TBSラジオで平日15時30分から放送中の「ACTION」。木曜パーソナリティは、羽田圭介さん。
7月30日(木)のゲストは、武蔵野美術大学造形学部教授で憲法学者の志田陽子さん。志田さんは武蔵野美実大学で憲法及び表現者のための法学をご担当されています。今日は志田さんから表現の自由の範疇、またどういったときに表現の自由が規制されるのかを羽田圭介さんがお伺いしました。
羽田:憲法にある「表現の自由」は一体どういうもので、何を目的としたものなのか改めて教えてください。
志田:「何でも言える」ということが表現の自由です。憲法21条で「集会、結社、言論、出版、その他一切の表現の自由はこれを保証する」とあります。この「一切の」というのが大事です。この憲法が出来上がったときには考えられなかったインターネット上の表現とか、憲法の言葉では出てこない芸術表現も入るということが大事です。それが第一の意味なんですが、法の世界で大事にしているのは、そういう大事な自由を規制するときは、余程の理由じゃないとダメであると。「余程の場合に限る」ということを厳密に考えようという理論があって、法律の畑の者が「表現の自由」について言うときは「その理論的姿勢」について言っていることが多いです。
羽田:「表現の自由」は戦後すぐに定められたと思いますが、定義自体は今とそんなに変わらないですか?
志田:そうですね。戦争中の日本は表現の自由をものすごく塞いでしまって、そのために国が無謀な方向へ走るのを止められませんでした。
羽田:規制を決めるのは国や自治体だと思うんですが、国や自治体は今どういうスタンスですか?
志田:実際には表現を口うるさく規制しようとする方向に来ていると思います。憲法が考える原則はとにかく「自由」で、その原則の例外として規制がありますが、それは他人の権利を害しているときです。名誉棄損ですね。あと社会の安全を壊してしまうようなとき、あとインフラを壊してしまうことですね。皆さんは、インターネットのインフラが安全に運営されていることを信用して使っているわけですよね。そこにウイルスを蔓延させると皆さんがインターネットを使えなくなってしまう。こういうのは犯罪になっていますが、インフラを壊すことは皆さんの権利が使えない状態を作ってしまうことになります。ただ、漠然と誰かを不愉快にさせるとか、誰かの怒りを買うとか、そういうことで表現を塞いではいけませんね。
羽田:たとえば偏見を煽るステレオタイプな言動やヘイトスピーチなどは表現の自由に当たりますか?
志田:これは専門家でも意見が分かれるところで、私の考えは少数説かもしれないんですが、「表現の自由」を私は理論のことを言っている立場を取っています。

羽田:それも文脈ですよね。それを知らない外の人からすると単なる誹謗中傷にしか聞こえないこともありますね。
志田:それを法律で規制しようとすると、むしろ「表現の自由」を損なう問題のほうが起きてしまう可能性があります。なのでヘイトスピーチのようにある程度類型化できて、その悪質性も分かり、被害者が傷付いていることも分かるものは規制対象になってくると思います。差別表現は、それによって傷付いた人が「私は傷付きました。やめてください」と言うことが最初ですよね。
引き続き表現の自由についてお話を伺いました。
◆7月30日放送分より 番組名:「ACTION」
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