TBSラジオ『森本毅郎・スタンバイ!』毎週月曜日~金曜日 朝6時30分から放送中!

11月3日(木)放送後記

7時30分過ぎからは素朴な疑問、気になる現場にせまるコーナー「現場にアタック」

警視庁が自転車の交通取り締まりの強化を始めたことをきっかけに、11月1日(火)、「歩道を走る自転車が怖い」というメールをいただきましたが、その後、リスナーの方から、「いや、もっと怖いものがある!」というメールが届きました。

キケン!漕がずに坂を上る自転車って?

メールを送ってくださった、リスナーの小野田さんの目撃情報をお聞きください。

リスナーの小野田さん
見かけたのがですね、「全く漕がないで坂道をどんどん上がってくる自転車」を見たんですね。
普通の電動アシスト自転車ですと、漕いだ力をアシストするので、漕いだ分だけ力が出るっていう、電気の力で、ということだと思うんですけど、これはもう全然漕がずに、本当に力強く上がってくるんですよ、全く漕がない自転車が。
結構、しかもスピードがかなり出てくるので、正直ちょっと怖いですよね、横断歩道なんか渡っててもそのまま突っ込んできますから。
ひょっとしてこれダメなんじゃないかなと思ったんですけれども、実はこの「フル電動自転車」本当に増えているんで、正直怖いです。
見た目は本当に自転車そのものですね。もちろんペダルもついてますし、ナンバーもついてないし、ヘルメットなんかもかぶってないですよ。
交番の前に来ると、急に漕いだふりをして走り去るっていうの、よく見かけますよ。

交番前で漕ぐふりして自転車っぽくする人もいますが、自転車ではないようです。

電動「アシスト」自転車は、漕いだときにアシストしてくれますが、漕がずにスイーっと坂道を上がるのは不自然。「じゃあ、なんなんだ?」と、小野田さんが気になって調べたところ、「フル電動自転車」ではないか、ということがわかったんです。

この「フル電動自転車」は、見た目上は、ペダルもついていて、電動アシスト自転車に似ているんですが、高性能のモーターが搭載されていて、漕がなくても走ることができます。

モーターの力だけで、時速30キロ、40キロで走れるものもあり、歩道はもちろん、狭い路地を、30キロで来られたら怖い。

若い方や、フードデリバリーの配達員が乗っているという目撃談もあって、ツイッターでは、歌舞伎町や池袋、大阪などの都市部で「危ない目にあった」という呟きが、たくさんありました。

「フル電動自転車」は法律上、「原付バイク」

この「フル電動自転車」、小野田さんは「だめなんじゃないか」と言っていましたが、法的にどうなのか?この問題に詳しい、ジャーナリストの、日野 百草さんに伺いました。

ジャーナリスト 日野 百草さん
フル電動自転車というものは、道交法上はバイクなんです。二輪車。決して自転車ではないんですよ。
ましてや、電動アシスト自転車の上位互換ではなく、別個のものなんです。
>だから免許なしに乗ってはいけないし、区市町村のナンバープレートを装着しなければならない。ヘルメットを着用しなければならない。自賠責保険(強制保険)に加入しなければならない。
また道路運送車両法の保安基準、要はブレーキ、ヘッドライト、ストップランプ、テールランプ、バックミラー、方向指示器、クラクション。こういったものを備えてなければ公道を走ってはならないのです。
使う側の実態は、結局、自転車を装って、フル電動自転車で、颯爽と走っているという状況になっております。

フル電動自転車は、法律上は、原付バイクにあたるので、公道を走る際は、運転免許のほか、ナンバープレートなどが必要となります。

無免許運転は、違反点数25点。さらに「3年以下の懲役、または50万円以下の罰金」と、重い刑事罰の可能性も出てきます。

さらに、自賠責保険に未加入の状態で、事故を起こして他人に怪我を負わせてしまったら大変です。

もちろん、こうしたルールを守って乗れば問題ないのですが、多くは、自転車感覚で違法状態が横行しているようです。

自転車店「違法なフル電動自転車の修理はお断り!」

そして問題なのが、ネット通販で、数万円くらいから簡単に手に入ってしまうということで、自転車屋さんも頭を悩ましていました。

大阪の「サイクルショップ金太郎」の店主、内之倉 順二さんに伺いました。

「サイクルショップ金太郎」店主 内之倉 順二さん

パンク修理とかが多いですね。
1週間に1回とか2回ぐらいはありますかね。
うちは基本的には、フル電動で、しっかりナンバー取ってる方でしか受けてはないですけど、ほとんど皆さんナンバーも取られてる方なんかいてないので、事情を説明してお断りしてる状態ですね。
ただ、アシスト自転車とパッと見わかりにくいようなタイプもあるので、「コレ、勝手に走れるやつですか?」と聞いて、そういう場合はお断りするって形。
ちょっと中にはね、ふてくされて帰る方もいらっしゃいます。

「えーなんで出来へんの?」って感じですよね。
だから「こういう法律があるので、お兄さんもこれ乗ってて警察捕まったらヤバいですよ。罰金結構取られますよ、バレたら」っていうのはいつも言ってますね。

違法状態なものは受けられないとして断っているそうで、合法のものは過去1人いただけ。それくらい、みんな違法状態のようです。

ただ、交番前で漕ぐふりをして自転車を装う確信犯もいますが、フル電動自転車が「原付扱い」と知らない人も多いようで、ジャーナリストの日野さんは、周知と同時、に警察も取り締まりを強化すべきと話していました。

新しい乗り物で、ルールや法律が追い付いていない状態ですが、何かが起きてからでは遅い。法整備や取り締まりをしっかり行って欲しいところです。

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