毎週土曜日「蓮見孝之 まとめて!土曜日」(TBSラジオ・あさ7時~)内で放送している「人権トゥデイ」。様々な人権をめぐるホットな話題をお伝えしています。

今回のテーマは…『主人公は顔に青アザがある女子高生。 漫画『青に、ふれる。』の作者・鈴木望さんインタビュー』

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「青に、ふれる。」は、月刊アクションで連載中の漫画です。表紙の主人公、青山瑠璃子の眼の周り描かれている青いあざは「太田母斑」というもので、眼の周りの他にも頬や額など、通常は顔の片側に現れます。いわゆる「シミ」より色が青みがかっていて、皮膚のやや深い所にあるのが特徴です。原因はわかっていません。日本人の場合、1000人に1人から2人の割合で症状が出ていると推定され、症状が現れる時期は様々ですが、瑠璃子は生まれつき青いあざがあります。

『青に、ふれる。』が「太田母斑」への関心を持つ入り口になれば

今回は「青に、ふれる。」の作者で、太田母斑の当事者でもある鈴木望さんのインタビューをお送りします。鈴木さんによりますと、青いあざがあっても日常生活に直接的な支障はないそうですが、漫画を通じて読者にこんなことを伝えたいといいます。

漫画家の鈴木望さん
私の場合言葉で傷ついた経験が多かったなと思ってて。私が今まで受けてきた言葉って、無知、知らないからそういう言葉発してしまうとか、ちょっとした偏見とか、価値観の違いからくるものだったなと思うので。

自分と関係のない病気とか症状についてって、なかなか興味を持つのが難しいと思うし、私は責めることができないなって思ってたんですね。今は青に触れるっていう作品を書かせて頂いているので楽しみながら少しでも関心を持ってもらえたらいいなとか、共感してもらえたら嬉しいなって思ってます。

作中では、周囲の無理解から発せられる言葉に瑠璃子が傷つく場面が描かれます。例えば瑠璃子が喫茶店でのアルバイト中、お客さんに「君、女の子なのに可哀そうにねぇ」と言われます。これは、その人なりの親切心から出た言葉かもしれませんが、裏を返せば「女の子は顔が綺麗なことが普通」だと言って瑠璃子の存在を否定しているようなものです。

太田母斑とどう付き合うかは、当事者が自分で選択できる

瑠璃子はさらに他のお客さんから、「そういうの治療でなんとかなるんでしょ?なんでしないの?」とか「メイクで隠せば?」とも言われます。確かに、太田母斑はレーザー治療や、メイクでカバーするという選択肢もありますが、こういった選択肢について、鈴木さんの考えを聞きました。

漫画家の鈴木望さん
太田母斑の場合、小さいときに保護者の方が治療を選択するケースも多いですし、まだまだ社会的に、アザがあることがマイナスっていうか、治療とかメイクでカバーすることを求められているような気持ちになることも多いんですけど、最終的には自分で考えて、自分で決められるって思ってるんですね。それぞれが考えて選んだことは、尊重したいよねっていう気持ちで書いてます。

瑠璃子には自身の考えがあってあえてアザを消さずにいますし、作中には瑠璃子と同じ症状がある友達が2人登場するのですが、それぞれ自分で考えてレーザー治療や、メイクでカバーするという選択をしています。また、レーザー治療に関しては、保険適用されていますが、症状によってはお金がかかる、時間もかかるといったデメリットも作中で指摘されます。こういった描写について鈴木さんは、「まずはいろんな選択肢や、考え方があるということを知るのが大事だと思って書いた」と話しています。

「平気にならなくてもいい、怒ったっていい」

「青に、ふれる。」のストーリーは、瑠璃子のクラスの担任に、新任の男性教師・神田が赴任する所から始まります。神田先生は脳の障害によって、人の顔がうまく認識できない「相貌失認」という症状があります。クラスの生徒たちを見分けるために、顔以外の部分=髪形や服装など事細かに覚えなければならず苦労する中、瑠璃子については、顔のアザが「青いオーラ」のように見えて認識ができるということから、神田先生と瑠璃子はお互いに助け合うような関係になっていきます。

主人公は顔に青アザがある女子高生。漫画『青に、ふれる。』の作者・鈴木望インタビュー

先ほど紹介した、瑠璃子がバイト先でお客さんの言葉に傷つく場面にも神田先生が居合わせて、瑠璃子にこんな言葉をかけます。作者の鈴木さんにとっても、思い入れがある場面だそうです。

漫画家の鈴木望さん
「慣れなくてもいいし平気にならなくてもいいし怒ったっていい」っていうセリフを言わせてるんですけど、そこが一番思い入れがありますね。私自身も「平気になんかならなくてもいいし、怒ったっていいんだよ」という風に言われた時に、すごく嬉しかったっていう経験があったので。

瑠璃子はこれまで、他人の言葉に傷ついたとしても「顔に太田母斑があるからいけないんだ」と自分を責める傾向にありましたが神田先生の言葉をきっかけに、「傷ついた」など本当の気持ちを徐々に伝えられるようになります。

この「平気にならなくてもいい、怒ったっていい」という言葉。決して神田先生だけの特別な言葉ではないと思います。私たちも、少しでも関心を持ったり、症状のある人の立場に立って考えてみれば、同じような言葉をかけられるのではないでしょうか。

鈴木望さんの漫画「青に、ふれる。」は、双葉社から単行本が3巻まで発売中。

そして月刊アクションで連載中です。

(担当:中村友美)

◆2月13日放送分より 番組名:「人権TODAY(蓮見孝之 まとめて!土曜日 内)」
◆http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20210213070000

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