TBSラジオで平日15時30分から放送中の「ACTION」。木曜パーソナリティは、羽田圭介さん。
8月20日(木)のゲストは、WIRED日本版編集長の松島倫明さん。WIREDはテクノロジーによって生活や社会など、私たちの未来がどうなるのかを発信するメディアです。最新号には「アフターコロナのさらに先の未来」をテーマにSF作家たちが創作した小説が掲載されています。今日は羽田圭介さんがその作品についてお話を伺いました。
藤井太洋『滝を流れゆく』あらすじ…舞台は次世代の伝染病対策が一般的となった2030年代。自主隔離期間をキャンプでやり過ごそうとしたVRデザイナーの主人公が、山奥で外国人旅行者の一家と出会う。その家族には妙な点があって…。
羽田:この作品を最初に読んでどう思いましたか?
松島:すごくスケールの大きい作品だと思いました。ウイルスに対する抗体を持っていることを証明する抗体タトゥーが描かれていたり、作品の中にロボットが出てきたり、エクソスケルトンみたいな身体の動きをサポートするようなスーツを着ていたり、あとVRによって世界がつながっていたり、周りに今生まれつつある最先端のテクノロジーが編み込まれた先に奄美大島の人里離れたキャンプ場でドラマが繰り広げられるという、SFらしいし藤井さんの作品らしく爽やかな読後感のある作品だと思います。
羽田:タトゥーって最先端っぽくないイメージがあります。そこで抗体タトゥーが出てくることは意外だったんですが、でも現実的に全然あり得そうですよね。
松島:免疫パスポートみたいな話ってだんだん出てきているんですよね。

羽田:コロナ禍を通して、都市の変化はあると思いますか?
松島:実は次号で「移動」について特集しようと思っているんです。人間はアフリカを出て地球を移動し始めたのは、移動への欲望があったからで、それによって文明を作ってきたと思うんですが、同時に感染症を振りまく行為でもあったと思うんです。このパンデミックによって、内なる欲望がどう変わるのかは面白いと思いますね。ロックダウンされたら東京に入れないし東京から出られないですし。そうなったときに人間はどう完結させるのかは興味深いです。
柞刈湯葉『RNAサバイバー』あらすじ…南大西洋に浮かぶベタニア島を訪れたRNAウイルス研究者が主人公。お目当てはRNAだけを使って、増殖していた原始的生物の生き残りを発見することだが…。
羽田:この作品を読んで、「文化は強くない」という印象を持ちました。
松島:それは面白いですね。
羽田:作品で主人公はスカーフで目元以外を隠していますね。そしてそこから遠くない未来でマスクやスカーフが今よりもっと日常化してしまうことってあり得ますか?

松島:サイエンスは国によって法則が変わるわけではないグローバルなものですが、それとそれぞれの文化とのせめぎあいはありますよね。マスク一つとってもあるし、その奥に顔を隠すというイスラムの文化が西洋とコンフリクトを起こしたようなものもありますが、それがウイルスによって誰もが顔を隠す社会が容認されるようになったり。ずっとあったイスラムの文化が、それすらも変わるかもしれないという、良い悪いというよりはそれがRNA的な世界であり、実は人間もそういう世界に生きているということですね。さっきテクノロジーが出てこないと言いましたが、でも大きな意味でサイエンスフィクションを描いている深い作品だと思いました。
引き続き、ほかの作品についても伺いました。
◆8月20日放送分より 番組名:「ACTION」
◆http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20200820153000