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オミクロン株の急拡大で、自宅療養者が急増していますが、そうした自宅療養者や、夜中に急に発熱した方などを往診する医療サービスもひっ迫しつつあるようです。今回は、東京などで、夜間・休日を中心に往診を行う民間サービス「コールドクター」について、取材報告しました。

★自宅療養者の往診サービス、現場はギリギリ

まずは第6波で今どうなっているのか?「コールドクター」の医師、丸山浩司さんのお話です。

「第6波はですね、1月の3日から、本当に急増しているのを感じていて、数字的にもかなり、220~30件ですね、1日で往診をしたと。かなりパンク気味になっているのが実情です。こちら最短で30分、それくらいでいけることがあるんですけれども、どうしても3時間4時間くらいお待ちになってしまう方も発生してきています。PCRのキットの数とかは非常に多く確保できているので、一方でちょっと抗原検査に関しては、やや注文して届くまで少し時間がかかっていたりと。今はもうオペレーターも医師の数も含めて本当に行ける数のマックスに到達しているところなので、逆にこれ以上検査ももうできないレベルになってきましたが、仮にオペレーターの数と医師の数、ドライバーの数が急に増やせたとして、検査依頼数が増えた場合には、ちょっと検査のキットの数の足りなくなってくる恐れはあります。」
(「コールドクター」医師 丸山浩司さん)

▼「コールドクター」のホームページのトップ画像

第6波で民間往診急増!気になる飲み薬の処方と効果は?の画像はこちら >>

コールドクターは、首都圏では、東京、埼玉、神奈川で展開するサービスで、休日や夜間、患者さんからの電話を受けると、コールドクターの医師や提携しているクリニックの医師が往診するものです。

もともとは「小さな子供が夜発熱してどうしよう」というような相談が多かったようですが、コロナ禍では「突然発熱してコロナかもしれない」という方や、コロナで自宅療養中の方など、やはりコロナ関連の相談が増えているそうです。

そして第5波でひっ迫した経験から、体制を強化し、第6波に備えていたそうですが、想像を超えるスピードに、すでに処理能力のマックスに到達。

こちらは、PCRと抗原検査も行っていますが、抗原検査はすでにキットが不足気味…。それでも、まだギリギリ検査はできているそうですが、それは、処理能力が限界だからということで、仮にオペレーターやドライバーを増員して対応しても、検査キットがすぐに足りなくなるのではと懸念していました。

★モルヌピラビル、在庫はわずか3人分

一方、コールドクターの特徴として、今月4日から、コロナの飲み薬、アメリカのメルク社の「モルヌピラビル」の処方も行っている点。期待の飲み薬ですが、ではこれまでにどれくらい処方が行われたのか?現状を伺いました。

「実際、私自身が投与したのが6例あって、他の医師が投与したのが3例はあったと確認していますが・・・(今まで9例!?)そうですね、実際にはどんどん処方するというのが可能であればとは思います。が、全ての患者さんに使えるという薬ではなくて、供給量が限られていることから、重症化リスクのある方、年齢が61歳以上であること、BMIが30以上の肥満であること、糖尿病または心臓病また腎臓病、がんなどの基礎疾患のある方、というのが対象になっています。対象にならない、そういった方が本当に大多数です。患者さんからですね「モルヌピラビルの投与できますか」という話はありますが、「重症化リスクに当てはまらないので、あなたには使用することはできません」というふうに説明しています。安定した供給量がない、供給量が限られているというのが一番の理由だと思っています。」
(「コールドクター」医師 丸山浩司さん)

先ほどのお話で、1日200件以上の往診していると話していましたが、丸山さんが把握しているのが9例。丸山さん自身、今年休みなく連日往診を重ねているのに、まだ6例しか投与していないということで、やはり薬の流通量が少ないこともあり、処方の対象がかなり絞られていることが背景にあるようです。

また、「一カ所に保管できるのは3人分」という決まりがあり、丸山さんの元にも本当に「上限3人分」の在庫量しか確保できていないようです。

それでも岸田総理が所信表明演説で「陽性と判断されれば、直ちに健康観察や訪問診療を実施するとともに、必要な方へのパルスオキシメーターの迅速なお届け、経口薬へのアクセスの確保を徹底します」と宣言したこともあってか、患者さんから「飲み薬を出して」と言われることもあるそうですが、「対象でないので出せないんです」、と説明するしかないそうです。

★2つ目の飲み薬「パクスロビド」に期待。ただし供給量に不安

残念ながら、ほとんど使えていない今の飲み薬ですが、では少ないながら9つの例では、モルヌピラビルは、岸田総理が言うように「切り札」としての効果があるのか?伺いました。

「実感はないです。投与したから入院しなかったのかというのはわからないと。

メインの効果が「重症化を抑える」ところにフォーカスしているので、使った感触としても「症状が、すっと良くなった」というところも感じにくいなと思ってます。そもそもモルヌピラビルの重症化を抑える効果自体も30%。なかなかこの数字だと、「すごくモルヌピラビルって効くよね」というふうには体感しにくい薬だと数字的にも思ってます。ファイザーのパクスロビドという薬が近々日本でも承認されるんじゃないかとなっていますけれど、一応パクスロビドだと「89%」抑えるといった結果が出ているので、効果が期待できるんじゃないかなと数字的には考えられます。本当に2月に出るかなという話であって、いつから使えるのか、在庫いくつになるかもわからないですね。」
(「コールドクター」医師 丸山浩司さん)

第5波で活躍した、いわゆる「カクテル療法」では、「症状が下がっていく」ことも感じられたそうですが、この薬では症状がよくなるのは感じず、はっきりと「効果の実感はない」ということでした。

また、丸山さんは別の取材でも、「治験のデータから言えば、この薬だけでは医療逼迫(ひっぱく)を防ぐほどのインパクトはないだろう」と話しています。

一方のファイザーの飲み薬「パクスロビド」は、「一部の基礎疾患の薬との飲み合わせに注意が必要」というデメリットはあるそうですが、モルヌピラビルの3倍の効果となると期待できるということです。ただ、いつから使えるのか?また在庫がちゃんと持てるのか、全くわからず、飲み薬についても、心許ない状況が続きそうです。

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