TBSラジオで毎週土曜日、午後1時から放送している「久米宏 ラジオなんですけど」。
8月3日(土)放送のゲストコーナー「今週のスポットライト」では、水彩画講師の柴崎春通(しばさき・はるみち)さんをお迎えしました。
通信教育講座や絵画教室で50年近く講師を務めてきた柴崎さんは、2017年からYouTubeで「水彩画チャンネル」と題した動画を投稿。するとみるみるうちにチャンネル登録者が増え、2年数ヵ月で40万人を突破!
柴崎さんのモットーは「本格的な水彩画を可能な限り分かりやすく!」 。画材の基本的な扱い方から実践的なテクニックまで、役立つ情報が盛りだくさん。なにより、描いているときの柴崎さんがとても楽しそうなので、動画を見ていると、なんだか自分にも水彩画が描けるような気がしてくるのです。ユニークな経歴
柴崎さんは1947年、千葉県の外房、夷隅町(現・いすみ市)の農家に生まれ、高校生のときは柔道部で活躍(県大会2位!)。卒業後の進路についてはあまり考えていなかったので友だちと一緒に千葉県庁の採用試験を受けると見事合格。
大学では油絵を学び、卒業後は美術の通信教育講座「講談社フェーマススクールズ」に入社、インストラクターを長年務めました。またご自身の創作活動にも熱心で、70年代から現在に至るまで毎年個展を開いています。教育と創作の二足のわらじですね。
柴崎さんが70歳を目前にした2017年3月にYouTubeで水彩画チャンネルを始めたのは、息子さんの勧めだそうです。
「息子が、今はYouTubeっていうものがあるからやってみたほうがいいよって言うんです。
「YouTubeって、何だと思いました?」(久米さん)
「いやあ、分からなかったんです」(柴崎さん)
「どんなものでした、初体験は?」(久米さん)
「いや、ぼくも分からないし、息子も動画を投稿した体験がないから、お互いに本当に手探りですよね。だから、人のYouTubeを見たりして。
「そしたらどんどん見る人が増えた?」(久米さん)
「そうなんです。最初は3000人くらいで。『えっ、3000人? すごいねえ!』って。どんな個展をやったって3000人は来ませんからね。そうしたら1万人になって、5万人になっちゃった」(柴崎さん)
「そうしたら?」(久米さん)
「息子が『登録者が10万人になったら盾がもらえるという話だよ』って言うんです。
昔、アメリカのテレビでボブ・ロスという人が油絵の描き方を教える『ボブの絵画教室』という人気番組があったので、柴崎さんの動画は「日本のボブ・ロスか?」と話題になったそうです。柴崎さんがYouTubeを初めて半年ほど経ったときのことでした。今では柴崎さんのチャンネル登録者数は40万人を突破していて、毎日千人ずつぐらい増えているそうです。
動画は柴崎さんがひとりで撮影しています。3台のスマートフォンを三脚に固定して、スケッチブック、手元、柴崎さんのそれぞれを撮影。
水彩画というと、多くの方は鉛筆で詳細に下書きをして、その上から薄めに色をつけていくのではないでしょうか。でも、水彩画の描き方はそうではないと柴崎さんは言います。
「みなさんの描き方は淡彩画といいます。水彩画はたっぷり濃いめに色を作って紙の上に乗せていきます。そして絵の具が乾かないうちにその上にまた別の色を重ねていきます。ウェット・イン・ウェットといって『にじみ』効果を出すんです。この『にじみ』こそが水彩画の最大の特長で、油絵には出せない価値なんです。そして色は筆で混ぜるわけじゃないんです。水の力で混色するんです。水に仕事をしてもらうのが水彩画なんですね。そして大胆にコントラストをつける。これがとっても大切なんです。みなさん水彩画を描くと、大胆な色を使うのが怖いものですから、なんとなく中庸な色を着けていくんですね。腰が引けちゃうんです。でもそれではできあがったときにぼんやりした絵になって、油絵に負けちゃうんです。油絵は絵の具の厚みがありますから迫力があります。それに負けないように、水彩画は大胆な色を乗せて、コントラストをはっきりさせる。そうすると油絵に負けない絵になります」(柴崎さん)
冗談を言っているうちに素晴らしい絵が!
柴崎さんにスタジオで水彩画を実演していただくと、手と同じくらい口がよく動きます。冗談やだじゃれがぽんぽん飛び出すので、だんだん久米さんもペースが変わってきて、コーナーの後半は柴崎さんと久米さんのかけあい漫才のようになりました。そうしながらも柴崎さんは、絶えず筆をリズミカルに動かしていて、水彩用紙のうえにはいろいろな色が矢継ぎ早に置かれていきます。絵を描くというより、いたずら書きをするような感じなので、久米さんも堀井さんも、紙に何が描かれているのかなかなか分かりません。柴崎さんは、水彩画は「描写」ではなく「デザイン」だと言います。多くの人は色や形を細かく〝描写〟しようとしますが、形や色を頭の中で大胆に編集して〝デザイン〟するのが水彩画なのです。
「柴崎さん、もう時間があんまりないので、あと1分でなんとかなりますか(笑)」(久米さん)
「もちろんです」(柴崎さん)
「この先生、すぐ安請け合いするんだから…。それ、木ですか? 手前にあるの? 」(久米さん)
久米さんがそう思うのも無理がありません。柴崎さんが動かす筆の先を見ていてもなかなか「絵」が浮かんでこないのですから。ところが、柴崎さんが「はい!」と言ってスケッチブックをこちらに向けると…
「いたずら書きにしか見えなかったのに、きれいな風景画になってる!」(久米さん)
「わあ、本当! すごいきれい!」(堀井さん)
「これが水彩なんだ、デザインなんだ」(久米さん)
「そうです」(柴崎さん)
「こういう絵を画廊で売ったら、おいくらになるんですか?」(久米さん)
「税務署が聞いてるからやめてください(笑)」(柴崎さん)
柴崎さんの「水彩画チャンネル」をご覧になると、みなさんも楽しく絵を描いてみたくなると思いますよ。また、柴崎さんの作品はインスタグラムで見られます。
柴崎春通さんのご感想
久米さんはトークの達人ですから、しかも年代的に非常に近いので、とても波長が合ったような感じがして心地よかったですね。ぼくもいつもバカなことばっかり言いながらやってますので、もし相手がまじめな方だと違ってきますけど、久米さんはくだけてくれましたのでとてもよかったです。今日はありがとうございました。
◆8月3日放送分より 番組名:「久米宏 ラジオなんですけど」
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