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8月24日放送後記

夏休み期間中、各地で大学のオープンキャンパスが開かれていますが、兵庫県にある「流通科学大学」では今年、ちょっと珍しい施設が賑わっていたということで、お話を聞きました。

大学内の「ダイエー資料館」が人気

流通科学大学の大野 康人さんのお話です。

流通科学大学・監査室長/「ダイエー資料館」事務長 大野 康人さん

「ダイエー資料館」というものができました。

全国のダイエーの店舗の写真が約500店舗分。

あとは当時の新聞広告であったりとか、業務マニュアル、そういったものをご覧いただくことができます。

これはもともとダイエーを創った「中内 㓛(なかうち・いさお)」が、流通科学大学の創設者なんですが、ダイエーに関する資料をたくさん寄贈いただきました。

私、関係者ぐらいしか来ないんじゃないかなと思ってたんですけれども、今回7月、8月のオープンキャンパスで(施設を)開けると、お子さん連れてきた保護者が懐かしんで、「子供の頃によく行った」とかですね、「ジーンズ買いにダイエーによく行った」とかですね、1日20人近く来ましたから、そこの反響に驚きましたね。

大学内にある「ダイエー資料館」。今年のオープンキャンパスは大盛況で、多くの人が訪れたそうです。

この施設自体は2006年に作られたということですが、今年、全店舗のダイエーの写真をネットで公開してから、問い合わせが後を絶たないそうです。

また、現地に行かなくても、「ダイエー写真集」というホームページで、店舗を検索できます。

例えば「碑文谷店」と検索すると、現在は閉店していますが、過去に存在した碑文谷店のオープン当時の写真が出てきます(昭和50年撮影)。さらに「川口店」すると、こちらもいまはありませんが、昭和60年のオープン当時の「川口店」の写真が確認できます。

いま、ダイエーはイオングループに入っているので、既になくなっていたり、名前が変わった店舗も多いようですが、写真を見るだけで当時の思い出が蘇ってくる方が多いようです。

図書館で「思い出」検索

そして今こうした「懐かしい思い出」というものが、注目を浴びています。

中には、もっと個人的な思い出を残していこうという取り組みも広がっているんです。

続いて、大阪市立・城東図書館の館長、相宗 大督さんのお話です。

大阪市立 城東図書館・館長 相宗 大督さん

これ、「思い出のこし」っていう情報でして、市民の皆様から集めた、その町に関する思い出ですね。

例えば、小さい頃に家族と行ったどっかの食堂であるとか、学校帰りに立ち寄った駄菓子屋さんとか、ちょっとした本には載らないような思い出っていうのを、図書館で集めてるんです。

で、それに関連するような本であるとか、インターネットの情報であるとかっていうのもあわせて公開しているという。

家の近くにある公園、自分たちが普段遊んでる公園を、どんな名前で呼んでるか。

例えば帰りしなに寄る公園とかは「帰りしな公園」って呼ばれてたり、「あった、こんな名前で私ら呼んでた、うわ懐かしい」と思ってもらえたら、そういうものを意識して残すようにしています。

「思い出残しプロジェクト」という取り組みで、「プリン公園に紙芝居のおじさんがいました」、「プールの授業で、大和川を泳いでいました(昭和33年)」など、古いものから最近のものまで、300件を超える「思い出」が紹介されています。

ある小説家の相談

でも、なぜ図書館が、このような取り組みを始めたのか?

図書館には、「レファレンス(調査相談)」というサービスがあり、様々な質問に答えたり、参考資料や参考書籍を提供したりしているんですが、調査相談の中できっかけとなった出来事について教えてくれました。

大阪市立 城東図書館・館長 相宗 大督さん

ある有名な方が「若い頃にストリップ劇場でアルバイトをしていた。そのストリップ劇場を調べてるんやけども、場所わかるか?」っていう話があって。

で、大体、町の歴史が書いてある本ってそこの自治体が作ってたりするので、あまり風俗施設みたいなものは載らないんですよね。

で、どうしようかな?と思ってた時に、図書館によく来る常連の男性のちょっと年配の方、ちょっと捕まえて、「おはようございます~」言うて。

「ちょっと聞きたいことあるんですけどいいですか?この近所に何とかっていうストリップ劇場があったいう話があって、いま場所を調べてるんですけれど、知ってはります?」って言ったら、まぁ一発で答えが返ってきて、「そこや!」言うて。

で、思うわけですよ。いま私は聞いて知ったけれども、記録としてどっかで残さなくてもいいのかどうか。

この「思い出残し」のきっかけになった出来事ですね。

ある有名な方とは、著名な小説家。

相宗さんの活動は「調査相談」がきっかけだったということですが、例えば目黒区でも、「デジタルアーカイブ」という形で個々人の思い出を集めていたり、資料として残りにくい「思い出」を残していこうという動きが広がっています。

渋谷の東急がなくなったり、池袋西武の改装など、見慣れた街の風景が変わっていくのは寂しいですが、こうした細かな情報を残していく取り組みが今、見直されてきているようです。

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