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公開を前に関係者らが老いを語る

東京・お台場エリアにある日本科学未来館で11月に「老い」をテーマにした新たな常設展示「老いパーク」が始まります。 老化によって生じる、目や耳、運動器、脳の老化現象を疑似的に体験できるほか、現在取りうる対処法や研究開発中のサポート技術など、老いとの付き合い方の選択肢を科学技術の側面から紹介し、最後にはすでに老いと向き合う方々の人生の捉え方を知ることで、老いとの付き合い方や生き方のヒントを探るというものです。

この展示の公開を前に、企画した関係者らによるトークイベントが行われました。

まずは「未来館でなぜ老いを考えるのか」。老いパークの企画・制作メンバーである日本科学未来館の科学コミュニケーター・小林沙羅さんはこう話します。

展示フロアに出て来館者の方とお話しする機会が結構あります。それで「老いってなんだと思いますか」と聞くと「自分が年を取ってきた」とおっしゃってくれる方もいれば「ご家族の介護をしている」という答えをしてくれる方とか、結構いろいろいらしてですね、本当に聞けば聞くほど「老いって何だろう」とわからなくなる。展示を作るのにいろんな分野のリサーチをするんですね。介護もそうですし、自分の体が老化するとどうなるかというところももちろんなんですけど、人からどう見られるかとか、高齢社会のような社会的な側面とかをみんなで考えられる展示になればいいなと思って、今作っています。

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小林沙羅さん
編集者としてさまざまなメディアに携わる伊藤ガビンさんのお話です。

今年ボク還暦なんですけど「人生100年時代」って言われ始めたじゃないですか。こないだまで70、80だったのに急に100年と言われても困るよなと思って、まだ誰もそこの部分をちゃんと考えていないというところで、本当に未来を感じる領域だと思いました。やっぱり「そりゃ老いない方がいいよね」とか「若くて健康な状態がいい」というその価値観がいろんなところに入り込んでくるんですよ。そこをちょっとチェンジしていかないとマズかろうと思いますね。

あと老いに関しては「全員老いる」ということがやっぱりすごく大きなことだと思っていて、ちょっと体験してみるというようなものではなくて、この先自分がどういうふうに生きていくかということと密接に結びついているので、すごく面白いところだと思うし、その視点は抜くことができないと思っています。

日本科学未来館の新展示「老いパーク」で老いを考える

伊藤ガビンさん

高齢者施設で稼働する最先端の科学技術

そして老いに伴って、高齢者施設などで介護サービスを受けることもあります。トークイベントには、子ども型見守り介護ロボット「ハナモフロル」も登場し、参加者とふれあいました。

日本科学未来館の新展示「老いパーク」で老いを考える

高齢者施設で実証実験中のロボット「ハナモフロル」

このハナちゃんは、人手不足の介護施設での活躍が期待されるロボットです。車椅子の高齢者からも少し見下ろすぐらいの大きさで、可愛らしい子供の姿をデザインしています。開発しているソニーグループの袖山慶直さんのお話です。

現場をよく見てみると、この見守りが本当は一番大事なのではないかという気づきがありました。介護というと、排泄とか食事とかお風呂とか、必要に迫られる介護もあると思うんですけど、やっぱり見守りが手薄になると利用者さんが不安定になりやすいですし、ここが崩れるとその上で必要な介護ができなくなってしまう。そういう見守りがベースとして一番大事なところにあるというのが気づきとしてありました。

日本科学未来館の新展示「老いパーク」で老いを考える

袖山慶直さん

職員が個別にトイレなどの介助をしている間は、共有スペースにいる人たちを見る職員がいなくなってしまうそうなんです。そこで活躍するのがこのロボットです。自ら遠くから話しかけて近づき、簡単な会話や体温の計測、歌のレクリエーション、ご家族との電話の取り継ぎなどができるということで、介護される人を一人にさせない、不安にさせないようにしています。現在は、特別養護老人ホームで実証実験中で、数ヶ月に一度テストを行っています。

展示内容のヒント

では実際「老いパーク」がどんな展示になるのか。小林さんとガビンさんのお話です。

(小林)身体的な老化で何が起こるかというのを知ってもらうゲームコンテンツを用意しています。でも、「老化するとこうなるんだよ」で終わると「えー大変だ。老いたくない。困っちゃうな」みたいな読後感になってしまうと嫌だなと思ったので、見え方なり聞こえ方なり体の動き方が変わってきた時に何ができるかということを見せたい。普段皆さんの生活がいろいろで、年の重ね方がいろいろであるように「答えが一つじゃない」というところはすごく大事にして、展示を作っています。

(ガビン)いろんな疑似体験ができるようになっていて「こういうふうにゆっくりしか歩けないんだ」とか「見え方がこうなっているんだ」ということが分かったら、「早くしろよ」というような意識じゃなくなって、優しくなれると思うんですよね。ぜひ展示を体験していただいて、老いていくとどういうことが体に起こってくるのかということを体験していただけるといいかなと思います。

日本科学未来館の新しい展示「老いパーク」は、11月22日公開予定です。

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