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毎週月曜日は東京新聞との紙面連動企画。今日は、福島第一原発の事故の後の、避難区域。

そこで生じた放射性物質を含む廃棄物が、知らない間に再利用されていた事実を報じた「こちら特報部」の記事に注目しました。

「処分」の中に「再利用」が含まれる?

廃棄物は放射性物質が広がらないように、処分されるものだ、と思っていたのですが、いったい、何が起きているのでしょうか?東京新聞特報部デスク、榊原崇仁さんに伺いました。

●「原発事故で生じた廃棄物だとか除染の土壌に関して、『放射性物質汚染対処特別措置法』という法律が2011年の8月にできまし。避難区域の廃棄物に関しては、本来は『国の責任で処分する』というふうにここでは明記されています。その文字面だけを読むと、『国が埋め立て処分をしたり責任を持って周囲に拡散しないような措置をとる』のではないかというような受けとめ方をしていたんですけれども、実はそうではなかった。要は『処分』というものの中に『再利用』という概念が含まれていたという事になるようです。例えば廃炉の原発で出てくる廃棄物を再利用しているケースがあるんですけれども、かなり低い数値基準で再利用されているんですね。それは1キロ当たり100ベクレルという値なんですけれども、今回、福島原発事故の後で避難区域で生じた廃棄物に関しては、これよりも遥かに高い値で再利用されているという問題があるようです。」

かなりひどい話ですよね。本当に驚いてしまいますが、この問題は、フリーライターの吉田千亜さんが取材して明らかになったもの。これはおかしいぞ、となって、榊原さんたち特報部が深堀り取材をしました。

この廃棄物というのは、避難区域など放射線量が高い地域の、家屋の解体で出てくるコンクリートが多いそうですが、主に、福島県の浜通りや中通りの公共事業の河川の工事などで使われ、一部は、県外でも使われている、ということが分かりました。

まず気になるのが、法律で言う『処分』というものの中に『再利用』が含まれるということ。これは違法ではないし、環境省もホームページなどに載せていますから、秘密裏に行っていたわけではありません。

ありませんが、あまりにも、好き放題やりすぎ、という批判があります。

さらにもう1つ、廃炉などで出た廃棄物の再利用の場合、廃棄物から出る放射線量は、原子炉等規制法=通称『炉規法』で、1キロ当たり『100ベクレル』とされていますが、今回の福島原発事故後の廃棄物については、『特措法』によって、1キロ当たり『3000ベクレル』まで、緩和されてしまっているそうです。

再利用で安全に管理できる??

榊原さんによれば、同じ問題が、除染によって出る土、『除染土』でも起きていて、こちらは『8000ベクレル』まで緩和され、やはり再利用として、道路や防潮堤などに使われる動きがあるということ。しかし、こんなに緩和していいのか?環境法がご専門の、東京経済大学名誉教授の礒野弥生先生のお話です。

●「『炉規法』では100ベクレルなんですけれども、それに対して『特措法』の方で8000ベクレル以下ということになってます。で、8000ベクレル以下のものについては、きちんと管理をする形で、埋めて遮断をして、その近くにいる人たちにとっても、1ミリシーベルト以上の追加的被ばく線量を受けることがないからそれでいいんだと、だからこそ安全なんだということになったわけです。ですけれども、再生利用で安全に管理できるなんてことがあるんだろうか?例えば路盤材に使ったって、台風があったり、洪水が起こったりなんかしたときに、それがむき出しになって、川に流されちゃうなんてこともありうるわけじゃないですか。建材に使われてしまったら、30年ぐらいで壊しちゃったりしたときに、それがどうなっていくかっていうのもわからないわけですよね。だから、皆さん大変不安に感じていらっしゃるというわけです。」

除染土も廃棄物も原理は一緒で『剥き出しではなく、覆ったり、埋めたりすることで空気中の放射線量を下げるのであれば、大丈夫』という発想。ただ、これは再利用した直後は成り立つかもしれませんが、持続的に安全が保証されるわけではないというのが礒野先生の指摘。地震で地割れがあったり、建物なら解体されれば途端に剥き出しになります。建物は、壊れることも、壊されることも、ありますからね。

どこで使われているか追跡できていない環境省

責任をもって処分する、と言う国が、こんなことを?と、にわかには信じられませんが、東京新聞の榊原さんからは、さらにこんなお話がありました。

●「一番始末が悪いな、と取材の中で気づいたことなんですけれども、一部に関しては、環境省の方も、どこで使われているのか追跡が出来てない、ということを言ってるんですね。そうなると、どこにあるの、というのが分からないですよね。で、それも本当に3000という数字を下回ってるのかどうか、そういうことも今になってチェックができるのか、というと心配なところがありますよね。だからこれは、今回は廃棄物の再利用というところで、我々も問題があると思って取り上げさせて頂きましたけど、原発敷地内で出た汚染水を処理して海洋放出するという話がありますよね。だから、そっちもじゃあホントに大丈夫なのか、というところが心配になっちゃいますよね。」

たとえ処分の中に再利用が含まれるとしても、それは国が責任を持って管理してこそ。環境省は廃棄物の利用先は「すべては追跡できてない」ということは、つまり管理できていない、ということになりますよね。こうなると、今問題の海洋放出も、本当に大丈夫なのか、と、当然心配になってしまいます。

原発事故から11年が過ぎましたが、榊原さんは、注目の目の数が減ると、国がやりたいようにできる、やり出す、と分かったので、しっかりと取材して報道を続けたい、と話していらっしゃいました。私たちも、ですね。

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