TBSラジオ「ライムスター宇多丸とマイゲーム・マイライフ」毎週木曜日よる9時から放送中!
「マイゲーム・マイライフ」のゲストは前回に引き続き、flumpoolのギター、 阪井一生さんです。ゲームが好きだけど、曲も作らなければならない阪井さん。

宇多丸「スタッフが調べたあれなんですけど、阪井さん、PSVR用のソフトを20本近く所有。特にお気に入りはanywhere VR。要するにその、景色の中に観光地というのかな? そういう、景色がいいところにいる感覚を味わえるだけのやつで、味わいながら曲作り等をしているという情報を」
阪井「そうですね。一時期、だいぶ前の話になるんですけど、VRはすごいハマった時期があって、ただ景色だけなんですけど」
宇多丸「すごいですよね。珍しいですよね。ソフトでもなく」
阪井「景色モノのやつも他にも色々あるんですけど、色々買って」
宇多丸「どの景色がいいか」
阪井「ちょっとその、東京という都会から離れるための。夜中にひとりで見て」
宇多丸「ちょっと離れたところで、気分をリフレッシュして曲作りみたいな」
阪井「癒されるんじゃないかと思ってやり始めたんですけど」
宇多丸「はいはい」
阪井「確かに、それをつけながら曲作りは、めちゃくちゃ面白かったですね」
宇多丸「できた?」
阪井「僕、結構その、どこか行って景色とか見て、曲のイメージが湧くことが多かったんですよ、今まで」

宇多丸「ああそっか、じゃあそれは」
阪井「だからこれは向いてるんじゃないかな」
宇多丸「家にいながらにして、ガンガンできるんじゃないか、と」
阪井「これはもう革命じゃないかなと思ったんですよ。で、いっぱいそういうソフトを買ったんですけど実際できた曲はほぼないですね」
宇多丸「あ、トライはしたけど。これは何が違うんですか?」
阪井「なんなんですかね? やっぱり実際じゃないと(笑)」
宇多丸「はははは。当たり前だけど、結局その、たぶん曲作りに至るのって、現地の温度感とか空気感とか。情報量が違いますよね、おそらく」
阪井「そうなんですよ。
宇多丸「綺麗だなぁ(笑)。絵はがきみたいな。まあだからそういうことですよね。バーチャルはしょせんバーチャルだと。(中略)ゲーム的なものと曲作りが両立できれば、一番夢じゃない?」
阪井「もう、夢です」
宇多丸「それをもくろんだフシがありますね」
阪井「一番近かったんですけどね、この道が」
宇多丸「ゲームっぽい、なおかつ曲作りできるっていう。ちょっと甘かったんだ」
阪井「ちょっと違いました」
宇多丸「こんな景色モノばかり所有している人、珍しいと思うんですよ」
阪井「そうですね。なかなかいないと思う」
宇多丸「俺はそこに、阪井さんのミュージシャンとしての本気を見るね。わかる。曲ができるんならなんでもするよ、みたいなところあるじゃない」

阪井「いやー、そうですね、あります、あります」
宇多丸「VRのあれを買ってできるなら、やっちゃいますよね」
阪井「やります、絶対やります」
宇多丸「岡村靖幸さんが、みんな車を運転しながら曲できるって、岡村ちゃんも免許取ったほうがいいよ、運転しながらだと曲いっぱいできるからって言われて、曲ができるならって免許取ったんだって」
阪井「はははは」
宇多丸「手間かかりすぎだろ、みたいな(笑)」
阪井「そういうあれで取ったんですね」
宇多丸「で、曲できたかというと、そんな免許取り立てで、そんな曲作るなんて(笑)」
阪井「そこまで頭が回らない」
宇多丸「運転で必死だよ! まったくできないよ! って(笑)」
阪井「ははははは!」
うまくいかないものなんだなぁ! 景色がいいところへ遠出したときに曲が作れるのは、「こんな時間とお金をかけているからには何か成果を持ち帰りたい」とか「しばらく家を空けていて他の仕事ができないからせめてもののできることだけでも」とか、あるいは「家にある他のことに気を散らさなくて済む」とか、景色そのものではなく、「家を離れる」ことに理由があるような気もします。

宇多丸「(ゲーム中の)飲食って(しますか?)」
阪井「……飲食?」
宇多丸「今、“飲食?”って(笑)。論外みたいな響きがありましたけど」
文/朝井麻由美(ライター、コラムニスト)
◆6月3日放送分より 番組名:「ライムスター宇多丸とマイゲーム・マイライフ」
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