンと黒柳徹子さんの境界線をいくようなジェーン・スーさんの物真似も炸裂していました。
【堀井美香】
全部ソラで歌えるのね。素晴らしい!
【ジェーン・スー】
私、音楽が大好きなの!
【高橋芳朗】

アハハハハ! やっぱユーミン特番やった方がいいよね、最高!
【ジェーン・スー】
この曲にドゥービーの影響があるかもしれないなんて、当時の子供のころの私たちにはまったくわからなかったけどね。「なるほど、こういうことだったんだ!」って。
【高橋芳朗】
続いては、1988年の作品。
【ジェーン・スー】
あー、なるほど! そうか!
【高橋芳朗】
これは岡村靖幸さんの代表作としてはもちろん、数多くのカバーを生み出してることでもおなじみの曲ですね。この曲に関してはイントロよりも岡村さんの歌が入ってきて以降「What a Fool Believes」感が一層強調されるようなところがあると思います。
【ジェーン・スー】
ヘポタイヤ!
【ジェーン・スー】
やったー!(拍手)
【堀井美香】
ぜんぶ歌えるもんね!
【ジェーン・スー】
堀井さんがド頭から結構ちゃんと歌ってたね。思ったんだけどさ、私たちがデイケアに入るころにはきっとこういう曲を歌ってるんだよ。80歳ぐらいで車椅子に乗って「だいすき」歌ってる(笑)。
【高橋芳朗】
フフフフフ、もはや忘年会と化してきましたな。
【ジェーン・スー】
でも確かにこの曲も言われてみればそうだね。「What a Fool Believes」感ある。
【高橋芳朗】
言われてみれば、でしょ? では最後の曲にいってみましょう。最後はぐっと新しくなって2012年の作品です。
【ジェーン・スー】
やっぱり時代だと思うんだけど、いままでかけた2曲にはなかったモラトリアム感みたいなものがすごくあるよね。「What a Fool Believes」にインスパイアされてるのにこの甘噛み感、いままでの曲にはなかったからさ。
【高橋芳朗】
うんうん。ユーミンや岡村ちゃんに比べるとモヘア感は後退していますよね。というわけで「What a Fool Believes」に影響を受けたと思われるJ-POPを3曲聴いてもらいましたが、実はこの番組でも「What a Fool Believes」インスパイア風の音楽がちょくちょく流れているんですよ。聴いてもらいましょうか。
(KIRINJI堀込高樹による番組ジングルが流れる)
【高橋芳朗】
これはKIRINJIの最新アルバム『愛をあるだけ、すべて』に収録の「非ゼロ和ゲーム」をベースにしたジングルなんですけど、これも「What a Fool Believes」感あるんじゃないかと。
【ジェーン・スー】
うん、そういうテイストはあるかもしれませんね。
【高橋芳朗】
こういう感じで気にしてみるとあの曲もこの曲もそうだったみたいなところがあると思うので、ちょっと意識していろいろ聴いてみると楽しいですよ。
【ジェーン・スー】
もう伝統の一節みたいな感じだもんね。
【高橋芳朗】
「What a Fool Believes」、覚えておくといいと思います!
◆12月7日放送分より 番組名:「ジェーン・スー 生活は踊る」
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