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4月13日(木)放送後記
重いものをラクに持ち上げられる「アシストスーツ」が、今年2月、作業服メーカーの「ワークマン」から発売され、建設現場などから注目されています。
ワークマン発!電気を使わないアシストスーツ
まずはどんなものなのか、ワークマンの伊藤 磨耶さんに伺いました。
株式会社ワークマン 広報部・営業企画部 伊藤 磨耶さん
今回開発した商品は、装着することで体への負担を軽減するようなスーツを開発致しました。
作業現場で使われるような「ハーネス」のように、ベルトを体に巻きつけていただくタイプになっておりまして、体をかがめたときに、ベルトが収縮する力を補助にして、荷物を軽く持ち上げることができるようになっております。
背筋の使用率が、「約38%以上軽減」する。
簡単にマジックテープで着用できるので、私も着用してダンボール持ってみたんですけれど、そのまま、スクワットしたくなる感じのような軽さでしたね。
そうですね、腰が楽ですね、屈伸が楽です。
ワークマンの「アシストパワースーツ」。
<「アシストパワースーツ」は、ワークマン店頭などで購入できます。サイズはS、M、Lと男女兼用で、お値段は9800円(税込)です>
アシストスーツと聞くと、モーターを使ったロボットのようなものを想像しますが、こちらは全身のベルトが伸び縮みすることで負担を軽減してくれる、「サポーター」のようなものです。
見た目は、ちょっとゴツめの「おんぶ紐」のような形。両肩から腕を通して、さらに骨盤にコルセットを巻いて使います。
使い方は・・・
1.床に置いてある段ボールを持ち上げるために、かがみます

2.かがむと、背中がまるまって、「肩」から「腰」、「太もも」にかけてのゴム製のベルトが、縦方向に伸びます。さらに、骨盤ベルトが腹筋をグッと補強して、腰にかかる力をサポート

3.荷物を「よっこいしょ」と持ち上げると、ゴムが元に戻ろうとする力が働いて、スッと持ち上がります

価格は9,800円(税込)と、機械を使っていないので、相場の半額以下。
建設現場や、倉庫の品出しをする人、介護の現場(床からの起こし上げなど)など、中腰で作業するような現場から引き合いが多いようです。
果樹農家にヒット!楽に腕を上げられる「アゲレルデ」
肉体労働の現場では助かりそうなアイテムですが、さらにニッチな「農作業」での動きをサポートしてくれるアシストスーツも登場していました。
こちらも今年3月に出たばかりの商品。ダイヤ工業の小川 和徳さんに伺いました。
ダイヤ工業株式会社 バイスチーフエンジニア 小川 和徳さん
腕を上げるのをラクにする機能のアシストスーツを開発しました。
腕の「肘」の部分に向かって、ゴムとベルトが伸びているんですけど、「力こぶ」が出る部分、その辺りを支えるような機能です。
当社、岡山にあって、ブドウの産地なんですけど、ブドウ農家さんは、ブドウを目線より少し高いぐらいの高さで育てられるんですけど、ブドウを獲ったり、薬をつけたり、長時間やるとかなり負担がかかって、なんとか解決する方法はないかなっていうところから、開発が始まりました。
「アゲレルデ」っていう商品名なんですけど、「あげれるで~」っていうのが岡山弁で、「腕が上げれるよ」っていう意味です。
「アゲレルデ」は、目線より上に手を持ち上げて作業するこの多い、ブドウ農家の悩みから生まれた商品です。

果樹園農家のお悩みから生まれた腕上げアシストスーツ「ダーウィン アゲレルデ」。お値段14,300円(税込)
左右が繋がった「ひじ当て」のような見た目で、グルっと首の後ろに通して、装着します。
作業するときはベルトを短くすることで腕が自然と持ち上がり、首部分に入っているクッションが支点になるので、上を向く作業でも、首がラク。

首元のクッションが、頭を支えてくれます
急な坂も楽ちん?足があがって歩きやすい「アルケルデ」
さらに、こちらの会社では他にもニッチなものを作っていて、階段などで脚をあげる「登り」の動きをサポートする「アルケルデ・プロ」が売れ筋ということです。(こちもダジャレで、「歩けるよ」という意味の、「アルケルデ」)
アルケルデは、腰に巻き付ける「コルセット」と「ひざ当て」が、強力なゴムで繋がっていて、脚を一歩、持ち上げたときに、ゴムの縮む力で、太股を引き上げてくれます。

脚の引き上げをアシストする「ダーウィン アルケルデ プロ」。
とくに今、「5G」などの携帯電話の基地局を設置する会社では、作業員の方が、山を登ることが多いそうですが、車でも行けない道なき道を歩くのは、やはり骨の折れる作業。
そんなときに、この「アルケルデ」をつけると、上り坂や階段がラクに。また、つまづき防止としても重宝されているようです。
若手が入ってこないなら、「労働寿命」の延長へ
用途がニッチだからこそ、良いものがなくて困っていた方が多く、ここ数年「労働用」のアシストスーツの注目は高まっています。
そして、こうした商品が求められる背景には、ある「社会的なニーズ」があるようです。
ダイヤ工業株式会社 バイスチーフエンジニア 小川 和徳さん
当社は元々、医療用のサポーターとかコルセットがメインなですけど、体の「首」から「足の指先」まで、各関節のサポーターがあるですけど、そのノウハウ・技術を使って、いろんな分野に展開していってます。
この「労働用」のアシストスーツを、一番最初に作ったのが、「竹中工務店」さんからご相談があったのがきっかけで、そのときに言われたのが、「若手がなかなか入ってこない」。
結局そうなると、残ってくるのは高齢の方ばかりなので、それを何とかしたいっていうことで、一緒に、アシストスーツを作りました。
「竹中工務店」や「清水建設」とアシストスーツを開発したり、さらに先日は「NTT」とも、電柱を立てるときの「穴掘り作業」に使えるスーツを共同開発したりと、建築、農業、介護などの人手不足と言われる現場での需要が伸びているようです。
冒頭のワークマンの「アシストパワースーツ」も、同社が中心となり、働く人の高齢化を解決するために結成された企業横断のプロジェクト「快適ワーク研究所」の生み出した製品でもあります。
どこも人手不足と言われていますが、こうしたアシストスーツが求められる背景には、少しでも長く働いてもらい、「労働寿命」を延ばしたいという企業の思惑も見えてきます。