TBSラジオで平日15時30分から放送中の「ACTION」。水曜パーソナリティは、Creepy NutsのDJ松永さん。
7月29日(水)のゲストは、慶応義塾大学大学院システムデザインマネジメント研究科教授の前野隆司さん。前野さんは幸福学の研究者で、幸福を学問として捉えて日々研究されています。今日は前野さんから幸福についてDJ松永さんがお話を伺います。
幸福学は啓発?宗教?いえいえ、科学です!松永:たしかに「幸福学」という名前だけ聞くと少し身構えちゃいますよね。具体的にどういった研究をされていますか?
前野:幸福学は1980年ぐらいから心理学をベースとした科学として発達してきました。それまでは心理学ではなく哲学、宗教、思想をテーマにしていたのでなんとなく宗教っぽいと感じられるかもしれません。心理学は統計学なので、「どういうことをすれば幸せになるか」を統計的に調べてきました。
幸坂:研究データを集めて統計したということですか?
前野:そうですね。たとえば「親切な人は幸せ」ということは統計的に分かっているのですが、これは「幸せかどうか?」というアンケートを取って、それで「親切か不親切か」を調べて、それを処理すると「親切な人は幸せ、不親切な人は不幸せの傾向がある」ということが分かります。
松永:1980年代からそういったデータを取ってあるんですね。海外ではどうですか?
前野:むしろ海外のほうが盛んです。アメリカ、ヨーロッパではたくさんの人がウェルビーングやハピネスの研究をしています。
松永:ウェルビーングとはなんですか?
前野:そのまま言うと「良い状態」ですね。心の良い状態が「幸せ」、身体が良い状態が「健康」ですから、そういった福祉を包み込むような概念ですね。
松永:学問的に「幸せ」とはどう定義されていますか?

前野:心理学的にいうと、たとえば「最も幸せな人生を10点、最も不幸せな人生を0点としたとき、あなたの人生は何点ですか?」という質問を多くの人にして、その統計処理ですね。定義は各自でしてもらって、そのデータをたくさん集めて統計を取るということですね。
幸坂:幸せの形は人それぞれバラバラで、その統計ですね。
前野:バラバラですが、「親切な人は幸せ」「生きがいがある人は幸せ」みたいな全体の特徴はあると思います。
長続きする幸せと、長続きしない幸せ松永:幸せには2種類あるんですか?
前野:そうですね。ネトル先生というイギリスの人が言っています。経済学用語で「地位財」「非地位財」という言葉があります。「地位財」は他人と比較できる財です。具体的には金、モノ、地位ですね。もう1つが「非地位財」で他人と比較できないものですね。
松永:これを聞くと俺は地位財ばかりを追っていたなぁ…(笑)
幸坂:お金は大事ですけどね。
前野:大事ですが、心理学的に言うと地位財は幸せになれるのは一瞬だけなんですよね。

松永:地位財は幸せが長続きせず、非地位財は長続きする幸せということですね。
幸坂:地位財を追い求めすぎると心が疲弊しちゃいそうですね…。
前野:もちろん大事なんですが、そればかりを求めるのはあまり良くないですよね。
松永:非地位財だけを追い求めて成立する幸せもあるんでしょうか?ある程度幸せになるためにはそれなりのお金やモノや地位も必要な気もするんですが、それを一回度外視することは可能なんでしょうか?
前野:現代社会では出家した人とかですかね。でも、ものすごいお金持ちを目指してなくても「とても幸せです」という人は多いですよね。地位財をゼロにすることは難しいですが、少なめでも大丈夫という人は結構いると思いますよ。
松永:地位財という価値観はいつからあるんでしょうか?昔は非地位財だけでも生活できたのかなと思うのですが。
前野:縄文時代は狩猟採取生活なんですが、農耕生活が始まると米を貯められるようになります。そうなると米という地位財ができますよね。
松永:農耕からなんですね!長いな~。自分で作物を育てようとしたばっかりに(笑)
前野:良いことなんですけどね(笑)安心安定のためにお金も貯めますが、それが「もっと欲しい」と思っちゃう傾向にあるんですね。
このほか、松永さんと幸坂さんの人生満足度調査も行いました。
◆7月29日放送分より 番組名:「ACTION」
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