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12月11日(月)放送後記
先日、フィリピン沖で大きな地震があり、日本でも津波注意報が出されました。関東でも最大40センチの津波が観測された、というニュースがありましたよね。
注意報が出るのだから、低い津波でも危険なのだと頭では分かっていますが、実際に40センチと聞くと、なんとなく大したことは無いという気もしてしまいます。
そこで今日は、低い津波の怖さも、改めてちゃんと知ろうと思って調べてきました。
30センチくらいの津波でも大変危険です
まずは、40センチの津波とはどんなものなのか。津波の研究をして20年、海岸工学がご専門の、中央大学の有川太郎教授のお話です。
中央大学理工学部 有川太郎教授
「日本の場合は、堤防とかがありますので、30センチ40センチの津波くらいであれば、内陸の方に入って来ることは、たぶんほぼ無いと思ってますが、ただ海沿いですとか、やっぱり直接津波を受けることになりますので、その場合は大変危険なことになるだろうとは思います。
30センチくらいであったとしても、スピードが少し早くなってくると、体重の軽い人は流されやすくなるので、女性、子どもさん、お年寄りとか流されるかもしれませんね。そのくらいの威力はあると思います。
あの普通の海で、波が自分の足元来るかなっていうのが、だいたい数十センチだと思うんですが、そのイメージをされていると、たしかに数十センチくらいだと問題無いのかなと思ってしまうかもしれないんですが、津波の場合は、あとからあとから津波のエネルギーもやって来ますので、そうしたら、場合によっては足元に50~60キロくらいの力がかかって、転んでしまう、もしくは、そのまま波にさらわれてしまう、というようなことも充分にあり得るだろうと思います。」
有川先生によると、例えば水深50センチの水を、反対側から支えようとすると、1mあたりおよそ100キロくらいの力になるそうで、水って結構重たい。しかも津波は、スピードという力も加わるので、かなりの力を持った水がどんどん押し寄せる、ということになるのです。
気が付くと足元をすくわれて、上下も分からなくなる
知識としては分かりました。でもまだ、実感が持てないので、巨大な水槽で、津波を体験する実験施設をお持ちの有川先生に、40センチくらいの津波を受けると、具体的にどういう感じなのか、を聞いてみました。
中央大学理工学部 有川太郎教授
「どういう感じ、そうですね。一瞬大丈夫かなと思うんですけど、足元をスッとすくわれてしまうと、もうどうしようも無くなってしまうというかんじでしょうかね。
踏ん張っても踏ん張り切れなくなった瞬間に、今まで立ってたなと思ってたんですけど、突然足元をすくわれて、あの水槽ですら、上下があんまり良く分からなくなってしまう状況になると思います。
あの、意外と僕、何回も、みなさんの安全を確かめるために毎回やるんですけど、うーん、どうですかねぇ、やっぱり何回やっても、思ってるより力が強いなっていうようなことは思うので、やっぱり水の力っていうのはなかなか馬鹿に出来ないと言うか、侮ってはいけないんだな、ということが分かると思います。」
立っていたはずなのに気づくと転んでいて、あっという間に上下さえ分からなくなる。30センチ、40センチというお風呂に溜めるくらいの水が、スピードを持って当たって来ると、これほどのパワーがあるんです。
先生が実験水槽で津波を受ける様子の写真がこちら。
(横から見た様子 有川先生提供の映像より)
(正面からの様子)
しかも、何度も体験している有川先生でさえ、毎回、思っていたよりも水の力が強いな、と感じてしまう、というのには驚きました。
1センチでも2センチでも、ひとたび津波に捕まったら流される可能性がある!
お風呂に溜めるくらいの水、波打ち際で足元にかかる波、と、身近なものに例えられる潮位の低い津波だからこそ、怖さや力を肝に銘じないといけませんね、と言うと、有川先生は、こんなことをおっしゃいました。
中央大学理工学部 有川太郎教授
「そうですね、思ってる以上に、やっぱり流されるっていうのは意外と不安、なんていうんでしょうかね、意外と怖いんですよね。なんていうか、流されること、実験だと、分かってるんだけど、流されてしまうとやっぱりちょっと怖いかなと思うのと、実験場ではロープとか色々あって大丈夫なんですが、現実になるとどこにも掴まるところが無いとなると、どこに流されるか分かんない状態になるんだろうな、という風なことは思いますね。ホントに何を着てるか分かんないし、そもそも色んな物流れて来る可能性もあるので、もっともっと危ないんだろうなとは思います。
あの、たとえ1センチでも2センチでも、津波に当たってしまうということは、もしかしたら何か場合によっては危険なことになるかもしれないという風に思って頂いた方が良いと思います。そうですね、ほんとにたかだか数十センチでも、人を流すには充分な力を持っているということだと、僕は思います。」
命綱のロープがあり、流されることが分かっていても、なお怖いと感じる。
たかだか数十センチでも人を流すには充分な力を持っているということ、そして、1センチだろうが2センチだろうが、ひとたび津波に捕まったら流される可能性があること、そして一旦流されたらどうなるかわからないということを、よくよく知って欲しい、ということでした。
先生のお話を聞き、動画を見て、本当に怖いな、と分かりました。しっかり覚えておきたいと思います。