「森本毅郎・スタンバイ!」(TBSラジオ、月~金、6:30-8:30)7時35分からは素朴な疑問、気になる現場にせまる「現場にアタック」。先日、このコーナーで「日本は、まだまだバリアフリーじゃない」という話を取り上げました。
これは「筋電義手」=筋肉の信号を電気で伝えて操作する義手です。私たちは、手をグーパーしたり、手首を曲げたりする時、腕の中の筋肉が緩んだり、縮んだりします。手首から先、肘から先がなくなっても、腕の中に手を動かす予定だった筋肉が残ってるので、この筋肉の動きの電気信号をセンサーが読み取って伝えることで、ちゃんとグー、パーできる。つまりこの義手で、コップを持って、水を飲んだりできるんです。
こうした「筋電義手」の技術は昔からありますが、150万円など高額だったのがネック。これを、設計図はオープンソースという形で、ハックベリーのホームページで無料で公開しています。街の3Dプリンターサービスに行って、50個位あるパーツを作れば、プラモデルみたいに作れます。材料費と、モーターやネジ等プリントできない部品、電子基盤で、実費5~6万円で可能。▼約50個のパーツを3Dプリンターで印刷し、組み立てて義手を作ります
株式会社からNPOに。
素晴らしい取り組みですが、ただ、オープンソース=無料にしちゃったから、事実上、儲けはほぼゼロ。そのあたりは大丈夫だったのか、聞きました。「元々、株式会社イクシーという会社を立ち上げたが、やはり義手だけでビジネスを作ろうとすると、結局100万円以上の価格を付けざるを得ない。元も子もないので、ある時点でNPOに切り替えた。いまだに問い合わせがたくさん。日本、ヨーロッパ、アメリカ、東南アジア等、世界中から。実際に国に飛んで交流する機会もたくさんあった。そういうコミュニケーションが個人的にやりたいことなので、ハックベリーをきっかけに国際交流ができているのは、とても楽しく貴重。 」(筋電義手「ハックベリー」開発者 近藤玄大さん)
やはり会社としてはオープンソース化は難しかった…。ただ、義手を売りたいのではなく、オープンソースで広めたいという目的だったため、会社はたたんで、現在はNPOとして活動しているそうです。世界中の補助金などを活用しながら、ちゃんと運営できるようにはなっているといことでした。データ公開から6年が経ったいまも、今月だけでも、韓国、シンガポール、ポーランドなどからの問い合わせが来ています。
日本は、国の法律がアメリカと比べて緩すぎると、車いすユーザーの方々から聞きましたが、一方で、民間では、病気や障害のある方を支援する、新しい形のバリアフリーが広がっていました。まずは、この番組で定期的に取り上げている、「HOYA MW10ヒカリ」。夜、目が見えなくなる、夜盲症=網膜色素変性症を助けるゴーグルの取材を続けていますが、およそ40万円と、値段が高いのがネックでした。そこで今月、これを安く使える取り組みが始まったということです。Vixion株式会社の、石塚隆之さんのお話です。
「MW10」が、月額7480円で利用可能に
「所謂「サブスクリプション」を、8月20日から始めた。これは、月々定額で「MW10」を使用できる。一般で(月額)7480円、25歳以下の方は学割扱いで(月額)6480円で使用できる。お住まいの行政が、助成金の認定まで待っておられるという現実を把握したので、まずは日々の生活で使っていただく。早速、お問い合わせ、そして助成金認定以外の所からも受注をいただくことができまして、やはり、患者様が希望されていたサービスの一つだと感じております。 」(Vixion株式会社 石塚隆之さん)定価40万円の「MW10ヒカリ」が、福祉機器として認められれば、1割の負担=およそ4万円で購入できます。ただ、発売から3年ほど経ったいま、福祉機器として認定しているのは、わずか「54」の自治体。23区だと、新宿区、台東区、江戸川区、北区の4区と、かなり限定されているんです。そこで、石塚さんたちは今回、月々数千円で利用できる、定額サービスを始めました。これなら、「うちの地域は補助が出ないから、買えない」という人も、手が届きやすくなります。こちらはバージョンアップや故障修理はもちろん、盗難で紛失した際は無料交換、さらには、オンラインでの歩行訓練士の相談サービスも使い放題。「モノを貸す」のではなく「快適に使える環境を提供する」サービスということでした。また、これとは別に、「盲学校の生徒」に使ってもらうための寄付金をクラウドファンディングで募ったりと、なんとか安く気軽に使ってもらおうと、様々な試行錯誤をおこなっていました。
誰でも義手が作れちゃう?!設計図を無料公開
そもそも、こうしたマイノリティーの方に向けた、「補助具」が高いのは仕方ないのかな、と思ったのですが、全く新しいやり方で、始めから安く提供できる補助具が登場していました。続いては、「ハックベリー(HACKberry)」という名前の義手です。どういうものか、開発者の、近藤玄大さんのお話。 「特徴は3点。一つ目が、部品を3Dプリンターで出力できる。2点目が、その大部分の設計データが、オープンソースという形でウェブ上に公開されている。3点目が、外観のデザインにも拘っていて、あえて「生身の手」に見せないようなデザインで、グッドデザイン賞などを受賞している。これまでの義手が、150万円位で、普及率も数%に留まっていた。それに対して「ハックベリー」は、物作りの仕組みを根底から変えて、基本的には自分で作る方法。数万円程度の支出で作れる。 」(筋電義手「ハックベリー」開発者 近藤玄大さん)▼筋電義手「ハックベリー」。組み立てに迷ったら、近藤さんからアドバイスがもらえるそうです



株式会社からNPOに。ハックベリーを通じた交流こそが楽しい
素晴らしい取り組みですが、ただ、オープンソース=無料にしちゃったから、事実上、儲けはほぼゼロ。そのあたりは大丈夫だったのか、聞きました。「元々、株式会社イクシーという会社を立ち上げたが、やはり義手だけでビジネスを作ろうとすると、結局100万円以上の価格を付けざるを得ない。元も子もないので、ある時点でNPOに切り替えた。いまだに問い合わせがたくさん。日本、ヨーロッパ、アメリカ、東南アジア等、世界中から。実際に国に飛んで交流する機会もたくさんあった。そういうコミュニケーションが個人的にやりたいことなので、ハックベリーをきっかけに国際交流ができているのは、とても楽しく貴重。 」(筋電義手「ハックベリー」開発者 近藤玄大さん) 
ユーザーの情報交換も生まれていたりと、新しい福祉機器の広がり方が見えてきました。
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