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パーソナリティ、シンガーソングライターの臼井ミトンによる音楽コラム「ミュージックログ」、1月22日分の書き起こしです。


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バーバンク・サウンドの最高傑作は、誰もが知る「あのディズニーソング」

自粛期間中、サブスク・サービスで映画だったりドラマをまとめて観ているなんて方も多いんじゃないかと思うんですけど、ディズニープラスっていうディズニー専門の配信サービス・配信チャンネルが去年、日本に上陸して入ってきました。現在、「ソウルフルワールド」って言う新作の映画が独占配信されてるんですが、コロナの影響で映画館では公開せず、このディズニープラスという配信サービスのみで公開されているんですね。

実は僕まだ加入してなくて・・・。これを観るために早く加入しなきゃと思ってるところなんですけど、今日は名曲揃いのディズニー関連の映画の主題歌の中で、僕が特に一番好きな曲についてのエピソードをお話ししたいと思います。

10月の第5週の特別編成でkinokoさんがお休みされていた時の音楽コラムで、ハリウッドの裏手にあるバーバンクという町、映画産業の中心地であるこの街で、70年代に新しいロックが生まれた、そんな話をしたんですね。

素朴なアメリカン・ルーツミュージックに憧れた当時の若者たちの感性と、この街が持つ豪華絢爛な映画音楽づくりのノウハウ。
これが見事に融合して何ともドリーミーなアメリカンロックが誕生しましたよっていうお話でした。そしてその一連の作品群のことを、この町の名前からとってバーバンク・サウンドなんていう風に呼んでいるんですね。

▼バーバンクの椰子の木の並木道が描かれた、ワーナー・ブラザーズのアルバム・レーベル面

トイ・ストーリーの名曲を生んだ街「バーバング」

おさらいになりますけど、ことの始まりはワーナー・ブラザーズ、皆さんも名前を聞いたことのある大手映画会社ですね。

数々の名曲を生んだ映画会社「ワーナー・ブラザース」

当時ビートルズなんかが大ヒットしまして、そういった世の中の流れを受けて60年代の終わりにこのワーナー・ブラザースという映画会社がロックのレコードを作る事業を始めたんです。

でもその時に、「ロックのことは若い連中じゃないと分からない。だから、若い者にこの事業は任せよう」って言って丸投げしたんですよ、とある若者に。

その若者が誰かというと、レニー・ワロンカーという名前の男ですね。実は別の老舗レコード会社の創業者の息子、つまり御曹司なんです。でも、彼はレコード業界のコネに頼ったわけではなくて、 UCLAで音楽ビジネスを専攻して大学卒業後にワーナーに普通に就職したんです。音楽ビジネスに対して凄く情熱を持った人だったんですね。

彼が中心になってドゥービー・ブラザーズだったり、リトル・フィートとかジェームス・テイラー、ニールヤングなどなど数え切れないほど多くのロックの名盤を生み出して行くわけなんです。この街から生み出していった。そしてこの人、最終的にはワーナーレコードの社長にまで上り詰める。

そんなレニー・ワロンカーという人物と偶然、幼馴染にして大親友だったのが今日のお話の主人公の、ランディ・ニューマンという人です。

牧歌的だけど皮肉たっぷり!?ランディー・ニューマンという男

このランディ・ニューマンという人。超伝説的な映画音楽の作家であるアルフレッド・ニューマンの甥っ子にあたる人で、親戚一同皆映画音楽の大作曲家という、これまた御曹司!すごい音楽一家の生まれなんですよ。
で、当然本人も家業を継ぐ感じで映画音楽家になるのかなと思いきや!このランディー・ニューマンという若者は大親友だったレニー・ワロンカー、つまりワーナー・ブラザーズのロックレーベル事業を丸ごと任された親友の誘いで、作編曲家ないしピアニストとしてロックの録音セッションに呼ばれるようになる。

裏方として大活躍していくうちに自分自身でもシンガーソングライターとしてワーナーからデビューする事になるんですね。

アルバムを何枚かリリースするんですけれども。そんな感じで自分のレコードも出すし、その他のワーナー所属のアーティストのアーティストのために色々裏方の仕事もするしで、とにかくバーバンクサウンドの中心になっていくような人なんです。

この人自身はどんな作風の人かと言うと、70年代当時の若者、ルーツミュージックに憧れていた若者たちの一人なんで、戦前のラグタイムとかカントリーブルースとか、アメリカ南部の素朴な音楽、田舎臭い音楽がベースになっているんですね。
パッと聞くと、すごく牧歌的な古き良きアメリカって感じの曲調が多いんですけど、何がすごいって歌詞がすごいんですよ!
皮肉と風刺が効き過ぎていてすごい!

