TBSラジオ『森本毅郎・スタンバイ!』毎週月曜日~金曜日朝6時30分から放送中!

森本毅郎スタンバイ!放送後記

7時30分過ぎからは素朴な疑問、気になる現場にせまるコーナー「現場にアタック」

9月1日は、「防災の日」。関東大震災から100年目に入ります。

地震は突然やってきますが、きょうは、「こんな場所でグラッときたらどうするか?」、シーン別の対策を考えてみたいと思います。

パーマ中に揺れたら?

まず一つ目は、「美容室」です。東日本大震災で、店舗が津波にあい被災した、岩手県・釜石市の美容室「カットクラブドゥーダ」の代表、北山文章さんに、当時の様子を伺いました。

「カットクラブドゥーダ」代表 北山文章さん(岩手県・釜石市):
お店の向かい側が、薬師公園っていうちょっと高台がありまして、お客様とスタッフをそちらの方に誘導するっていうことをやりました。
たまたまうちの場合はいなかったですけども、周りに美容室いっぱいありますので、カラー剤を頭につけたままのお客様もいましたし、ロッドをつけたままいらっしゃったお客様も拝見しました。
で、そこの公園の水道がまだ止まってなかったんですよ。なので、担当した美容師さんなのかそういう方が水で流したり、タオルでふいたりっていう光景はありました。
もうそこから下が見れるんですね、道路とかうちのサロンの位置とかももちろん見える場所なので、もう地獄絵図ですよ。走り惑って逃げて助かる方、水にのまれていく方、緊急車両車も水に流されるっていう光景を目の当たりしましたね…。

東日本大震災では、パーマのロッドをつけて、命からがら逃げたお客さんも(写真はイメージ)

グラっときたらどうする?シーン別に考えたの画像はこちら >>

震災で千人以上が亡くなって、行方不明となった釜石市ですが、北山さんの店舗も津波の被害に合いました。

たまたま施術中の方はいなかったそうですが、避難先の高台には、クロスをつけたままの人や、ロッドを巻いたままの人など、他の美容室から逃げてきたお客さんの姿もあったそうです。

この、パーマやカラー剤を長時間つけっぱなしにすると、皮膚がただれてしまったり、アルカリから弱酸性よりに戻すための「中和剤」を使わないと、髪の毛が切れてしまいます。

そこで、北山さんは震災以降、2リットルのペットボトル20本と、中和剤やタオル、乾パンやラジオなどの防災グッズを玄関に置いて、避難所でも最低限の処置ができる体制を整えるようになりました。

また、最近では業界の有志が集まって、こうした体験談の共有や、災害対策を作る動きもあるようですが、我々お客さん側には、「避難経路だけでも確認して欲しい」と、強く訴えていました。

風呂場で裸だったら?

こうして考えると、美容室は無防備な場所なんだなと思いますが、続いての「こんな場所でグラッときたらどうする?」、2つ目は、「銭湯」です。

もしも、お風呂で裸だったらどうすれば良いのか。

入浴時の対応マニュアルを作成し、各地の銭湯で防災訓練を指導する、埼玉県の防災士、原沢聡志さんのお話です。

防災士 原沢聡志さん:
銭湯とか温泉施設ってやっぱり、ガラスとか鏡とか照明とかが多いので、落下物に気を付けるために、その場にある洗面器だったり桶だったりとかで、「頭を守る」。
急いで外に上がろうとすると、浴室なので滑りやすかったり、ガラスの割れたのがあったりして足を怪我したりとかそういう危険性もあるので、「慌てず落ち着いて服を着る」。
単純に裸ですぐに外出られるかっていったら、出られないですよね。数分後に大津波が来るような被害が想定されてる施設とかは、全身が羽織れるようなポンチョみないなのを用意してる施設もあったんですが、かなり少数だと思うので、店の方の指示に従って、対応するのがいいのかなと思います。

銭湯は天井が高いので、上部にある窓が落ちてきたり、ガラスやタイルなど割れやすいものが多く、しかも滑りやすくなっています。

ですので、まず、揺れを感じたら、風呂おけや椅子など固いもので、頭を守ること。そして揺れがおさまったら、脱衣場へあがり、体をふいて服を着る。その後は、番台やスタッフの指示を聞いて、落ち着いて状況を確認して欲しい、ということでした。

原沢さんが温浴施設に配布している「銭湯の災害対応マニュアル 第4版」。

災害に対する事前事後の対応が書かれた資料です

グラっときたらどうする?シーン別に考えた

各地の銭湯で、「防災銭湯」と名付けた防災訓練も行っています。写真は大阪・住吉の朝日温泉で行った避難訓練の様子(2018年)

グラっときたらどうする?シーン別に考えた

エレベーターで揺れたら?

「グラっときたら困る場所」、最後は「エレベーター」です。エレベーターの保守・点検を行う、株式会社i-tec24(アイテックツーフォー)の代表、岩本由起子さんに、中で揺れたらどうするか、伺いました。

株式会社i-tec24 代表取締役 岩本由起子さん:
まず揺れを感じたら、行き先ボタンを全部押して下さい。
通常は「地震管制運転装置」というものが付いていて、余震を感知して最寄り階に止める。そして人々を安全に出すということが、今のエレベーターにはついているんですけれども、古いエレベーターには付いてない場合があるんですよ。どこかに止まればいいやという発想で、全部押す。
そして、閉じ込められて外に出られないという状態のときに「非常ボタン」を押していただきたいと思います。
ただ、大きい地震ですとメンテナンスの技術者も被災してると思うんですね。だから助けに行くにも、通常より時間がかかりますよね。
なので、まずは落ち着きましょう。外にさえ連絡がついていれば、必ず助けは来る。

都内には16万6千台のエレベーターがあるそうですが、首都直下型地震が発生した場合、そのうちの2万2千台=8台に1台の割合で、閉じ込めが発生する可能性があると、東京都は推定しています。

救助がくるまで時間がかかることもあり得るので、エレベーターの角に防災備蓄ボックスが設置されていれば、食料や簡易トイレを使ったり、できるだけ体力を温存するために、辛抱強く待ってほしいということです。

グラっときたらどうする?シーン別に考えた

TBSのエレベーターにも、「緊急装備品」があります
パニックを起こすことが一番危険。落ち着いて行動できるように、対策を事前にシミュレーションしておくことが大事です。

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