TBSラジオ『ジェーン・スー 生活は踊る』月~木曜日の11時から放送中!

6月6日(月)放送後記

きょう(6日)関東甲信で、梅雨入り発表されました。

「九州・西日本より早かったり」「梅雨前線が上空にないのに」発表になるという珍しい梅雨入りなんだそうで、そのあたりを気象予報士・増田雅昭さんに詳しく教えていただきました。

梅雨前線至上主義か?それとも現実主義か?

増田:平年より1日早い、ほぼ平年並みの梅雨入りですね。じつは、いま梅雨入りしているのが、沖縄と奄美だけで、その次が関東甲信でした。九州よりも関東甲信の梅雨入りが早いのは、非常にめずらしいです。

いま、梅雨前線は九州や本州よりだいぶ南に離れています。なので、梅雨入りを発表しづらい状況で、九州などの西日本でもまだなんです。

ところが、関東はきょう(6日)のように、東の広い海から風が吹いてくると、湿った空気が大量に流れ込んで、梅雨前線が離れていても、曇りや雨になりやすいんですね。

関東の梅雨の特徴的な天気パターンです。東の海がまだ冷たいので、吹いてくる風も冷たく、いわゆる「梅雨寒」になります。今週はこのさきも、この東の海からの湿った風の影響を受けて、なかなか晴れが続かないという判断で、きょう梅雨入りの発表があったわけですね。

ただ、きょうの梅雨入りに「納得していない」という声も気象予報士から聞こえてきます。「梅雨前線が遠くにあるから、まだ梅雨じゃない」という考えです。梅雨前線至上主義か?それとも、曇りや雨の日が多いから梅雨という現実主義か?

いろんな考えがありますが、個人的には、やはり曇りや雨の日が続くと「梅雨だ」と感じる方が多いと思うので、きょうの気象庁の梅雨入り発表は妥当と考えています。

ちなみに、冷たい東風の影響で、しばらくは梅雨寒の日が多くなりそうです。

長袖や軽く羽織れるものは、まだ残しておくのが良さそうですよ。

今年も要注意!線状降水帯に備えよう!

増田:梅雨から夏場にかけて、毎年のように耳にするようになった「線状降水帯」。2018年の西日本豪雨や、おととしの熊本の豪雨など、ここ10年ほどで線状降水帯の被害が相次いでいます。実は今年から、線状降水帯の情報が少しバージョンアップされているんです。

そもそも線状降水帯とは、20~50㎞ほどの狭い幅なのに、長さが50~300㎞ほどある、激しい雨を降らせる雨雲の列のことをいいます。

中身はどうなっているかというと、1個1個の大雨を降らせる積乱雲が線状(ライン状)に並んでいます。積乱雲1個だと数十分や1時間くらいの激しい雨で終わり、夕立のような雨で済むのですが、列になっていて次々に積乱雲が押し寄せると、短時間で終わらず、2時間3時間4時間と続いて、災害級の大雨となってしまうわけです。

この線状降水帯は、雨の降る範囲が狭いというのが厄介です。気象というのは、現象が細かくなればなるほど、とらえにくくなり、予測が難しくなります。なので、線状降水帯のような細い雨雲の列も、予報の難易度が高いのです。

今年から、何が変わった?

増田:一昨年までは、「今回の豪雨は線状降水帯が原因でした」などと事後に原因の説明で使われていましたが、去年からは、「今どこどこ(たとえば●●県東部など)で線状降水帯が発生しています」

と、リアルタイムで情報が発表されるようになりました。

さらに今年からは一歩進んで、予測…つまり発生前に情報を出すようになります。第一歩として、半日前に地方単位で、気象庁は発表するようになります。

たとえば、「関東地方では、線状降水帯が発生する可能性があり、大雨災害発生の危険度が急激に高まるおそれがあります。」

「あすにかけての24時間の雨量は多いところで●●ミリですが、線状降水帯が発生した場合は、さらに増える可能性があります」という情報の出し方になる予定です。

もっと狭い範囲での予報は難しい?

増田:現時点ではそうですが、今後さらに詳しくなっていく予定です。

2024年には、危険度予測を“各都道府県単位”、2029年には、“各市町村単位”で発表できるよう目指しています。

予報の時間に関しては、「半日前」というのがポイントです。理由は、それだけリードタイム、時間的余裕を持って、防災行動をとってほしいから。

なぜそんなに時間が必要なのか。じつは、線状降水帯は、夜から朝にかけて発生することが多いんですね。つまり、みなさんがお休みになっていることが多い時間帯です。大雨になっていることに気づいても、動きづらくなっているわけです。

たとえば、去年、「線状降水帯が発生しています」と発表された事例が、9事例ありましたが、そのうち“夜から朝にかけて発生した”のが6事例ありました。全体の3分の2が、“夜から朝にかけて”の時間帯だったんです。

夕方とか明るいうちに分かれば早めの対策、避難準備ができるということもあり、「半日前」を意識した情報となるわけです。

夜に発生することが多いのには、色んな要因があるんですが、夜になって雲の上部が冷えると、上空と地上の気温差が大きくなり、その温度差を解消しようと、空気が上下にかき混ぜられる中で、上昇気流が強まって、大雨を降らせる積乱雲が発達しやすくなります。

線状降水帯の予測情報が出たらどう行動すべき?

増田:半日前に情報が出たら、土砂崩れや洪水などが起こるおそれのある地域に住む方は、あらかじめ、安全な場所に移動するとができますよね。

そこまで出来ない場合も、夜お休みになる際に、斜面から離れた部屋や、土砂や水が流れ込むおそれがある1階を避けて、2階以上など少しでも安全な場所にいるという選択もできます。

そして、いざ大雨が降ってきたときは、いつもお伝えしている、危険度分布「キキクル」のチェックです。気象庁のホームページなどで、土砂災害や洪水など危険度の高まりを、地図上で10分ごとにほぼリアルタイムで確認できます。

線状降水帯の情報はどんどん充実してきていますが、みなさんには、「線状降水帯と予報で言ってないから、大丈夫。」とは絶対に思ってほしくないんですよね。とうぜん、線状降水帯じゃなくても、災害につながる大雨もあります。大雨のおそれがある時は、川に近づかないとか危険を避ける行動を引き続きお願いしたいです。

そのうえで、「線状降水帯が発生するおそれ」という情報が発表されたら「これは危ないぞ」という意識を一段も二段も上げていただきたいですね。

▼「梅雨前線が遠いのに梅雨入りってありえるんですか?」と大事な質問をしたジェーン・スー

梅雨前線がなくても関東が梅雨入りした意外な理由とはの画像はこちら >>
編集部おすすめ