クリスマスといえば、色々な場所で風船やバルーンが使われて街を彩りますが、その風船の中に入れるヘリウムガスがなくなっているということ。ディズニーランドから風船が消えた!という声もあるほど。
まずはヘリウム不足なのかどうか、株式会社 夢ふうせんの駒場国雄さんのお話です。
ヘリウム不足!?◆株式会社 夢ふうせんの駒場 国雄さん
「主にヘリウムガスの小売りと、ふうせんの小売りをしています。ヘリウムガスは、小売りの値段で昨年に比べて5割くらい高くなっています。値段に関係なくいくらでも良いから買いたいというお客さんがいっぱいいます。需要が高まっているというより、入ってくる量が少ないのでそれを奪い合うようになっているのが現状です。ヘリウムガスの供給元から、さらに来年3~4割値上げするという通知が来ています。企業努力といっても限界があります。」
去年に比べて5割も高くなっていて、さらに来年3~4割高くなりそうで、ものすごく値上がりしています。
ヘリウムガスは残念ながら日本ではとれないので、主にアメリカ、カタールから輸入しています。
他の物質と反応しない「不活性」が特徴で、似たような物質に水素がありますが、水素は他の物質と反応して爆発する危険があるため、ふうせんにはヘリウムガスが使用されています。
実はこのヘリウムガス不足の話は2012年にもありました。その時はヘリウムを抽出している海外の工場でトラブルがあったことが原因だったんですが、今回はその時と違う事情があります。
◆株式会社 夢ふうせんの駒場 国雄さん
「ヘリウムの用途というのは、風船ではなく、例えば病院のMRI。あとはリニアモーターカーなど最新技術に必要なものなんです。ですから中国がどんどん欲しがっていて、中国は金にモノを言わせて日本より高い値段で買い取って集めている。で、トランプが来年から輸出しないと公言した。駆け引きだとは思うが日本はなおさら厳しい状況になると思います。」
ヘリウムガスは、何かを冷却するときにも多く使われていて、例えば半導体を作る時に冷却するために使われたり、5Gにも関係する高速通信の光ファイバーにも使われています。
そこで中国が高値で買い取っていて、アメリカは来年から「国外に販売しない」と宣言。このままだと工業製品の製造や研究開発にも影響が出るとして、日本物理学会などが緊急声明を出しヘリウムの確保に国をあげて取り組むよう訴えています。
もうクリスマスのふうせんどころの話ではなくなっていますが、気になるのは医療機器への影響。MRIという話が出ていましたが、医療機器にはどのくらいヘリウムが使われているのか、聞いてみました。日本産業医療ガス協会の瀬戸 昭則さんのお話です。
MRIとMEG◆日本産業医療ガス協会の瀬戸 昭則さん
「今一番多く使われているのがMRIとMEG(メグ)という機械があって、これは「てんかん」を見つける機械です。
実はMRIは、2012年のヘリウム不足の時をきっかけに、頻繁にヘリウムを充填しなくてもいいように改良されています。大体5~10年くらいでヘリウムを充填する必要がありますが、今年から来年にかけて、多くのMRIでちょうど充填の時期が来ているという話もあります。
そして「てんかん」を見つけるMEG(メグ)という機械。脳の磁場変化を計測するもので、こちらは頻繁にヘリウムを充填する必要があるため、一定量を確保しておかなければなりません。
クリスマスのバルーンから、ずいぶんと大変な話になってしまいましたが、では、今後ヘリウムガスはどうなっていくのか。
新しいプロジェクト何か解決方法はないのか、調べてみるとこんな話がありました。産業ガスの専門誌を出版している、株式会社ガスレビューの小泉 善樹さんのお話です。
◆株式会社ガスレビューの小泉 善樹さん
「いま世界中で需要が増えているので、新しいヘリウムの生産プロジェクトが始まっています。これは今度はロシアなんですが、ロシアの天然ガスを中国はじめ周辺諸国は利用したいと思っていて、ロシアの天然ガスプロジェクトに乗じて、天然ガスに含まれるヘリウムを分離させて使おうという計画が、2021年に始まります。世界的にはそのロシアのプロジェクトが始まるまでは大きなヘリウムのプロジェクトは計画されていません。
供給を増やすため、新たなプロジェクトが計画されていますが、始まるのは2021年です。まだ1~2年は、いまの状況が続きそうです。
◆12月24日放送分より 番組名:「森本毅郎 スタンバイ!」
◆http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20191224063000