TBSラジオで毎週土曜日、午後1時から放送している「久米宏 ラジオなんですけど」。
5月25日(土)放送のゲストコーナー「今週のスポットライト」では、自動車のブレーキ踏み間違い事故を防止する「ストップペダル」を開発した「ナンキ工業株式会社」代表・南平次(みなみ・へいじ)さんをお迎えしました。
南さんは1939年、富山県氷見市生まれ。高校を卒業すると集団就職で上京。百貨店勤務、燃料店経営を経て、埼玉県川口市に会社を構え、自動販売機の取り付けや飲食店で使われるビールサーバーを設置・メンテナンスする仕事を30年以上やってきました。
2010年、71歳を迎えようとしていた南さんはそろそろ会社をたたむ頃かもしれないと考えるようになっていました。そんなある日、テレビの特集で、ブレーキとアクセルの踏み間違いによる自動車事故がとても多いことを知ったのです。それで、それまでの仕事を一切やめ、踏み間違い事故を防ぐ装置の開発に取り組むことを決めたそうです。
「2010年10月19日の『クローズアップ現代』(NHK)を見とってね、こんなことを放っておいて、どうして誰も作らなんだろうと思ってね」(南さん)
「これをなんとかしなきゃいけないということで、どのような考えからお始めになったんですか?」(久米さん)
「もう単純なんですけど、要するにアクセルを踏んだらそのままブレーキがかかればいいんじゃないかという発想で。そうすれば解決するということです」(南さん)
アクセルを踏んだままブレーキがかかればいい
人は不測の事態に陥ったときに頭が真っ白になります。何も考えられなくなると、普段なら簡単にできていること…ペダルを踏み替えることができなくなってしまいます。その結果、ひたすらアクセルを踏み続けてしまうのです。「踏み間違いは防げない。
南さんがすごいのはその発想もさることながら、それを実現する仕組みもすぐに思いついたというところ。南さんは「簡単なことです」と笑いますが、それがなかなかできないからみんな苦労するんですよね。南さんはテレビを見た翌日からすぐに試作を始めたそうです。下の写真は開発を始めた初期の試作機。基本的な仕組みは最新モデルも同じだそうです。


ストップペダルはどのような仕組みになっているのでしょうか。南さんが改良を重ねた最新モデル(下の写真)で見てみましょう。最初はブレーキもアクセルも踏んでいない状態(1枚目の写真)。ここからアクセルを深く踏んでいくとあるところでカチッと止まります。これが市販の自動車で目一杯アクセルを踏み込んだ、いわゆる「ベタ踏み」の状態です(2枚目の写真)。



ストップペダルはベタ踏み以上に踏み込んだときに初めてブレーキが働くものなので、通常の運転には差し支えないそうです。高速道路の合流や急な坂道での発進で踏み込んだときに突然ブレーキがかからないか不安な場合もあるだろうということで、南さんは「加速モード」という装置も開発しました。このスイッチを入れるとストップペダルの機能は解除されて、普通の車と同じ状態になるそうです。
さらにストップペダルは、アクセルをベタ踏み以上になったときにブレーキが利くのと同時に、アクセルもニュートラル(アクセルを踏んでいない状態)に戻るようになっているのです。う~ん、すごい。
布団に入ると夜中にアイデアが

それにしてもストップペダルの開発を始める9年前まで、自動車の専門知識も機械製造の技術もなかったとは思えませんね。しかも70歳にしてゼロからのスタート。
「もう9年間、毎日こんなことばっかりやってるんです。寝ても覚めてもずっとこのことばっかり考えてるんですよ(笑)」(南さん)
現在、埼玉県と岡山県の2つの企業の協力を得て、ストップペダルの製品化が進められています。
南平次さんのご感想

まず、こういったところでお話させていただいたことは、私としては宝です。公共の放送でこうやって取り上げていただいたということはストップペダルをみなさんに分かっていただけるいいきっかけになると思って、感謝しています。このシステムの機能そのものはこれでいいと思っているので、課題は普及のほうです。
今回はいい経験をさせていただきました。ありがとうございました。
◆5月25日放送分より 番組名:「久米宏 ラジオなんですけど」
◆http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20190525130000