「森本毅郎・スタンバイ!」(TBSラジオ、月~金、6:30-8:30)7時30分過ぎからは素朴な疑問、気になる現場にせまるコーナー「現場にアタック」
朝晩、肌寒くなってきましたが、今日は、今の季節に美味しい、クラムチャウダーのお話。実は千葉県船橋市の「963」というお店のクラムチャウダーがすごい、というのです。
2021年11月8日(月)のテーマは『日本一のクラムチャウダーとホンビノス貝』
船橋産のホンビノス貝を使ったクラムチャウダー!
すごいクラムチャウダーとは、いったいどんなクラムチャウダーなのか。
株式会社963、代表取締役の黒川祐士さんに聞きました。
「船橋産のホンビノス貝をふんだんに使ったクラムチャウダーです。
日本クラムチャウダー選手権で、第一回目、二回目共に、二連覇させていただいて優勝いたしました。その後に副賞としてアメリカのシアトルの大会というのがあったんですけれども、そちらの大会に出させていただいて、革新的なクラムチャウダー部門、というのの優勝を頂きまして、いま、日本一のクラムチャウダーという肩書で売らせていただいております。
船橋のホンビノスって、水質の問題だと思うんですけれども、あんまり臭みがないんですよね。で、すごく強いダシが出るので、あと地の利で、漁港がすごく近いので、新鮮なものがいつでも手に入るって言うのが売りだと思います。
お土産で持って帰っても、話のネタになるというか、『これ、日本一になったクラムチャウダーなんだって』って言って、お土産品にも喜ばれるみたいで、みなさんたくさん買っていかれます。」
スーパーなどでも見かけるようになった二枚貝のホンビノス貝。見た目から、「大アサリ」という名称で売られることもありますが、963は、地元・船橋で獲れるホンビノス貝を、地産地消ということで、クラムチャウダーにしたのです。
しかも日本一!本場アメリカでも優勝したクラムチャウダー!!
元々はお店で出していたのですが、コロナで営業時間なども減ったころから、真空パックに詰めて、ネットやコンビニなどで売り始めた日本一のクラムチャウダー。お家ごはんに、お土産に、と大人気商品になりました。
クラムチャウダーと聞くと、アサリ、と思いますが、本場アメリカなどでは、ホンビノス貝で作るのが王道。
というのも、このホンビノス貝、原産は北アメリカ。つまり外来の貝・・・。
アサリが獲れなくなり、ホンビノスが救世主!
クラムチャウダーはとっても美味しいけれど、外来の貝、となると、駆除しなくていいのか、気になります。そこで、専門家に聞いてみました。
東京湾生態系研究センターのセンター長で、東邦大学理学部教授の大越健嗣さんのお話です。
「いわゆる外来生物なので、本当は駆除の対象になるんですが、結構、東京湾で増えていて、で、逆に東京湾ではアサリが少なくなってしまったので、アサリを獲っていた人が、現在はホンビノスを獲っているという、そういうような状況になっています。
しかも獲ってみたら、結構美味しかったり、大きい貝なので食べ甲斐があるわけですよね。だから市場に流通して、売れるようになったので、漁業者にとってはありがたい存在という風になっていると思います。
で、現在は漁業権も設定されています。ここが難しいところで、ただ漁獲するということは、駆除といえば駆除なんですよね。」
深川めしや佃煮など東京湾といえばアサリ、と浮かびますが、獲れなくなっているんです。東京湾だけではなく、全国でも最大で17~18万トンあった漁獲高が1万トン以下。(東京でたくさん獲れていたのは1970~80年代)
東京湾の奥の方では、漁獲統計を見てもゼロ。
また、ホンビノスは東京湾で毎年のように起こる、「青潮」という、酸素があんまりない水が広がってしまうような状況(貧酸素)にも強く、他の生き物が生きられないようなところでも大丈夫。つまり、アサリが住めなくなって、空いた所に入って増えている、ということで、ホンビノスが来たからアサリがいなくなってしまったのではないと思いますよ、と大越先生。
在来の生物に非常に悪い影響を与えるとか、人間に対して悪さをする、危険である、という場合にはすぐに駆除の対象となりますが、ホンビノス貝の場合は、そうではない、ということです。
生き物が自分の人生を全うできる東京湾に
とはいえ、在来のアサリがいないままで良いというわけではない、と大越先生はおっしゃいます。
「今年も7月の下旬と9月に酸素があまり無い水が上がって来て、色々な生き物、魚も貝も結構死にましたね。ホンビノスは最後まで大丈夫なんですけども、今回はホンビノス貝も少しダメージを受けています。
ホンビノスが住めないような環境に、もしなってしまったら、もちろんアサリも住めないわけですよね。
だから、そういうようなホンビノスももう生きられないような環境、そういうのはなんとか無くしていきたいし、実は、ここ2年くらい、ホンビノス貝の漁獲量が減ってるんですよ。このまま獲られると、どんどん減っていくということがあるので、千葉県では資源管理をやろうとしています。獲る量とか、獲る場所とか、管理をしましょうと、そういう方向になりつつあります。」
ホンビノス貝の漁獲量が減っているんです。
人気の貝ということで、漁業者のみなさんは、どんどん獲りたいですよね。ただ、このままではどんどん減ってしまう、と千葉県では、資源管理を始める方向。
また、もう一つの背景は、東京湾の環境。
今年の青潮にはホンビノスもダメージを受けています。ホンビノスも住めない環境になってしまっては、在来のアサリの復活は難しくなってしまいます。それに、せっかくの救世主ホンビノスも獲れなくなってしまったら困ってしまう。
一時期と比べると、東京湾の環境はもちろん良くなっているんです。とはいえ、他の生き物よりも、良くない環境に強いはずのホンビノスにとっても、住みにくくなっていて、減っているのだとしたら・・・。
大越先生の『今の東京湾は生き物が自分の人生をなかなか全うできないような環境なんですよね。普通の生き物が普通に生まれて、普通に死んでいくという一生を全うできる東京湾になってほしい」というお話が、重く響きました。