例えば代表曲の「セイル・アウェイ」という曲があるんですけど、アメリカっていう国家をほめたたえる歌詞で、そんな素晴らしい国アメリカに向けていざ船に乗って出発!壮大で感動的なストリングスのオーケストラとかも入っていて、感動的なムードの曲なんです。

なんですけど、実はよくよく歌詞を読むとアフリカの人たちをだまくらかして奴隷として船に乗せてアメリカに連れてくる、っていう歌だったりするんですよ。ゾッとするんです、歌詞をちゃんと読むと。

他にも例えば日米の貿易摩擦で関係が悪化していた時に作られた「ショート・ピーポー」っていう曲。直訳すると「背の低い人達」。東洋人の容姿をバカにするような人種差別的な歌なんですね。

あるいは、南部の保守的な白人労働者になりきって放送禁止の差別用語を連呼する歌とかもあって。
とにかく、なんていうか、放送禁止レベルの問題作がすごく多い人だったんです。で、実際も何度も放送禁止になってるわけですが。

あるいは 、「I love LA」っていう曲は一見するとロサンゼルスという町を褒め称えてる歌なんですよ。ロサンゼルス大好きって。

この曲に関しては放送禁止とかにはなってないんですけど、逆にこれ歌詞を文字通りに取られちゃって・・・。
本人とした皮肉のつもりで歌ってるんです。ロサンゼルスを内心ディスってて、 I love LA っていうふうに歌ってるのに、それを真に受けられちゃって、ロサンゼルス・オリンピックの公式テーマソングになっちゃった。今でもあの NBA のレイカーズとかメジャーリーグのドジャースとかの応援歌になってるんですよ。
作った本人はどう考えてもロサンゼルスを皮肉る、けなすつもりで書いてる歌が、ドジャースが勝った後とかに観客席でみんな大合唱するんですよ、この歌。

アメリカ人大丈夫かって心配になっちゃうくらいなんですけど笑。

どの曲も音楽的には一貫してアメリカの古き良きグッドミュージック。懐かしい牧歌的な曲調なのに、歌詞が社会風刺というか、アメリカという国が持つ社会的な構造的な問題点みたいなものをひたすらに皮肉り続ける。結構ブラックユーモアあふれる歌詞が凄く多くて。
そういう皮肉がオリンピックのテーマソングになっちゃったり、世の中に真に受けられるみたいな社会の反応も含め、ある種、壮大な現代アートみたいな側面があるくらい変わった人だったんです。

本人が差別主義とかではないですよ、もちろん。そういう人たちがいるって言うことを作品を通して皮肉ってるわけなんです。で、問題点をあぶり出してるっていう感じなんですね。
だからそんなに大ヒット曲みたいなものは、アーティストとしてはないんです、彼の場合。

トイ・ストーリーの名曲を生んだ街「バーバング」

そして80年代に入り、ロックだとかブルースなんかをベースにした音楽っていうのがだんだん人気が下火になっていくと、彼は映画音楽の作曲家として活動し始める。元々、映画音楽作曲家の家に生まれてるから、映画音楽の世界に「戻った」っていう言い方が良いのかもしれないですけど。

面白いことに、映画音楽の世界でも彼は古き良きアメリカというテーマにこだわり続けるんですね。アメリカという国に暮らす人々の姿を描いた映画に、素晴らしいアメリカンミュージックを彼が添えて。何度もアメリカのアカデミー賞の作曲賞にノミネートされてる。

こうして映画音楽の世界に華麗に転身を遂げたランディ・ニューマン。そんな彼の名を決定的に世界中のお茶の間レベルに知らしめたのは、なんといっても1995年の大ヒット映画「トイストーリー」。
あの映画の音楽を担当したのがランディニューマンで、主題歌になった「You've Got a Friend in Me」という曲、音楽的に言えば70年代からもず~~っと変わらない、本当に金太郎飴みたいな彼のサウンドなんですよ。

コード進行からメロディーからクラリネットの使い方から、もうまさにお家芸!何も変わらないランディー・ニューマン節!っていう感じ。

そんな素晴らしい彼の音楽にやっと、放送禁止用語を連呼しない普通のいい歌詞を載せて歌ってくれた、っていう曲なんです。

古き良きアメリカンミュージックの素晴らしさをここまで分かりやすく端的に表現したポップソングっていうのは他にはないと思います。
それではお聴きください、映画の街バーバンクが生んだ30年越しの奇跡!ランディ・ニューマンの「You've Got a Friend in Me」

ピクサー製作でディズニー配給の映画「トイ・ストーリー」の主題歌でした。

心がほっこりするサウンドに乗せて放送禁止用語を連呼するのがランディニューマンのスタイルだったわけですが、ではなぜ今回だけ歌詞に皮肉やブラックユーモアがなかったのかというと、それは彼があくまでもクライアントありきの映画作曲家としてこの曲を作ったからなんです。

アーティスト活動だったら誰か人にお金を出してもらって、その人の要望どおりに作るってことはしないわけじゃないですか。あくまでも職人さんとして、映画の世界に寄り添ったものを作る職人としてこの曲を作ったというわけです。

あるいは、もうお歳ですから、皮肉屋の社会派ロックミュージシャンが孫を持つ世代になって、「世界中の子供達に一肌脱いだ」という見方もできるかもしれませんね。

◆1月22日放送分より 番組名:「金曜ボイスログ」
◆http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20210122083000

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